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イノセント・ファンタジー  作者: 瑞姫 らいら
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第三章 追憶そして縛られた感情

「……………ぅ………ぅぅ……」

オレは深い眠りに落ちて、夢を見た。そう、それはオレが黒き亡霊の奴らに捕まった頃の記憶。永遠に消えない過去の悪夢…………



「………グルゥ………」

小さな森で心地よい風が吹く。人間も魔族も滅多に入ることがない森。入ってきたとしてもそれは子供でよく相手をしていた。オレはいつもと同じ時間に母親とお気に入りの場所で昼寝していた。オレは生まれつき体が弱くて、すぐに発作を起こしていた。そのためオレの母親はいつも側にいてくれた。゛この頃はまだあの姿で゛もちろん人語は話せない。

「……………?」

今、森の中に誰かが入ってくる音がした。辺りを見渡すと白い服を着た人間と魔族が入れ混じりにいる。こんな森に何しに来たんだろう。白い服を着た奴らは何かを探しているようだった。何を探してるんだ?そう思った次の瞬間、白い服を着た奴と目があった。そして白い服を着た奴はにやりと笑みを浮かべオレの方へと歩いてくる。

なんなんだ?嫌な予感がする……逃げないと行けない気がする。すると目の前に母親………母さんがオレの前に出て白い服を着た奴らを威嚇する。…………が、そいつらは何かを手に持ちそれを母さんに向ける。そこから何かを発射させ貫通させる。貫通したあと母さんはゆっくりと倒れた。貫通した腹部からは大量の血が流れる。早く血を止めないと…………だけど恐怖で体がガクガク震えて動けない。そんな時白い服を着た奴らの一人、黒いロングヘアーの女がオレに向かって声をかけた。

「フフ、やっと見つけた………あの方を復活させる為の生贄を………」

その声はだんだん聞こえなくなり、オレは意識を途絶えた。



次に目を覚ましたのはカプセルの中だった。水が入っており口にはなにか装着され、それで息ができる。なんの為にこんな………オレの母さんを………オレを………いや今はそれよりもなんだか体に違和感を覚えた。今まで感じたこともない違和感。恐る恐るカプセルに映る自分を見てみた。

「……………………!?」

オレは目を疑った。蒼い髪に蒼い瞳。そしてまるで人の姿をしていた。これはどうゆうことだ?なんでオレは人の姿をしているんだ。そんなことを思っていると外から白い服を着た奴らが話していた。内容からするとオレの体内にあるマナが特別である人物を復活させるためにここに連れて来られた。そう話していた。つまりオレはそいつのための生贄で道具ということだ。そしてそんな理由で母さんは殺された………………………オレの、せい………で……………。

オレはその罪悪感でまた、意識を失った。こんな、なんで。オレが何をしたって言うんだ。オレは……………………。



「ん………ここ、は……」

次に目を覚ました時は個室………白い部屋の中だった。そしてオレは無意識に人語を話していた。

「あら、お目覚め?フフ………」

あの時の女がオレの目の前にいた。両手は拘束され、うまく動けないオレを無理やり自分の方へと抱き寄せ、口に指を入れてきた。

「ンンっ!…………ンッ!」

ニヤニヤしながら女は見ている。抵抗したくてもうまく力が出ない。…………何か変なものが口に入れられた。そして女は口から指をのける。

「………………ッゴクン」

飲み、込んでしまった。何かもわからないのに。

「ゲホッ……ゲホッ…何、を…………」

「呑み込んだようね?それはあなたのその゛新しい体゛に馴染ませるためのお薬よ。馴染ませとかないと大変なのよ。ただ…………」

女がそう言いかけたとたん、オレの体全体から痛みが走る。

「う……………あ…………ッ…あ、あああッ……!!!」

味わったことのない痛み。その痛みに体がビクンビクンと痙攣する。両手は動かせない。何かにしがみつくこともできなくて痛みに涙が溢れ流れ落ちる。

「あ、、い、い、痛ッ………い、あ、、誰、か助けッ……………あああッ!!?」

痛みで呂律が回らない。はぁはぁと息を吐きながら痛みに耐えるが、口を閉じることも叶わずそこから涎が流れポタポタと地面に落ちる。このだらしない姿を女が見ている。見ないで、見ないでくれこんな、こんな姿………………

「フフ、だらしなく涎垂らしちゃって………そんなに痛い?苦しい?だけど誰も助けには来ないし、解毒剤もあげないわよ?フフ………」

女は楽しそうに苦しむオレを見ている。痛い、苦しい。なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ。

「……ま、多分その痛みは3日は続くだろうけど我慢しなさいね?」

それだけを言い残し部屋から出て行った。だけれど痛みはまだ引かない。これがあと3日も続くというのか?耐えれる訳がない。早く痛みが引くことだけをただただ願った。

「う、あ、………ひっく……………ぐすっ………あ、、ひっ……」

涙も止まらない。呂律も回らない。オレはこれからどうなってしまうのだろう。あいつらにいいように使われる前に早くここから抜け出したい。この痛みが引いてもきっと、オレは何かされるのだろう。

