1. ぷろろ~ぐ
転生したら、君はどうする?
ある日。
目をキラキラさせながらそんな下らない話を振ってきた友人に、俺はなんと答えただろうか?
なんとなく始まったその話題は、思いがけず盛り上がっていって、こと深夜に至るまで激しい議論を繰り広げることになった。
俺が、名のある剣士や魔王や竜を皆殺しにして世界最強の剣士を目指す、と話したら、
山田は、いやいやそんな詰まらないことより国を建ててハーレムを築くべきだ、と切り返してきた。
喧々諤々。
絶対にありえないと思っているからこそ、いろんな妄想を語り合うことができた。
そんなくだらない、しかし辛く苦しい日常にあっての束の間の心躍るひととき。
結局話の最後には、転生には一回死ななきゃいけない訳で、そんな危険すぎる賭けは無理っしょ、と結論付けられ長い議論に終止符が打たれた。
そこからは、転生ではなく生きたまま異世界に飛ばされたらどうするか?という話に推移し、朝まで議論するに至った。
ふと。
そんな他愛もない、それでいて楽しかった夜のことを思い出した。
山田。
どうやら俺は、賭けた覚えのない賭けに勝ってしまったようだよ。
俺は、かつての友の姿を思い返し、ため息をついて、そしてじっと自分の掌を眺めた。
見慣れたはずの掌。その代わりに、ぷにっとした質感の肉球が、自らのその強い存在感をこれ見よがしに主張していた。
・・・なんだこれ。