第5話 ユウナとドワーフネコさんと街の孤児院(後編)
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編集しました。編集内容は後書きに書いております
私たちはマリアベルさんたちに孤児院の食堂へと案内してもらっています。
「そういえば、ユウナさん。先ほど3人から聞いたのですが、昨日クーちゃんがお世話になったようですね。ありがとうございました」
「あっ、いえ。私ではなくて天使ネコさんが治療したのです」
「そうですか。天使ネコさん、ありがとうございました」
「にゃきゅっと」
マリアベルさんが頭を下げると、天使ネコさんがたいしたことではないですよとという風に手を振っています。流石は天使ネコさんです。
「そういえば、3人はユウナさんたちに自己紹介をしましたか?」
「あっ、すみません。まだしていないです。私はドラゴンの獣人のキリカと言います。皆にはキーちゃんって呼ばれています」
「シンシアは犬の獣人だよ。シーちゃんってよばれてるよ」
「クーちゃんはネコのジュウジンだにゃー。なまえはクレアにゃー」
3人が自己紹介をしてくれました。クーちゃんとシーちゃんは猫と犬の獣人でキーちゃんはやはりドラゴンだったのですね。私たちも改めて挨拶をしました。
食堂に着いた私は、マリアベルさんに食器を借りて食卓にサンドウィッチを並べます。マリアベルさんと3人の女の子たちはサンドウィッチに興味津々のようですね。
「これがユウナさんの作ったサンドウィッチという料理ですか」
「これって、高価なパンですね」
「ゆで卵がかわってるよ」
「おいしそうだにゃ~」
「はい、どうぞ召し上がって下さい」
「ユウナさん、ありがとうございます。世界樹と女神リューネに感謝を」
世界樹教団の教えなのでしょうか。マリアベルさんが手を組み世界樹と女神さまに感謝の言葉を述べると、キーちゃんたちもそれに倣います。まぁ、マリアベルさんたちにこのサンドウィッチを食べる機会が訪れたのは確かに女神さまのおかげ?なので正解と言えますね。
「パンがフワフワだにゃー。にゃ!?なんにゃ!?おいしいにゃー!?」
「こっ、これは何の味ですか?美味しいです」
「おいしい!!おいしいよ、サンドウィッチ!!」
「これは?初めて食べる味ですが非常に美味しいですね」
「マリアベル。ゆで卵についている味はマヨネーズという調味料。ユウナが作った」
「マヨネーズですか。こんな調味料は初めてです。ユウナさんは料理の天才ですね」
「あっあの、違いますよ。この調味料は私の故郷で好まれている調味料ですので作り方を単に知っていただけなのです」
「ユウナさんの故郷の味なのですか。それでもマヨネーズの作り方を知って作るための努力を行ったユウナさんのおかげで私たち4人は美味しいご飯を食べることができたのです。ユウナさんは素晴らしいのですよ」
「ユウナおねーちゃん、ありがとうだにゃ」
「ユウナお姉ちゃん、ありがとう」
「ユウナさん、ありがとうございます」
マリアベルさんに続いて3人の女の子たちがお礼の言葉を伝えてくれます。何だか照れくさいですね。
マヨネーズ味のサンドウィッチはマリアベルさんたちにも好評だったようで、瞬く間に無くなりました。サンドウィッチを食べ終わった後はクーちゃんたち3人とネコさんたちは庭に遊びに行き、私はマリアベルさんとヨナさんとお茶を飲みながら雑談をしています。話題はマリアベルさんが入信している世界樹教団と、この孤児院についてです。
「私が入信している世界樹教団は世界樹と世界樹を管理する女神リューネと崇めています。女神リューネは生命と慈悲を司るため私たち信徒も慈悲の心を持ち困窮者を救う活動を行っています。その一環として孤児院を開いているのです」
「今この孤児院にいるのはクーちゃんたち3人ですか?」
「そうです。孤児院は信者や活動に理解ある方たちからの寄付によって運営されています。この孤児院は私の力が足りず、3人を養っていくのが精いっぱいなのです」
「カーヤの街は冒険者の街。流れ者が多く積極的に寄付する人は少ない。マリアベルのせいではない」
「ありがとうございます、ヨナさん。世界樹教団は私のような信徒も含めて1人の人物から1か月間に寄付していただく額の上限を決めています。これは寄付をすることによって寄付者自身の生活が困窮することを防ぐための決まりなのです。この決まりは他者だけではなく自身も愛せよという女神リューネの言葉から作られました。私自身はこの孤児院の院長に就任する前に冒険者として活動していてそれなりの資産を築くことができたのですが、決まりにより孤児院の運営には決めれた金額しか用いることができません」
「そうなのですか…」
マリアベルさんは世界樹教団の信徒として孤児院の運営をされていますが、自身の資産を運営に使えず寄付に頼るのは心苦しいのではないのでしょうか?
