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イノセント・ファンタジー  作者: 瑞姫 らいら
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第一章 異変

「ウィンル!」

「ッ…………!?」

話しかけられビクッとしてしまう。先程の黄昏の少女の姿はもうない。

「さっきの子がどうかした?」

「いや………何でもない」

何か、彼女から異様なものを感じたが、気のせいだったのだろう。視線をローレンスの方へ戻す。ローレンスは不思議そうにオレの顔を見つめている。

「えっと、街に来たけどこれからどうするんだ?」

街に来ると言ったのはローレンスだ。ちゃんと理由を聞いとかないと。別に意味はないとか言い出したらとりあえず顔面殴るけれど。

「僕の上司がこの街で待機してるんだ。わかってると思うけど僕、軍人なんだよ」

それは知ってた。見た目からして。それにあの銃の扱いの上手さ的にそうだろうと思っていた。そんなこと思ってるとどこからか殺気を感じた。

「……………?」

それに魔力の波動を感じた。多分魔族が近くにいるのだろう。とりあえず場所を移動させたほうがいい。魔族………黒き亡霊かもしれないし、もし聞かれでもしたら大変だ。

「おい、魔族が近くにいる。場所を変えないか?」

「ん、わかった」

ひとまず教会へと足を運んだ。教会に入り、そこの椅子に座って話を続けた。

「僕の役目は黒き亡霊からあんたを助け、保護することなんだ。」

「ふーん……?」

保護……か、だからあんなに気にしてたのか。オレはそう思っているとローレンスがさらに話を続けた。

「僕は!任務とかじゃなくて僕自身あんたを助けたいんだ!黒き亡霊なんかにあんたは渡さない。あんたは僕が守るから」

「あ………え?」

その瞳は真剣そのものだった。オレにはわかった、こいつは嘘は言ってないって、本心でオレを守るって言ってるんだ。…………オレ的には守られてばかりなのは癪に触るが。

「ゴメンな、つい熱くなってしまった。」

「…………………」

でも、本当はすごく嬉しい。でも素直に言えない。照れくさくて恥ずかしくて。やっぱりまだオレは…………信じきれずにいる。

「もしかして…引いてる?」

「若干」

そうきっぱり答えるとですよねーという返事が帰ってきた。

「で?その上司はどこにいるんだよ?」

オレは少し目を細めながら、はぁとため息をついているローレンスに声をかける。

「え?僕の上司?この街にある港にいるはずだぞ。あの人ここまで来るのメンドーとか言ってたしなー」

「面倒って…」

面倒くさがりなのかその上司は。まぁ、いいやその港に行けばいいみたいだし行くことにしよう。ここに黒き亡霊の奴らうろちょろしてるみたいだし。

「とりあえず…まずはこれ渡してくよ。これからなにかあるかわかんないしな」

「ん………?」

港に移動しようとしたら、ローレンスに……武器を手渡された。長めの剣だ。これで見を守れってことか?でも、剣なんて使ったことないんだが。そもそも今利き腕使えないし。

「後で使い方教えるよ」

そう言いながら港に向かう。


港にたどり着いた。ローレンスはきょろきょろとあたりを見渡して頭をかしげる。

「………どうしたんだよ?」

「船がまだ来てない。つまりまだあの人は着てないみたいだ」

どうやらまだ上司は来てないようだ。……船ってどんぐらい大きいんだろう。その時、海から何か黒い物体が飛び出て、陸へ上がった。むくっと起き上がる。見た目がドロドロして気持ち悪い。

「あー…こんな時に魔獣かよ…面倒くせぇ……」

そう言いながらローレンスが銃を手に持つ。゛魔獣゛………?いや、それよりもローレンスの口調変わってないか?そう思いながら左手でさっき手渡された剣を握り、戦闘態勢に入る。

「これどうやって使えば………おっと……うわっ!?」

使い方がいまいちよくわらないオレは魔獣に斬りかかってみるが見事かわされ、足を踏み外し、そのままこける。

「ウィンル!!」

他の魔獣を蹴散らしていたローレンスがこちらに気づくが魔獣はこけて動けないでいるオレの背中めがけて手についた鋭い刃で切りつけようとしていた。もう…ダメだ…そんな時、どこからか声がした。

「「風はすべてを切り裂く……………クロスウィンド!」」

詠唱する声が聞こえ、その後オレを切り裂こうとしていた魔獣は、強い風によって切り裂かれ、倒れて消え失せた。

「あ………」

オレは体制を直し、ペタンと地面に座り込む。もうダメかと思ったけれど……少し頭がクラクラする。ローレンスはこちらに走って来て手を差し伸べてきた。

「ごめん…僕、いつも戦闘態勢に入ると周りが見えなくなるんだ…」

なんとなくそうだと思ったけど。大丈夫だと言って差し伸べられた手を握り、起き上がる。そして、オレを助けた奴は………

「………………いない………」

この場所にはもういなかった。もうどこかに行ってしまったのだろう。


「で、魔獣ってなんだよ?」

オレはさっきのドロドロして気持ち悪い奴のことを聞いた。ローレンスはすぐに質問に答えた。

「あの化物は結晶化が原因で出来たものだよ」

「…………結晶化?」

またわからない単語が出てくる。魔獣に結晶化?オレがあそこで監禁されてる間に何があったと言うんだ。オレはただ首を傾げるしかなかった。

「最近起こっている世界の異変。結晶化したらその場所の時間が止まる。原因は分かっていない」

その場の時が止まる?術とかではなくて自然に?とにかく世界に異変が起こっているのはわかった。

「とりあえず、魔獣はたおせばいいんだろ?」

「そのためにもアンタにちゃんと゛戦い方゛教えないとな。もし、黒き亡霊とかで出来たら大変だしなー」

それは確かに。今のオレはただの足手まといにしかならない。保護する云々はともかく力をつけないと。

「そう………だな」

オレは小さくローレンスに返事をする。


「それにしてもおっそいなー上司ーまた酒飲んでんのかー?」

そう言いながらグチグチとローレンスは文句を言っている。オレはボーとしていると、さっきと同じ魔力の波動を感じた。

「……………………?」

周りを見渡すとーーーー魔族………いや、゛黒き亡霊゛の奴らがオレ達を取り囲んでいた。………迂闊だった。もっと警戒してればこんな失態するわけ無かったのに。どうするか、逃げるにも船はまだ到着してない、強行突破もたった二人じゃ無理だ。それに連戦はキツイ。相手は見たところ10人以上はいる。

「ふふ…………みぃつけた♪」

その中の一人が前に出てきてオレに向かってそう言う。黒いロングヘアーの女だ。…………………今度こそ、万事休すか………?

「もう、逃さないわ…………さぁ、こっちに来なさい?」

「………オレは………」

ローレンスは女を目を細めながら睨みつけながらオレの耳元で小さく囁く。

「僕が時間を稼ぐ。その間に逃げるんだ」

そう言った後、ローレンスは武器を構える。そんなことできるわけ無い。

「何を言って……」

「いいからはやくッ!」

そうは言われても、逃げてどこに向かえばいいかもわからないのに、しかも置いて行くなんて無理だ。別に人間も信じてないし嫌いだ。でも………

「できるわけ無いだろ……」

「ウィンル………?」

傷つこうが死のうがオレの知ったことじゃない。だけど自分のせいでそうなるのは絶対に避けたい。そんなの嫌だ。

「オレはーーー……」

「さぁ、どうするの?」

もう、戦うしかない、勝ち目がなくてもだ。せめて船が来るまでに耐えれれば……………さっきと同じく、武器を構える。さっきのようにはならない。どうにかして切り抜ける。

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