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ユウナとネコさんたちの異世界生活  作者: 藍
第1章 光の剣とネコさん姉妹のユウナ救出作戦(仮)
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第1話 光の剣とネコさんたちの作戦会議(仮)

 ボクの名前はミラ。苗字(ファミリーネーム)は捨てた。ひと昔前と違って、一般人でも苗字を持っているこのご時世だから、元貴族のラルフのような立派なものではないけどね。


 ボクは林業で生計を立てる山間部の村に生まれた一般人の女だ。この村の営みは、男が猟や木こりを行い、女は男が持ち帰った収穫物を加工しつつ家庭を守る主婦を行うことが普通だとされてきた。そのように各々が役割を担わないといけない小さな村だったんだ。でも、ボクは生まれながら【才能】を持っていた。その才能とは【剛腕の才能】。この才能を持っていると、筋力を鍛えていなくても力が強くなるんだ。そういえば、ユウナちゃんの戦闘訓練でゴブリンキングを倒した時に受けた才能に関する質問があったけど、はぐらかしちゃったな。


 赤ちゃんだった頃は流石にその才能は発揮していなかったけど、成長するにつれて徐々に膂力の異常さが目に見えてわかるようになってきたんだ。ある時は物を壊し、ある時は友達を怪我させてしまった。【剛腕の才能】が制御できるようになるまでボクは村人から…そして家族からも腫物のように扱われた。制御が出来始めてからは、貴重な労働力として逆に大切に扱われた。そのことは、ボクにとっては忘れたい過去だったよ。村では男衆と同じ仕事を強いられて、女扱いされないことに嫌気がさしたボクは…村を捨てて…苗字を捨てて…結局、冒険者の街であるカーヤの街に流れ着いたんだ。只々、冒険者であるミラとしてね。


 今のボクはカーヤの街の防犯課の職員―通称騎士として働いている。村を出てから冒険者としてそれなりに活躍してAランクまで上り詰めた。その後、とある事情から冒険者ギルドの職員を経て騎士に転職したんだ。荒くれ物の冒険者や魔獣たちを相手に立ち回ることになったけど、問題なくカーヤの街の住人を護っていたと思う。そんな順調な仕事の環境に浸る中でいつの間にか、上には上がいるという当たり前の事を忘れていたみたいだ。ぬるま湯のような現状と過去の栄光にすがる慢心を持ったボクのせいで…ユウナちゃんが誘拐されてしまったんだ。


 ユウナちゃんとは、ボクが門番をしていた時に知り合った。見慣れない可愛い服を着て、見たことのない種族のネコちゃんというパートナーがいた綺麗な女の子。ただ、変な道具―あとで教えてもらったけど自転車―を持って門の前方で立ち止まっていたから、不審に思いボクから声を掛けた。結果、ボクの杞憂だったわけだけれど、それが縁で仲良くなった。それからは、一緒に食事に行ったり、採取クエストを手伝ったり、ユウナちゃんの家に泊めてもらったりと、楽しい日々を送らしてもらった。それなのにボクは…ボクは…。


 ユウナちゃんはボクを助けるために…【世界樹魔法の才能】を手に入れたがために、危険にさらされている。【剛腕の才能】を授かったことが人生の失敗とボクは思っていた。だけど生まれながら持っていた【才能】を悲観していたボクと違い、他人の為に自分の人生を終わらせるかもしれない【才能】をユウナちゃんは望んで手にした。ユウナちゃんの決断を想うと…情けなくて…申し訳なくて…どうしたらユウナちゃんに顔向けすることができるのかな?


 ―もちろん、答えはわかっている。


 ゼブ様から、ノーラたちからユウナちゃんを助け出す!!


 そして謝るんだ。


 それだけじゃなく、ちゃんとお礼を言うんだ!!優しいユウナちゃんは謝られても困った顔を浮かべるはずだから、感謝の気持ちも示すんだ。


 あと、はぐらかしてしまったボクの【剛腕の才能】のことについても話したいと思う。話すことによって、困難に直面しても前向きなユウナちゃんから力を分けてもらいたいから。


 なにより、助け出したユウナちゃんの力になれる前向きなボクになりたいんだがら!!


▽▽▽


「ミラちゃん、大丈夫かい?」


「にゃぎゅぎゅ?」


「はい、大丈夫です。ルシアさん、魔王ネコちゃん」


「よし、きつけ薬を渡すからラルフ君とゴレット君を起こしてくれるかい。魔王ネコちゃんは私と一緒にマリアベルちゃんたちの麻痺を治すよ」


「にゃぎゅっと」


 ルシアさんはボクを助け起こし、薬を渡してくれた。ユウナちゃんのことは気がかりだけど、先にラルフたちを治して状況を改善しないと。ラルフとゴレットにきつけ薬を嗅がすと、程なく気を取り戻したよ。


