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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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新たな時代、それは彼女にとって耐えがたい

 人が鬼に勝つ。

 そんなことはこの世界の長い歴史の中でも一度もなかったことだ。

 ならば、ここでも人は鬼に勝てないのか?

 否、それはわからない。

 往々にして歴史とは今まで起こり得なかったことが起きた時に刻まれるものだ。


「礼嗣、あいつを誘い込みたい場所がある」

「わかった。サポートは任せて」

「適当だな。もっと、聞きたいこととかないのか?」

「君を信じているんだ」


 ルークはこの世界に呼び出した三人目、ドロクに声を掛ける。


「お前、後ろに転がっている強華を直せ」

「え? あっしに医者の真似事なんて出来ないですぜ」

「そいつはただの人間じゃない。身体の一部を弄られているクローン人間だ。お前の技術力なら、最低でも一命をとりとめることぐらいまでは出来るはずだ」

「……ルークさんっておっしゃいましたっけ? ルークさんはあっしの事をどこまでご存じで?」

「全部だ。時間がない。適当な下水道への入り口に潜れ、そうすれば俺の部下が地下の研究施設まで案内してくれる」


 ルークはポケットに入れていたカードのようなものを取り出し、ドロクに投げ渡した。


「それを見せれば、俺の部下も信用するはずだ」

「何から何まですいやせん」


 ドロクは危険なこの場から逃げられるなら何でもいいのか、大して事情も聞かずに強華を背負い移動しようとした。


「あと、さっきは助かった」

「いえいえ、こちらも向こうの世界じゃ死ぬところでしたんでね」


 ドロクはお互いさまだと言って、強華を連れその場を去った。

 鬼々に追う様子はない。もはや興味はルークと神崎にしかないのだろう。

 もしくはどうせ後から殺すのだからと慌てていないのかだ。


「いいの?」

「あぁ、どうせ鬼々にあいつの技はもう通じない。一度攻略されればそれまでだ」

「そうじゃなくて、まだ出会って間もないあの人に強華を預けてもいいのってことだよ。信用出来るの?」

「はっ、時間の話ならお前も強華もさほど変わらないだろうが」

「ルーク!」

「あぁ、大丈夫だよ。俺のスキルは少しばかり進化した。ドロクの素性は大体知れた」

「最初からそう言ってよ」


 ルークのスキル異世界(ナ・)転生(ロウ)は本人の秘密主義とそもそも本当に不明なことが多くて、誰も正確に把握できていない。

 普段やる気のないティグレも異世界(ナ・)転生(ロウ)のことに関しては多少やる気を出すものの実りは少ない。


 異世界(ナ・)転生(ロウ)は異世界の住人をルークたちの世界に転生させるスキルだ。

 レベルが一つ上がるごとに一人呼び出せる。


 たったこれだけが現在ルーク、神崎、リオン、強華の四人だけで共有しているスキルの概要だ。

 だが、神崎、強華、ドロクと既にルークは三人をこの世界に転生させた。

 経験値、ルークは異世界(ナ・)転生(ロウ)を使うたびにその中でいくつか気が付いた点があった。


 その中で一番大きいこと。

 それは転生者の情報だ。

 神崎の時は情報ゼロだった。

 強華の時は実はルークは誰にも言っていなかったが、一つ前の転生者である神崎の世界と本人についての大雑把な情報が頭の中に上書きされるように入ってきた。

 ここが強華の漢字の由来を含めて命名できた理由だ。


 なら、ドロクの時はどうだろう。


「もういいかな。お姉ちゃん探さなきゃだし、みんな殺すね」


 鬼々は明らかに苛立っていた。

 本来なら瞬殺できそうな相手にもたつき、複数のイレギュラーに見舞われ、たまたま天文学的確率で相性の悪いスキルに出会い体力まで削られた。

 苦戦なんて生まれてこのかた経験したことのない彼女は憤慨している。


 鬼々は怒りに任せて大鎌を振るう。

 二人は先ほどまでと明らかに違う逃げに徹した動きを取る。

 神崎が火柱や水柱で牽制を入れつつ、ルークに指示された目的の場所に向かう。

 その間も鬼々は神崎やルークに複数の傷を与えるが、回避に徹しているからなのか致命傷には至らない。


(なんで、なんで、なんで、なんでこの人達は邪魔するの? 鬼々はお姉ちゃんに会いたいだけなのに)

 鬼々の姉は強く、美しく、まさに頂点の名に相応しいものだった。

 鬼をやめ、吸血鬼になった今でも鬼々の憧れは彼女だけだ。

 いや、吸血鬼になったことで神格化されたといってもいい。

 鬼々に次代の鬼の長を任せて鬼族と別行動が多くなっても、たまに会えば鬼々は姉にべったりとしていることが多かった。

 鬼族の世界で力は正義。

 正義とは力。

 疑うことのない鬼族のツートップに誰も逆らうものはいなかった。


 だが、時代は変わっていく。



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