「人は生きていくうえで必要とするお金は実はそれほど多く必要としていません。支援者から寄付をいただく身ならば尚更節約しなければなりませんね。もちろん、孤児院として子供を預かる以上、子供の成長や教育に対してかかるお金はそれなりに見積もっています。病気などの子供たちの生命にかかわるような事態については特例として設定額以上の寄付を募ることや信徒による支払いを認めているのです。また、戦争や魔物の襲撃によって孤児になってしまう子供が増加した場合は、他の街の孤児院と連携して受け入れ先を探したり、教団本部に申請をして援助金を用意してもらうことなどもあります」
「それなら安心ですね」
疑問に思ったことが表情に出ていたのでしょうか?マリアベルさんが説明を追加してくれました。
「すべては女神リューネの御心のままにです」
うーん、私は女神様を知っているので何ともギャップを感じます。もちろん、心優しい方というのはわかりますが…。そういえば、女神様の処遇はどうなったのでしょうか?確か女神長様に書類処理地獄…内勤に命じられたはずですが。
「先生、お客様です」
女神様のことを考えているとキーちゃんが戻ってきて来客を告げました。
「キーちゃん、どなたですか?」
「治療院の二コラさんです」
えっ、来客者は天使ネコさんを勧誘した二コラさんですか!?
「はぁ、また来られたのですね。キーちゃん、クーちゃんたちと部屋に戻ってください。ヨナさん、ユウナさん、すみません。来客があったようなので皆さんはこの部屋で待っていてください。ネコさんたちも呼んできますから」
「ユウナ、どうする?」
「すみません、マリアベルさん。私たちも一緒に行ってもいいですか?二コラさんは庭にいる天使ネコさんと顔を合わせているはずですから」
「ユウナさんは二コラさんを知っているのですか?」
「街中で【キュア】を使う天使ネコさんを二コラさんに見られて治療院に勧誘されているのです」
「もしかして、クーちゃんを助けてもらった時のことですか?」
「えっと、はい、そうです」
「それは何と言うか、すみません」
「いえ、天使ネコさんは当然のことを行っただけですから、気にしないで下さい」
勧誘されていると言った時にマリアベルさんが顔をしかめたので、何かしら思うことがあるのでしょうか?
