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俺と魔法とアンナさん。

 俺がこの世界に来てから、つまりイーノ・タイファとしての人生に生まれ変わってから1ヶ月が経った。

 体は何とも無い。それどころか元気いっぱいだ。でも父さんも母さんもアンナさんも大人しくしなさいと言われ、今まで大人しくしていたのだ。

 その間、俺は記憶や情報の整理をしていた。幾ら記憶が頭に刷り込まれているとは言っても、やっぱり慎重に行くに越したことはない。


 先ずこの世界の事。


 コンディネント大陸というこの世界最大の大陸、その中には幾つもの国家が繁栄している。ここはブルータニア王国という島国で、まあ大国の一つだ。

 そして俺の家、つまりタイファ家は王に仕える貴族の一つということらしい。

 ただし領地はド辺境で、家も金持ちってほどじゃないみたい。領民とは上手くやっていて、結構慕われている。ただド辺境だから山賊やら野獣やら、土地の貧しさやらに苦労している。


 そんでもってこの世界が元の世界と大きく違うのが、魔法があるってこととモンスターがいるってこと。

 魔法使いは珍しいわけじゃないけど、有り触れてるわけでもない。術者は限られているみたいだ。この近くだと、メイド長のアンナさんしか魔法使いは居なかった。

 俺、つまりイーノ・タイファは元々魔法使いの素質はあったらしいけど、今の俺は遥かに強大な魔力を持っている。あの神野郎の特典だ。

 なんだかファンタジー系RPGみたいな世界だな。


 次に能力のこと。

 さっきも言ったけど、俺は強大な魔力を持っている。この世界で言う上級魔法も使いこなせる力も貰ったみたいだ。

 ただ他の力はないが、呪文の中には身体強化とか攻撃魔法とか色々あるからそんなに困らないかな。

 あと、これもどうやら特典の一つらしいが、自分や他人の能力をステータスとして見ることが出来た。


 ちょっと俺自身のステータスをまた軽く見てみるか。


◇◇◇◇◇

イーノ・タイファ 人間族 男 20歳

 領主の息子、魔術師

 レベル:8

 ヒットポイント:100

 力:35

 防御:30

 素早さ:45

 器用さ:40

 マジックポイント:40000

 上級魔法まで使用可能

◇◇◇◇◇


 色々他の人を見てみたりして調べてみたけど至って普通の能力値だ。

 魔力以外は。


 マジックポイントは常人で10以下。魔法使いのアンナさんでも100に達しない。

 そんな世界でなんだよ40000って。阿呆かよ。

 とにかく桁違いの魔力を持っているらしい。ただ残念なことに、大人しくしているよう言われていたから今まで試す機会が無かった。

 正直試してみたくてウズウズしている。だって魔法だよ?


 だが! 1ヶ月経って漸く安静解除の許可が降りたのだ!




 そして俺は城で一番の魔法使いアンナさんを連れて城の外の原っぱへ出てきていた。

 まだ魔力の巨大さについては誰にも言っていない。また心配掛けるかなと思って何となく言い出しにくかった。だから唯の魔法の訓練としか言っていない。



「若様。この辺りなら十分でしょう。城まで被害が及ぶことはないと思います」

「えっ」


 アンナさんの出し抜けの言葉に俺はぎょっとした。

 アンナさんは長い綺麗な黒髪をさらりと掻き揚げて言った。


「若様はご自分の魔力を試したくてわたくしに声をお掛けになられたのでしょう?」

「アンナさん、知ってたの?」

「はい。魔力を感じ取る術はわたくしも持っております。今の若様は以前に比べて潜在的な魔力量が桁違いです」

「そ、そっか」

「人は限界まで追い込まれた時、驚異的な力を発揮すると言います。恐らく、若様は死を経験したことで枷が外れたのではないでしょうか。あの危険な状態から蘇ったのもその力のお陰でしょう」

