ガシッ!ボカッ!ドラゴンはしんだ(嘘)
俺は攻撃に転じることにした。
肉弾攻撃は奴の鱗に阻まれ効果が無かったが、魔法ならどうだ!
「食らえ、クソトカゲ! 劫炎爆!」
意識を集中し、魔力を一点に収束させる。膨大な量のエネルギーの凝縮と解放!
小さな灯火が破裂したあと、スパークしながら炎が広がっていく。
炎は爆発の火柱となり、目標となったドラゴンが爆炎に包まれる。
どうだ。やったか!?
炎と煙が消えたあと、現れたのは悠然と佇むドラゴンだった。
「マジっすか……」
巨大な破壊エネルギーをぶつけられたのに、ドラゴンは全くダメージを受けていない様子だった。
探査で見てみても赤色に変化がない。
ゴアアアアアアアアッ!!!!!
大地もろとも震わせる咆哮も、いささかの弱体化を感じない。
くっそ! 威力なら劫炎爆が一番なんだぞ! ノーダメってなんなんだよ!
属性の問題か? ならコイツは!
「光刺矢!」
光の矢が俺の頭上に浮き上がり、ドラゴンに向かって放たれる。
鋼の板さえ容易に貫通する魔力の鏃が雨あられと飛び交った。
ゴアアアアッ!!……ッ
ドラゴンはガチッと顎を締め、身を固める。
巨大な黒色の塊。
光矢はことごとくがドラゴンに命中した。
しかし、黒色の鱗に阻まれ刺さることはなかった。カンカンと音を立てて、一本残らずが弾かれてしまった。鱗が欠けた様子もない。
ぐぬぬぬ……! ならこれは!
「稲妻落撃!」
一瞬、暗雲が立ち込めたかと思うと、稲光がカッと轟き、ゴロゴロッという音が響く。
ドラゴンの頭上から極大の稲妻が降り注いだ。
何億ボルトあろうかという電光がドラゴンを打ち――そのまま何事も無く終わった。
寧ろいい気持ちだったとでも言わんばかりに、ブルリとドラゴンは身を震わせた。
◇◇◇◇◇
イーノ・タイファ 人間族 男 20歳
領主の息子、魔術師
レベル:8
ヒットポイント:30000
力:800
防御:740
素早さ:820
器用さ:370
マジックポイント:23300
上級魔法まで使用可能
魔力鎧により特殊防御:13
◇◇◇◇◇
くっ、まずい。攻撃が効かないぞ……魔力も減ってきた。何か、手を考えないと!
ええい! とにかくブチかましてみるしかないか!
ドラゴンが顎を開ける。空気が熱くなり、口周りの景色が歪んでいる。
火炎を吐こうとしているのだ。
くっ! 今火炎を吐かれたヤバ過ぎる! 先手を撃つぞ!
再び膨大な魔力が集まる。意識を集中し、解き放つ!
グルルルッ……!!
ドラゴンも魔力を察知でもしたのか、顎を締め、うずくまった。
また巨大な黒い塊となる。
「劫炎……っと、ちょっと待ったア!」
俺はギリギリのところでストップした。
俺の頭に一つ、考え閃いたのだ。
ドラゴンの今の動き!
俺が攻撃魔法を撃ってドラゴンが防御する時、必ずああして身を固める。
さっき、光刺矢を放つ前には咆哮を止め、顎を閉じている。
ということは。
ドラゴンは鱗は強靭かも知れないが、内側はそうでもないんじゃないのか?
「探査!」
俺はもう一度探査をかけた。サーモグラフィーの様な視界は真っ赤に染まっている。
俺の狙いはそこじゃない。今の赤はあくまで、対象の強さ全体を平均化した値だ。各部位ごとの優劣は見えない。
これでどうだ!
探査の平均化を止め、部位ごとに表示するようにした。
すると、ドラゴンの表面はよりドス黒い赤へと変わったが、口の中は限り無く赤に近いが青へと色が変わった。
思った通りだ!
ドラゴンの弱点、まあ弱点といえるほどではないだろうが、攻撃の通る場所がこれで分かった。
あとはそこを狙うだけだ!
……
……
で、どうやって、狙う?
普通に狙っても口は閉じられてしまうだろう。
ドラゴンが口を閉じない隙と言えば、あとは火炎を吐いている時と噛み付こうとしている時だけだ。
でも、それは現実的な瞬間じゃない。
その時に狙っても炎に焼かれるか、噛み砕かれるかだ。
……
……
そうしたら、残る方法は一つしかない。
その時の俺の脳裏には、一寸法師の話が過っていた。
グルルルルル
ドラゴンは俺をいぶかしんでいるのか、舐めきっているのか、唸り声をあげながらも何もしてこない。
はっきり言って、この作戦、自殺行為に等しい。
だが、これしか、もう道はない!
この化物を倒すにはこの方法しか、もう残されていない!
「理力防鎧! 金剛体力!」
俺は防御力を再度、最大限まで上げた。
この作戦は何よりも、俺がどこまで耐えられるかにかかっている。
ゴアアアアアアアアアッ!!!
ドラゴンは俺がまたもや闘志を燃やしていることに気付き、怒りの咆哮を浴びせた。
だが、そいつは今の俺には好都合!
「うおおおお!!!」
俺は自分からドラゴンの口の中へ飛び込んだ。