「くっ、ミラ、ユウナはどうした!?」


「ごめん、ゼブ様たちに連れ去られちゃった」


「くそがっ、代表め…」


「ラルフ君たちは気が付いたかい?」


「はい、ルシアさん」


 マリアベルさんとネコちゃんたちがルシアさんたちの手を借りて、こっちに歩いてきた。


「なっ、ルシアさん?」


「ルシアさんだと?」


「意識はちゃんとしているようだね、2人とも。質問があるだろうが、ちょっと待ってくれるかい。場所を【妖精の針子】に移そう。お前さんたち【光の剣】のメンバー宛の手紙を魔王ネコちゃんが預かっているからね。ヨナちゃんも、もう落ち着いてだろうから合流したほうが効率的さね」


 ラルフたちが声を上げようとしたけど、ルシアさんが口早に指示を出した。目を白黒させているラルフたちも、流石にルシアさん相手に意見できないようで素直に頷くしかなかったみたいだね。


「マリアベルちゃんやネコちゃんたちも良いかい?」


「えぇ、わかりました」


 マリアベルさんは直ぐに同意をしたけど―。


「にゃふ!!」「にゃきゅきゅ!!」「にゃむにゃ!!」「にゃぷにゃぷ!!」


 ネコさんたちが魔物と相対する時のような表情を浮かべて唸り声を上げてる。言葉はわからないけど、直ぐにでもユウナちゃんを助けに行こうとしているように感じるよ。


「にゃぎゅ!!」


 これに声を上げたのは魔王ネコちゃんだった。


「にゃぎゅぎゅ、にゃぎゅ。にゃぎゅー、にゃっぎゅ」


 ネコちゃんたちと同じく言葉はわからないけど、その落ち着いた佇まいからネコちゃんたちを説得しているということはわかる。


「にゃふ~」「にゃむっと」「にゃぷっと」「にゃきゅ」


 殺気立っていたネコちゃんたちだけど、魔王ネコちゃんの言葉にひとまず納得したようだ。


「すまないね、ネコちゃんたち。それじゃ早速だけど行こうかい。そうだ、壊れた門はエンチャントで軽く修復しておくとしよう。請求はゼブリーズたちにするから安心しなよ」


 場を和ませつつ移動を促すルシアさんと共にボクたちは【妖精の針子】に移動することになった。


▽▽▽


「おばあちゃん、大丈夫だったですか~!!」


 【妖精の針子】で出迎えてくれたのは店主のルゥちゃんだった。


「残念だけど、ユウナちゃんをゼブリーズたちに連れ去られてしまったさね」


「そんな~」


 ルゥちゃんが泣きそうな表情を浮かべているよ。


「ルゥ、安心しなよ。出かける時に行ったけどユウナちゃんは絶対に助けるさね。それにユウナちゃんはハッピーエンドを諦めていないって言ったのさ。ルゥもユウナちゃんが帰ってくることを信じて待つんだよ」


「…はい~」


「よし、いい子だよ」


「にゃふ~」


 ルゥちゃんはルシアさんに頭を撫でられ、ネコちゃんたちが抱き着いてくれたことによって涙をこらえている。こんなに小さい子を悲しませるなんて、やっぱりゼブ様やノーラたちは間違っている。絶対にユウナちゃんを助けないと!!


「ユウナ、連れ去られた?」


 ルゥちゃんに続いて奥から出てきたのはヨナちゃんだった。ザインから逃げる際に負った怪我のせいか、足取りが重いみたいだ。


「すまないね、ヨナちゃん。冒険者ギルドのシェラスも協力者で、空間転移魔法の使い手だったから逃げられてしまったよ」


「そう…ユウナを助けたい。ゼブ様たちはどこに逃げた?ヨナが潜入したゼブ様の別荘?」


「今はわからない。ゼブリーズは別荘をいくつか所有しているのさね。シェラスの転移魔法があれば、アリスちゃんがいてもアジトを移動することが可能だからね」


「すみません、ルシアさん。ヨナや貴女は状況を把握しているみたいですが、僕たちはわけが分かりません」


「あぁ、すまないね。まずは私たちが知っている情報と、ラルフ君たちが知っている情報のすり合わせが必要さね。キッチンに移動しよう。ルゥ、みんなに飲み物を用意してくれるかい」


「はい、わかりました~」


 ルシアさんに促されて、ボクたちはキッチンに移動した。ルゥちゃんは手慣れた手つきで紅茶を用意して、ボクたちに配ってくれる。


「ルシアさん。申し訳ないが、今は情報の共有より行動が必要ではないですか?ユウナの命が懸かっているのですから」


 ルシアさんの提案にラルフが異議をとなえた。ラルフが言うように、今すぐにでもユウナちゃんを助けるために行動をとるべきだとボクも思っている。


「慌てないでほしいね、ラルフ君。ゼブリーズの行方については時がくればわかるようになるなのだからね」


「時がくれば…ですか?」


「そうさね」


「その時とはいつなのですか、ルシアさん」


「それはゼブリーズがユウナちゃんに【サクリファイス】を使わせようとする時さね。正確に言うとユウナちゃんの魔力が回復したら、【サクリファイス】成功させるために必要な物が置いてある場所に連れていかれる。回復までは数日はかかるそうだから、そこでゼブリーズたちを待ち伏せするという算段さね」

 