それから3日が経った。痛みは引いたがずっと苦しんで寝ることもできず、オレは動く力も残っていなかった。

「……………………………」

声を出す力もない。お腹も空いた。ぐったりと白い部屋の中で横になっていた。すると、ガチャっと扉が開く音がした。あの女だ。

「痛みは引いたみたいね?これで馴染むはず…………それよりも…」

女はオレを見ながらニヤニヤして笑っている。もう何でもいいからこんな場所から逃げ出したい。

「……ほんと、たった3日間痛みを受け続けただけでこんなになるなんてね?フフ」

女はオレの虚ろになった瞳をずっと見続ける。ただ、これから何をされるのかその恐怖に怯えていた。

「………もう少し貴方の体内の術式弄りたいのよね」

そう言いながら、動かないオレの体を強引に立たせる。

「え、……………あ………?」

術式を弄る。どうゆう意味かはわかっている。オレが人語を喋れるのもこいつらが体内の術式を勝手にいじったからだ。そして今からまた、体内の術式を弄るようだ。体がうまく動かなく、嫌がることもできない。嫌だ…これ以上弄られたらオレがオレじゃいられなくなる気がする。

「今度は感情を司る術式を弄る…………というよりも拘束するわ。一部の感情を」

白い部屋を出て、オレの手を拘束している縄を取り、鎖が付いている拘束具を代わりにつけられた。鎖の部分を女が持ち、オレが立ち止まるとぐいっと引っ張り歩かされる。……………………まるで奴隷のような扱いだ。少し歩くと大きな扉の前まで来た。女はオレをその部屋に入れる。そこには他にも数人白衣を着た奴らがいた。

拘束具を外されて、少し高さがある変なものに寝かされ、手足を動けないように拘束された。感情を拘束するって感情を出せなくするってことか?

「はぁっー………はぁっー………もう、…いっその事オレを………殺してくれ……もう、…耐えられない………」

オレは小声でいう。弱音なんて見せたくなかったけれど、これ以上は無理だ。オレにはもう、何も残ってない。それぐらいなら………だけれど白衣を着た奴らはくすくす笑いそんなことするわけがない、貴方は生贄なのだからと言って、オレの中の術式を引きずり出す。オレの腹部近くに半透明に術式が現れる。

「あ、、ああッ…………」

術式を強制的に出すのだってすごく痛い。それなのに他人が自分の術式を弄るなんて精神的にも負担がかかる。そう思ってる間に術式を弄られる。気持ち悪い。吐きそうになる。

「うっ………あっ…………」

「よし、これね」

女はそう言い術式の一部に何か術をかけた。その瞬間、何か失ったような感覚がした。



「ふぅ、これでいいわね」

女はオレの術式を体内に戻した。オレは失った何かがわからず天井を見つめていた。

「さ、そろそろ部屋に戻るわよ」

そう言って先ほどのようにオレの手に鎖の付いている束縛具を両手にはめ、元の部屋に戻った。そして部屋に戻ると束縛具を外し縄を手にくくる。

「これからずっと貴方はここで生活するのよ?もし、抜け出しでもしたらその時は拷問………いえ、二度と逃げないように調教するから………じゃあ、また明日♪」

女は部屋を出て鍵をかけその場から去った。オレはもう絶望しかなかった。親は殺され、助けに来てくれる仲間もいない。

「…………もう、いい………何も、考えたくない。オレはあいつらにとっての単なる操り人形なんだ………」

死ぬ勇気もない。どうするばいいかもわからない。

「ッ……………………………」

悔しさや寂しさ怒りなどいろんな感情が混ざる。とにかく今わかってることそれは……………オレは感情を縛られた操り人形だってことだ。ただ…それだけがわかる。いや、それが全てなんだ。もう、あいつらに身を捧げよう。逆らうこともできない。オレの心は既に折れかけていた。そしてふと思う、もし自分が゛魔物゛じゃなかったらこんな目に会わなくてすんだのかなと。そんなこといくら考えてもこの…立場は変わることはないけど。

毎日実験は繰り返された。あいつらいわくこの実験は終わることなんてない、って。それから18年間監禁されることになるとは思わなかった。

一度だけ脱走を試みたことがあった。案の定失敗して捕まったけれど。もう、この場所から出ることは叶わないんだ。

「…………オレは……………」

ただ後悔とあの白衣を着た奴らへの憎しみが湧き上がる。どんなに後悔しても意味がない。もしかしてこれは、罰なのかな………自分を唯一愛してくれた母親さえ守ることができなかった無力なオレへのーーーーー






「…………!?」

オレはガバッととびおきる。冷や汗と息が荒くなっているのがわかる。実験施設にいた頃の夢を見た。やはり人間も魔族も信じれない。オレをあそこから救い出したローレンスもきっとオレを利用するだけなんだ。利用する為に…優しくしてるんだ。そうに決まってる。…………その優しさが眩しい。オレに向けられるその笑顔にどこか惹かれる。騙されてる、利用されるに決まってると思ってるのに…………………今のオレはもう笑うことができないから惹かれるのかな。オレはあの時、あの女に…感情を。゛喜び゛を封印されてしまったから。なんで゛喜び゛の感情を封印したのだろう。今でもわからない。

「…………そろそろ…起き、ないとな」

もう、目が冴えてしまった。体を起こして小部屋から出る。

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