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転猫  作者: 相川秋実
第一章
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2. 死因と因果

てすと・前書き

転生してから体感で一週間ほど経過した。

転生して以来、薄暗い洞窟の中でネズミなどの小動物を狩っては食う毎日。

飽食の時代に生まれ、安くもそれなりに美味しいものを食べてきた世代としては、なかなか辛いものがある。


転生後。俺は意外とすぐに冷静になれた。

恐らく転生前に、友人と転生後の心構えについて語ったことがあったからだろう。

なんでそんな事を語り合ってんだ、俺は。

しかし、意外と簡単に人というものは転生するんだな。

転生前に山田も、転生はありふれているのさ、みたいな言葉を残していたから、きっとよくあることなのだろう。


当初は、人気の無い場所に転生してしまってついてない、と思ったものだが、一応この場所は水と食料には困らない。おそらく鍾乳洞と思われるこの洞窟には、そこかしこに水たまりがあり、また地上が近いのか食料となる小動物も結構這いまわっている。

不幸中の幸いといったところだろうか?


そして、ここ数日で置かれている状況は大体把握できた。


俺はどうも猫らしき生物に転生したらしい。

そして今いる場所は、どこに続いているともわからない薄暗い鍾乳洞、その広場である。

最初に意識を得た場所の近くには、親兄弟と思われる猫の死骸があった。

食料がなくなったのか、外敵にやられたのか。

経緯はわからないが、どうやら俺だけが生き残ったようだ。

あるいは早めに外の世界に出ないと、俺も親兄弟猫と同じ末路をたどるのかもしれない。

しかし、外に出るには若干の問題があった。


今居る広場から外に出るための唯一の道。その出口の前にはネズミの群れが常に陣取っており、その中心には常にボスらしきネズミがいた。

え?猫がネズミを恐れるなって?

さもありなん。しかし、ボスネズミは俺よりでかい。中型犬くらいの大きさをしている。

そもそも、こいつネズミなのかな?なんか凶悪そうな雰囲気を醸し出してるし、追い詰めなくても、嚙まれるどころか逆に食い殺されるまである。

一応それでも転生前が人間だったせいなのか、あるいはそのおかげなのか。不思議とボスネズミには負ける気はしなかった。しかし、じゃあ戦えば勝てるのかというと、それも微妙である。何か、ボスネズミから得体のしれない気配を感じるのだ。第六感と言う奴だろうか?猫になったせいで野性に目覚めたとか?

まぁ、そのせいもあって、今までボスネズミと交戦することは躊躇していた。

そのため今の俺の狩場は、専らネズミの集落の反対側になっている。


さて、これからどうしたものかな?

転生のショックなのか、生前の記憶がはっきりしない。部分的な記憶障害というやつだろうか?

とりあえず曖昧な記憶をはっきりさせるべく、食事をとる時間以外は座禅を組んで瞑想をすることにした。

自分の名前はどうしても思い出せなかった。

吾輩は猫かつ無名、みたいな本の一節と思しき文言や、百万回転生した猫の話、などは微妙に思い出せるのに、肝心な自分に関する情報は、まるで霞がかかったように思い出すことができない。

それでも辛うじて思い出せたのは、日本という国で生まれ、若干一般的とは言い難い人生を歩み、何とか高校生までは生き残った、という若干他人事な情報だけだ。

肝心の転生に至った俺の死因でさえも、なんかフワフワしている。

なんかこう・・・。確か魔王を倒しに行って返り討ちに・・・ってこれは山田がやってたゲームの話か。そうではなくて、山のようにでかい竜に挑むもあえなく踏みつぶされてぺしゃんこに、ってこれは山田とやったモン○ンか。

うーん・・・。侍に真剣勝負を挑むも返り討でばっさりと・・・って、これも明らかにゲームやね。あるいは漫画かアニメといったところか。

・・・うーむ。俺はなんで死んだんだっけ?

なんかと戦って死んだ・・・?いや、なんか若干違うな。なんかこう・・・あ。

うん。前後の場面は思い出せないが、どういうわけか猫が死に瀕する場面に遭遇して、俺はその猫を命がけで助けたんだった。

で、猫は助かったけど、代わりに自分は死にましたと・・・。

なるほど・・・うん。猫を助けて死んだから猫に転生したのか。

それなら納得・・・なわけがないな。

なんだこの因果。



てすと・後書き

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