「ありがとうございます。それではユウナさんたちも一緒に行きましょう」
▽▽▽
私たちは玄関に着くと二コラさんが天使ネコさんに熱心に話しかけています。天使ネコさんたちは困惑していますが、険悪なムードにはなっていないようです。
「こんにちは、二コラさん」
マリアベルさんが二コラさんに挨拶をすると、天使ネコさんたちは私の後ろに走ってきて隠れました。
「マリアベルさん、ご機嫌麗しゅう」
二コラさんは私を見て眉をひそめましたが、マリアベルさんに向きなおり演技がかった挨拶を返していました。
「本日のご用件は何でしょうか?」
「もちろん、マリアベルさんに我ら治療院の活動に参加してもらえるようお願いに参りました」
「その件については以前からお断りしているはずですが…」
「マリアベルさん、我々は組織こそ違えど同じ信仰の下に活動しています。何も世界樹教団を脱退して治療院に入ってほしいとは言っていません。情けない話ですが、カーヤの街での治療院への認知度は高くはありません。ですから、マリアベルさんに聖女として活動に参加してもらい治療院の認知度と治癒魔法使いの地位の向上の手助けをしてほしいのです」
「私ごときが聖女とはおこがましいですよ、二コラさん」
「聖女?」
マリアベルさんと二コラさんの会話を聞いていると聖女という初めて聞く単語が出てきました。
「にゃふ、にゃふにゃー。にゃふにゃふっと、にゃふー」
「にゃきゅ~。にゃきゅにゃ。にゃきゅにゃ~」
「にゃぷぷ。にゃっぷ。にゃぷにゃぷ」
「にゃむっと、にゃむ~。にゃむむ」
「えっと、皆さん?」
思わず、聖女と呟くとネコさんたちが興奮したように私に話しかけてきます。ネコさんたちとの意思疎通は私のみが言葉がわからないため、普段は身振り手振りを交えたイエス・オア・ノーになるような形になるのですが、今回は違ってネコさんたちが積極的に私へと話しかけています。
「確か貴女は天使ネコさんと暮らしているユウナさんでしたね」
「あっ、はい、そうです」
私が困っていると二コラさんが私に話しかけてきました。出会った時にした自己紹介を覚えているようですね。正直、天使ネコさんにしか興味がなさそうだったので少し意外です。それとも単純に記憶力がいいのでしょうか?
「ユウナさんは聖女様についてご存知ないのですか?」
「えっと、すみませんが初耳です」
二コラさんは特に怒った風ではないのですが、問いかけに対して何となく謝ってしまいました。
「やはりそうですか…」
「やはり?」
今までと打って変わって二コラさんが私に注目しています。聖女を知らないことはこの世界ではおかしいことなのでしょうか?
「…いえ、何でもありません。聖女は我ら治癒魔法使いの象徴とも言える女性です。聖女が行われた様々な奇跡は絵本にもなっています。我々治癒魔法使いにも関連することですのでぜひ一読してください」
「えっと、わかりました」
親切に説明してくれたのは布教活動だったからですか。
「来客中みたいですから本日はこれで失礼します。ですがマリアベルさん、貴女の治癒魔法使いとしての才能は冒険者の街であるカーヤでも上位の存在です。実力も人格も聖女として活動されるには十二分ですので、次回お伺いした時にはぜひ良い返事をお願いします」
「二コラさん、何度も言いますが私などは聖女様の足元にも及びません」
「…天使ネコさんも治療院への参加をお願いします。それでは失礼いたします」
「にゃきゅきゅ」
天使ネコさんは首を横に振りましたが、二コラさんは気にすることなく一礼すると孤児院を後にしました。
「何回も断っているのですが諦めない人ですね。食堂の方へ戻りましょうか」
▽▽▽
「キーちゃん、もういいですよ」
食堂に戻り、マリアベルさんが2階に上がったキーちゃんたちに声を掛けます。
「わかりました」
キーちゃんが返事をすると、3人が食堂に降りてきました。
「せんせい、だいじょうぶかにゃ?」
「えぇ、大丈夫ですよ。ありがとうございます、クーちゃん」
心配そうに駆け寄ってきたクーちゃんが抱きつくと、慈愛に満ちた表情でマリアベルさんが頭をなでています。先ほどの二コラさんの話ではありませんが、今のマリアベルさんを表現するなら聖女と言う言葉こそ相応しいと思います。