「その情報は正確なのですか?」


「あぁ、ある御方から授かった情報だから間違いないさね」


「ある御方?」


「まぁ、その話は最後にするよ。その御方が直接話してもいいと書いてあったからね。二度手間にならないように、先に全員で情報を整理しておきたいという意味もあるのさ」


「はぁ、わかりました」


 よくわからないけど、ルシアさんがそこまで言うのならとボクたちは従うことを選んだ。


「俺たちが今分かっているのは、ゼブリーズ代表が孫の為にユウナをさらったということだ」


「ヨナが知っているのは、ラルフの依頼でゼブ様が怪しいとわかったこと。調査の為の潜入がばれて、ザインに撃退された」


「ヨナさんの斥候能力でもばれてしまうとは、流石としか言いようがありませんね」


「私が知っているのは、ヨナちゃんから教えてもらったことと魔王ネコちゃんが持っていたメモの内容さね。あとは腐れ縁でゼブリーズについて多少知っているってことくらいだ」


 ゴレット、ヨナちゃん、それにルシアさんが知っている情報の概要を述べる。


「そうか。実は僕たちはゼブリーズさんがユウナに今回の襲撃の事情を説明していたのを聞いている。真実かはわからいけどね」


「ふむ、ゼブリーズが強硬策に打って出たくらいだから、今更嘘の情報は言わないさね。じゃあ、まずはユウナちゃんの家での出来事をラルフ君たちから話してもらおうか。次にヨナちゃんの調査結果、そして最後に魔王ネコちゃんが持ってきた伝言のメモを読んでもらうとしよう」


「あぁ、それなら俺から話をさせてもらおう」


 パーティーを組んでいた時の役割分担のように、ラルフに代わりゴレットがユウナちゃんの家で起こった出来事を説明し始めた。こんな状況じゃなかったら懐かしく思えたのかもしれないけど。


▽▽▽


「アリスちゃんの病気。【世界樹魔法の才能】に【リジェネ―ション】と【サクリファイス】。それをユウナが手に入れた?」


「うん。実際にボクの両腕が再生したからね」


 ゼブ様に両腕を切り落とされた時のことを思い出し身震いしたけど、すぐにユウナちゃんの頑張りを思い出して心が奮い立った。


「ゼブ様がしたという説明はヨナが調べたこととほとんど同じ」


「そうかい。やはりゼブリーズは嘘をついてはいなかったみたいさね」


「ヨナがザインに見つけられなかったら、ユウナが連れ去られなかったかもしれない。悔しい」


「いや、残念ながら僕たちではゼブリーズさんたちは撃退できなかっただろう。それほどまでに彼らの実力は凄まじいものだった」


「悔しいがラルフの言うとおりだ」


「ゴレット…」


 尊大な態度をするゴレットだから勘違いされがちだけど、自分への過大評価や他者への過小評価をすることはしない。そのゴレットが実質自分たちが負けたであろうと口にしたことが、ボクたちに重く響いた。


「起こったことを悔やんでるだけじゃ、事態は好転しないさね」


「えぇ、そうですね、ルシアさん。次はヨナさんの報告の番ですよ」


「ヨナの報告だけど今ゴレットが話した内容とほとんど被る。無駄かもしれない」


「いや、ヨナ。少しでも情報が欲しいから話してくれないか」


「そうだな。そう言えば、ラルフとヨナはユウナのトラブルについて何かしら思うことがあったから行動したのだろう」


「確かに話を聞くとユウナさんのトラブルの多さには驚きますが、そのトラブル一つ一つにつながりを感じられません。ラルフさんは何を不審に思ってヨナさんに依頼を出したのですか?」


 マリアベルさんの言うとおりだとボクも思った。


「いや、特に何がという確証はなかった。ただ、ユウナとネコさんが困っているからほっとけなかったというのが理由だ」


「はぁ、相変わらず女性に優しいですね」


「にゃふふ」


「レディに優しくするのは当たり前のことだよ。まぁ、何か悪いことが起こりそうな胸騒ぎがしたのは事実だけどね」


「ラルフの悪い予感って的中率高かったよね。実際、当たっているし」


「話がそれているぞ。ラルフの胸騒ぎはおいておけ。ヨナ、お前は実際にゼブリーズ代表までたどり着いた。どうやって、特定したんだ?」


「そういえば、ヨナちゃんが来るより先に襲撃されたから忘れていたけど、ヨナちゃんはその前にゼブ様が元凶だと突き止めていたんだよね」


 ボクの場合はわけがわからないままにザインにやられてしまったけどね。


「ヨナが最初に怪しんだのはゼブ様じゃない」


「ゼブリーズさんじゃない?」


「そう。はじめに怪しいと思った人物はノーラさんだった」


「えっ、ノーラなの!?」


 ノーラがゼブ様を手伝ってユウナちゃんを連れ去ったことはもちろん知っているよ。でも、同僚であり友人であるノーラの名前が真っ先に出てきたことに驚いてしまった。さっきヨナちゃんは自分がザインに見つからなければと「たられば」の話をしたけど、ボクこそ友人であるノーラの苦悩に気づいていたら今回の事件は起こらなかったのかな?そんな後悔が心に浮かんでしまった。


お読みいただきありがとうございました。

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