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転猫  作者: 相川秋実
第一章
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3. 結局、無人島に持ってくべきものは何だったのか?

さて、これからどうしたものか?

今一度同じ問いかけを自分にしてみる。

死んでしまったのは残念だが、それはそれ、これはこれである。

猫として生まれ変わったからには、前向きにポジティブに、今後の猫生で何をするか考えねばなるまい。

生前に山田と考えた異世界転生したらやるべき事として、剣で世界一になることや、国を興してハーレムを作ることがある。

・・・猫に無茶を言うなよ馬鹿なの?

いや、前者は俺が言った事だったか。

しかし、仮に生前剣の達人や格闘技のチャンピオンをやってた奴がいたとして、そいつが猫に転生したところで、できることなど何もないだろうに。

そもそも肉球では剣を掴むことすらできないし、猫ができる格闘技なんて猫パンチだけである。

ハーレムは・・・もしかしたら作れるかもね。相手は当然猫ですが。

あかんわー。早くも死にたくなった。転生してきたばかりだというのに。

それによく考えたら、ここが異世界なのかもわからない。単に現世で猫に生まれ変わってるだけかもしれないのだ。その場合は前提からして色々狂ってくるな。

・・・うん。なんだか、色々詰んでるな。


疲れてきたので、俺は姿勢を崩して伸びをした。

にゃーん、という愛らしい声が俺の口からこぼれる。

なんとも猫だなぁ・・・。


もし異世界だとしたら。その辺に竜やらペガサスやらが徘徊していたり、勇者や魔王に襲われたりしてもおかしくない。そんな世界の中で、はたして猫としてどう生きればよいか?何をすべきか?

ふと、すべき、という言葉に違和感を覚える。というより、何かすべきことがあって、それが何かが思い出せない、といったほうが正しい感じだ。

俺は生前に何かやりのことしたことがあって、それが心残りで化けて出ているのだろうか?

・・・思い出せない。

まぁそれはともかく、今すべきことだ。剣と魔法のファンタジーな世界だと仮定して、小動物としてどう生きぬくか?

俺は生前、うろ覚え・・・うる覚え?どっちでもいいや。うろ覚えだけれども、たしかゲームはあまり得意じゃなかった、というよりほとんどやってなかった、と思う。記憶を探っても、山田とモンハンをするか、山田がやっているゲームを後ろから見るか、というものばかりだ。いきなりゲームちっくなファンタジー世界に放り出されても、どうしていいかわからない。


ふと脳裏に、山田とのかつてのやり取りがよみがえる。


「無人島に何か1つ持っていくとしたら、君は何を持っていく?」

パソコンに向かいながら、山田が問いかけてくる。

「俺か?俺は百・・両・・・だな。これだけは譲れない」

俺はまた始まったか、と本を読みながら答えた。

「殺伐としているなぁ。普通は水とか食料とかいうところだけど」

「ほっとけ。とりあえず武器があれば、外敵から身を守れるし、獲物を狩るのも楽だろう?」

「単に戦いが好きなだけに思えるけどね・・・。それじゃあ、異世界で最初に手に入れなければならないものは何だと思う?」

「ん?それこそ武器なんじゃないか?さっきやってたゲームのモンスターみたいなのがいるんだろう?」

「ふ。違うんだな、これが。異世界でまず手に入れなければいけないのは武器じゃあない。まして水や食料といったものでもないのだよ」

「じゃあ何なんだよ?魔法か?」

そこで山田は椅子をくるりと回して俺の方に向き直り、ちょうど本から顔を上げた俺に対して、にやりと笑った見せた。

「惜しいね。正解は、いわゆる観察力ないし鑑定能力ってやつさ」

「・・・なにそれ?異世界くんだりまで行って、お宝鑑定士にでもなるのか?”いい仕事してますねぇ"とエクスカリバーを鑑定しろとでも?」

「ふふ。・・・はときどき面白いことを言うね。それも中々魅力的な提案だけど、そうじゃあない。いいかい?異世界における鑑定能力というのはね・・・」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

色々長々と語られたが、山田いわく異世界での鑑定だか観察能力というものは必要不可欠なスキルらしい。

相手のステータスやら能力やら、あるいはそこらの石が何か、なども何故か不思議と分かってしまうステキ能力だとか。

当時はそんな能力あったら反則だろう、と思ったが、同時に使えたらかなり便利そうだなとも思っていた。

とりあえずせっかく転生したのだ。他にやることもないし、ここは前向きに考えて観察?鑑定?能力とやらを身に着けてみるか。


それから俺は、意識して周りの物体を見るようにした。

狩りの時も獲物のネズミをじっくり観察してから狩る。

これ何か意味があるのだろうか?と、ふとした瞬間に素に戻りそうになるが、確か山田の弁では特に指定がなければこの訓練方法で良いそうだ。

指定ってなんだ、と今更ながらに疑問に思ったが、質問すべき相手も答えを返してくれる相手も、もういない。


訓練?を開始してから体感で数時間後。

目の前の得物を意識して見た際に、頭の中に情報が浮かびあがってきた。


魔ネズミ族

ノーマルスキル:かみつき(貫通小)

魔法:


うあー・・・。ほんとに使えたよ。

情報は簡潔・簡潔にして微々たるもので何の役にも立たなかったが、それでもかなりの衝撃を受けた。

正直、暇つぶしに、たぶん無理だろうと軽い気持ちでやっていたのだが、人間なんでもやってみるものである。

・・・もう人間じゃないのだけれど。

てか、かみつき、ってスキルなのだろうか?

その論で言うと、このネズミはスキルを使わないと、かみつくことすらできないって事になっちゃうんだけど。

不思議に思っていると追加で情報が頭に浮かんできた。


かみつき(貫通小):

 かみつきの貫通力が若干上がる。


ああ、なるほど。かみつく攻撃の効果を上げるスキルということか。

てか、スキルの説明も見れるのか。便利だなー。

山田が観察?鑑定?能力を必須といっていた理由がしみじみと実感できた。敵の情報がパッと見てわかるなんて、何とも便利な能力である。


とりあえず、かみつかれないように気を付けながら、動き回るネズミを前足で抑えた。

そして、いつも通り牙でトドメを刺す。

・・・

ネズミを食い終えてから、俺は自分のステータスも見てみることにした。


魔猫族

ノーマルスキル:じゃれる(魅力小)、アナライズ(弱)

魔法:ヒール


・・・じゃれるってなんだ。

てか、何気に魔法がつかえるのか。

ヒールという事は回復魔法なんだろう。回復手段があるのはありがたい。

さっそく手(前足)に意識を集中して、魔法を使ってみた。

「にゃ~ん(ヒール)」

ぽっ、と淡い緑色の光がともった。

真っ暗な中では明かりにもなる。便利だな。

後はアナライズか。観察なのか鑑定なのか、いい加減ややこしいと思っていたので、アナライズで統一してくれるのは地味にありがたい。まあ、俺のためにアナライズって名前になったわけじゃないんだろうけど。

観察だか鑑定だか、良く分からないものをアナライズと言う言葉に包含する。

それは、曖昧で良く分からないモノはとりあえず横文字ごまかせばいい、という前世の知恵にも合致している。

グローバルにクラウドを使ってIoTをソリューションすればWinWin、と言っておけば世の中大体どうにかなるのだ。とかつて山田も言ってた。

なんだこの知識。



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