「マリアベル、困っている?」
「大丈夫ですよ、ヨナさん。二コラさんは信仰心の強さから行動が強硬になっているだけです。しかし、私程度で聖女とは少し冷静にはなってほしいですね」
「あの、マリアベルさん、すみません。聖女とはどういった人物なのでしょうか?」
マリアベルさんとヨナさんが話をしている途中ですが、先ほどから出ている聖女という単語が気になり説明を求めてしまいました。
「ユウナおねえちゃん、セイジョさまをしらないかにゃ?だったら、エホンをかしてあげるにゃ」
私がマリアベルさんに質問すると、クーちゃんが元気よく話しかけてきました。私がマリアベルさんを見ると、すみませんという風に苦笑いしながら頷いています。
「そうですか。それなら絵本を貸してもらっても良いですか?」
「わかったにゃ。クーちゃんたちのヘヤはこっちにゃ」
ニコニコとしているクーちゃんに手を取られて2階の部屋へと案内されます。
「ここがクーちゃんたちのヘヤにゃ。エホンをさがすからまっててにゃ」
クーちゃんに案内された部屋は3つのベッドが窓際に並んでいますね。キーちゃん、クーちゃん、シーちゃんの3人部屋なのでしょう。ただ、絵本なのでしょうか?ベッドの反対側の壁際の床に本が置かれていて、クーちゃんがあれでもない、これでもないと手に取りながら聖女様の絵本を探しています。
「えっと、マリアベルさん。本棚はないのでしょうか?」
クーちゃんが必死に絵本を探しているので、一緒に2階に上がってきたマリアベルさんに質問をしました。
「恥ずかしながら、本棚を買うほどの寄付金を集めれていないのです」
「あっ、すみません。この街では家具は高価だったのですね」
ちゃぶ台みたいな机を買った時のことを思い出しました。
「衣食住については世界樹教団からの支援もあり比較的満たされるのですが、本棚など無くても困らない家具は各孤児院の運営により手に入れなくてはならないのです。あと、この孤児院は納税を免除されているので、家具を買う時の補助金を受け取ることができませんし」
「だったら、材料を買って自作したら安く手に入れることができませんか?」
私の脳裏に浮かんだ単語はDIYです。
「自作ですか?材料を買う問題もありますが、私たちは家具を作る知識も技術も持ち合わせていないのです」
「だったら、私たちが作ります」
ドワーフネコさんの【クリエイトツール】と技術、それに私の知識があれば本棚なら作れます。
「ユウナさんたちは家具を作れるのですか?ですがいくら出来合いの家具と比べて材料なら安くなるとはいえ、たぶん1か月の寄付金の限度を超えてしまいます」
「それも大丈夫ですよ。私にちょっとした考えがありますから」
マリアベルさんにちょっとした考えを説明しました。
「なるほど、それなら寄付としてお受けすることができます。…あの、ユウナさんはどうして私たちに良くしてくれるのですか?確かに私はヨナさんの友人ではありますが」
「私たちは最近この街に住むようになり、多くの人たちにお世話になりました。今度は私たちが恩返しをする番です。それに…」
「あったにゃー。ユウナおねえちゃん、これがセイジョさまのエホンだにゃー」
「絵本を貸してもらうお礼ですよ」
▽▽▽
「おう、いくらでも持って帰ってくれ。こっちとしても処分する手間が省けて助かるからな」
「ありがとうございます」
「にゃぷにゃぷ~」
私とドワーフネコさんが来たのは机を買った雑貨屋さんです。雑貨屋さんは予定通りにリニューアル工事を行っていて、前の道には商品や工事によってでてきた廃材が並べられています。ここで重要なのは商品ではなくて、廃材です。実は机の代金を支払う時にリニューアル工事で出る廃材があるのなら貰うことはできないかと質問していたのです。もちろん、その時は孤児院の家具を作るためではなくて自宅用にと思っていたのですが。
「それではここにまとまっている木材を全部貰います」
作業の邪魔にならない場所には大小様々な木材が置かれていました。これなら本棚を作っても余りがありますね。