「う、うん、そうかな。そうだよね」


 流石に神様に生まれ変わらされたんだ、とは言えなかった。


「まあ、でも知っているなら話は早い! 早速試してみよう!」

「はい、お望みのままに。何からお試しになられますか?」

「そうだなあ。先ずは……」


 おっとその前に、アンナさんのステータスをもう一回見ておこう。


◇◇◇◇◇

アンナ 人間族 女 25歳

 メイド長、魔術師、主の護衛

 レベル:46

 ヒットポイント:350

 力:98

 防御:45

 素早さ:103

 器用さ:87

 マジックポイント:94

 中級魔法まで使用可能

◇◇◇◇◇


 実はアンナさん、魔術師なだけでなく、俺の護衛も任されるほどの凄腕戦士でもあるのだ。

 はっきり言って滅茶苦茶強い。そこらの兵隊では束になっても敵わない。

 アンナさんは身体強化魔法も使えるから実際はこれ以上に強くなる。凄い。


「どうかなされましたか? 若様」

「あ、ううん。ごめん、なんでもないよ。じゃあ身体強化からやってみよう」


 ふう。

 刷り込みの記憶を整理してイメージトレーニングして、簡単な魔法では練習はしてみているけど、効果の強い魔法はまだやったことがない。楽しみだけど、緊張する。


 意識を集中する。

 体に何とも言えない熱いエネルギーみたいなものが集まってくる感覚。

 そして呪文を唱えた。


金剛体力マックスアップ!」


 これは身体能力や感覚、それに素の防御力も強化する上級魔法だ。


 ……


 でもあんまり強くなった感じはしないなあ。そうだ、ステータスを見てみよう。


◇◇◇◇◇

イーノ・タイファ 人間族 男 20歳

 領主の息子、魔術師

 レベル:8

 ヒットポイント:30000

 力:800

 防御:740

 素早さ:820

 器用さ:370

 マジックポイント:39500

 上級魔法まで使用可能

◇◇◇◇◇


「ぶっ!」

「わ、若様!?」


 思わず噴いてしまった……

 えっ、強くなりすぎでしょ!?

 何だよヒットポイント30000って!?

 しかもマジックポイントの消費も一回500ってコスパ良すぎ。いや本当は大量消費してるんだろうけど、元々が多いからなあ。


「ご、ごめん。大丈夫」

「は、はあ……それにしても、若様。金剛体力マックスアップとは何と凄い。これ程の上級魔法、この世界には使い手など数えるほどしかおりません。わたくしも中級の剛体力(ハイアップ)までしか使えませんから」

「そうかあ。初めてやってみたけど、凄い魔法なんだね。アンナさんも剛体力(ハイアップ)、やってみてよ」

「承知しました。ふう、剛体力(ハイアップ)!」


 どれどれ、ちょいとステータス確認でも。


◇◇◇◇◇

アンナ 人間族 女 25歳

 メイド長、魔術師、主の護衛

 レベル:46

 ヒットポイント:700

 力:200

 防御:98

 素早さ:250

 器用さ:212

 マジックポイント:64

 中級魔法まで使用可能

◇◇◇◇◇


 ほうほう、大体2倍くらい強くなったみたいだ。確かにこれに比べると金剛体力マックスアップは強烈だなあ。


「こんなものです。これでも結構凄いのですけれど、若様に比べてしまうと見劣りますわね……さあ、そんなことより若様、折角身体強化したのですから一つ組手でも如何です?」


 アンナさんは腰に()いていた剣を抜いた。アンナさんによく似合う、スラリとした細身の剣レイピアだ。切っ先は鋭く、見た目だけでも切り刻まれそうになる。


「あ、あれ? なんかアンナさん、凄いやる気じゃない?」

「ふふふ。久しぶりにわたくしの実力を見せられる相手が現れたので、昂ぶってしまいました」

「そ、そうなの」


 そう言ってニヤリと笑うアンナさん。普段の美人さが一層際立っているけど、ちょっと怖い。


 あ、そうだ。


「あ、ちょっとまって。今のうちにもう一つ試したい呪文があるんだ」

「なんでしょうか?」

「うん、感覚強化系の魔法なんだけどさ。ちょっと効果が知りたくて。探査ディテクトっていうんだけど」

探査ディテクト?」

「えっ。知らない?」

「はい。初めて聞きました。書物でも見たことがありません。どこでお知りになられたのです?」

「え、ああー、いや、はは、書物庫にあった古い本にね」


 マジか! これ神の奴のオリジナル限定魔法だったのか!


「ま、まあ、そんな感じかな。じゃあ、行くよ。探査ディテクト!」


 刷り込み情報によれば探査ディテクトは相手の状態をひと目で見れる補助魔法との事だ。魔力消費量も少なく、完全におまけ魔法の扱いかな。


 探査ディテクトを使った状態でアンナさんを見てみると、まるでサーモグラフィーでも使っているみたいに青く色がかかっていた。

 青色は場所によって濃さ違っていて、剣や腕や足はより薄く、顔やお腹はより濃くなっている。

 青色は安全の証。要するにここなら危険は低いですよ、やっつけられますよと言うことらしい。その中でも濃いか薄いかでより安全かどうかが分かる。

 ちなみに危険の証は赤色だ。ただこの強化状態では赤色は有り得ないだろうな。

 

 そんでもって。よっと。

 アンナさんを覆う青みが均一の色になった。部分部分で危険度を差別化もできるけど、平均化して全体としての危険度も確認出来る。

 まあこの平均の方で十分かな。こっちでセット出来るようにしておこう。


 そして探査ディテクトには色々な数値を探る能力が在る。威力やら防御力やら値段やら何やら色々だ。

 アンナさんを見てみると……


 レイピア:威力43

 銀の髪飾り:マジックポイント+5

 布の服:防御力2

 スリーサイズ:バスト7○……


 ビュッ!


「わっ!」


 突然アンナさんがレイピアで突いてきた!


「申し訳御座いません。何やら不穏な気配を感じましたので」

「そ、そんなことは……ご、ごめんなさい」


 アンナさんの目は笑ってなかった。怖い。

 っていうかまだレイピアを構えてる。怖い。


「さ、さあ! 確認も終わったし、それじゃあ、アンナさん。お願いします!」

「ええ。久しぶりに腕がなりますわ」


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