「いいぞ、持って行ってくれ。ただ、大丈夫か?いくら、その猫ちゃんが机を持ち上げるだけの力があるとはいえ、かなりの重量だぞ」
「それなら大丈夫ですよね、ドワーフネコさん」
「にゃぷっと。【にゃぷにゃっとにゃーぷ】」
【クリエイトツール】を発動させると、ドワーフネコさんの手には蛍光色ピンクの縄が現れました。本当に便利な才能ですね。ドワーフネコさんは手際よく廃材を積み重ね、魔法の縄で縛っていきます。縄で縛り持ち手が作られた廃材をドワーフネコさんはいとも簡単に持ち上げます。
「それでは雑貨屋さん、失礼します」
「にゃぷにゃ~」
「は~、本当に凄いもんだな。まぁ、気をつけて帰りなよ」
私たちは驚いている雑貨屋さんにお礼を言って孤児院に戻ります。
孤児院に戻ってくるとと庭で遊んでいたクーちゃんたちとネコさんたちが出迎えてくれました。
「お帰りなさい、ユウナさん。これが本棚の材料ですか?」
「おかえりだにゃー。ドワーフネコさんすごいにゃー」
「わー、いっぱいだね」
子供達には出かける前に本棚を作ることを伝えていたので、興味津々な視線を向けてきます。
「はい、この材料から本棚と何か別の家具も作ります。作業中は危ないから近寄らないでくださいね」
「わかりました。それでは部屋で待っています。クーちゃん、シーちゃん、部屋で遊びましょう」
キーちゃん気を使ってくれ子供たちは部屋に戻っていきました。ネコさんたちも子供たちと遊んであげるためなのか一緒についていきます。
「それでは本棚を作ろうと思っていましたが、予想以上に材料が多く手に入ったので勉強机と椅子も作りましょうか」
「にゃぷっと」
「ドワーフネコさんは家具を作ったことはありますか」
「にゃぷっと。にゃぷ~にゃ、にゃぷ~にゃ」
ドワーフネコさんは頷くと、廃材から木の棒を手に取り地面に絵を描いていきます。
「えっと、これは…机に椅子に…棚ですね。それと…ログハウス!?」
ドワーフネコさんの絵は地面に描いているのにクオリティが高く一目で何かわかります。ですが、問題はそこではありません。棚の横に描かれたのはどう見てもログハウスなのです。家具ではありません、家です!!住宅ですよ!!
「にゃぷっと」
ドワーフネコさんは良い笑顔で私を見上げています。もちろん、嘘をついていないのは間違いありません。ですが、私のDIYの知識でドワーフネコさんに腕を振るってもらおうと思っていましたが、これでは素人が本職の大工さんに口出しをするようなものです。
「えっと、では本棚を作ってもらっていいですか。私は出る幕がなさそうですので…」
「にゃぷぷ。にゃぷっと、にゃぷ~」
私が提案をすると、ドワーフネコさんは首を横に振り手を握ってきました。
「えっと、私もお手伝いしてもいいのですか?」
「にゃぷっと!!」
うー、ドワーフネコさんは優しいですね。それでは大工さん並みのドワーフネコさんを手伝えることと言えば…、やっぱり日本人としての知識ですよね!!
「えっと、ドワーフネコさん、このような家具は知っていますか?」
「にゃぷぷ」
私は日本でおなじみのとある家具を説明したが、どうやらこちらの世界では同じようなものは無いのか知らないみたいです。
「そうですか。ではこの家具をいくつか作ってもらって、この壁の板をやすり掛けしてもらい…」
「にゃぷっと!?にゃぷぷにゃー」
私の提案にドワーフネコさんが目を輝かせて万歳をしています。どうやら、私のアイデアを気に入ってくれたようです。
「それでは作っていきましょうか。私も出来る限りお手伝いしますから」
「にゃぷっとー!!」
▽▽▽
「お待たせしました。本棚ができましたよ」
「にゃぷっと~」
私たちの声掛けに子どもたちが元気よく庭に駆けだしてきて、続いてネコさんたちとマリアベルさんたちが出てきました。
「わーい、ホンダナだにゃ。にゃ?これがホンダナかにゃ?」
「あの、これは箱ですね」
「この箱を本棚にするの?」
クーちゃんたちは私たちが作った本棚を見て困った表情をしています。マリアベルさんとヨナさんも首を傾げています。
「そうですよ。すみませんが、この本棚を子供たちの部屋に運ぶのを手伝ってください。」
「はーい」「わかりました」「わかったにゃ」
戸惑いつつも子供たちは素直に手伝ってくれます。ネコさんたちも含め人数が多いので一回で全ての本棚を部屋に運ぶことが出来ました。
「ユウナさん、この箱が本棚なのですか?」
運び終わって一息つくと、キーちゃんが代表して質問をしてきました。
「えっと、正確には本棚ではなくてアイデア次第でいろいろな用途に使える箱型の棚です。私の故郷ではカラーボックスと呼ばれていますよ」
私がドワーフネコさんに作ってもらったのはホームセンターなどで安価に購入することができるカラーボックスです。今回複数個作ってもらったのは長方形で背板のある形のカラーボックスになります。ただ、カラーボックスと表現しましたがペンキがないので木目調ですが。
「では、キーちゃん一番大きな本を持ってきてくれますか?」
キーちゃんは床に積み上げている本の中から週刊漫画雑誌くらいの大きさのものを持ってきました。この孤児院にある本の大きさは先ほど把握しているのでカラーボックスをそれらに対応できるように作っています。
「この大きさだとカラーボックスは縦置きですね。それでは本を入れてください」
キーちゃんが本をカラーボックスに入れるとキレイに収まりました。
「このように収めたい物品によって置く向きを変更することができます」
「でも、この箱だと本がそんなに入らないよ?」
質問してきたのは犬の獣人のシーちゃんです。
「はい、このカラーボックス自体は本棚と比べて収納スペースは少ないです。ですが、カラーボックスを何個か用意することで収納スペースも増えますし、大きさが小さいことから逆に様々な場所に設置くことが可能です。例えば、3人のベッドの隙間ににカラーボックスを置くことで寝る前に読書をすることもできますよ」
「ほんとうかにゃー?それならセイジョサマのエホンをおきたいにゃー」
「なるほど。小さいからこそ置く場所を選ばないのですね」
「そっかー、1個1個は収納スペースが少なくても数を増やせばいいんだね」
私の説明に3人はそれぞれのカラーボックスの活用方法を見つけたみたいですね。
「そうなんです。それでは先ほどキーちゃんが持ってきてくれた本は大きくてカラーボックスは縦置きになりました。他の本ではどうでしょうか?本を高さで分類して横置き、縦置きにしたそれぞれのカラーボックスに入れていきましょう」
「わかったにゃー」
ネコの獣人のクーちゃんが率先して本を高さで分類していきます。それをキーちゃんとシーちゃんが手伝っていく形になりました。しばらくすると全ての本がカラーボックスに収まりました。
「えっと、本はカラーボックス3つで収まりましたね」
「ユウナさんのおかげで子供たちの本が綺麗に収納できましたね。本を収めたカラーボックスは部屋の入り口付近の壁際に設置しましょうか」
マリアベルさんが場所を決めるとドワーフネコさんが本が入った重さを物ともせず設置します。
「部屋がきれいになったよ」
「やったにゃー」
「掃除がしやすくなりました」
今までの直置きから、カラーボックスに本を収納したことによって部屋が広くなりました。キーちゃんが言うように掃除もしやすくなっていますね。
「ユウナ、カラーボックス?大分余っている。作りすぎた?」
ヨナさんの余っているカラーボックスを見て首を傾げています。
「大丈夫ですよ、ヨナさん。それでは3人に本棚以外のプレゼントがあります」
「なにをくれるのかにゃ?」
「3人の個人の机ですよ」
「本当ですか!?」
「にゃにゃ?」
「机がもらえるの?」
「そうですよ。ドワーフネコさん、お願いします」
「にゃぷっと」
ドワーフネコさんは余っているカラーボックスを横置きにして2つを積み重ねます。積み重ねる時にカラーボックスの側面に空いた穴に円筒形のダボという木材の棒を差し込んでカラーボックス同士を連結しました。それを2個1組で3人分を用意してもらいます。
「これがツクエかにゃ?」
「はい、この積み上げたカラーボックスを間隔を開けて置いて、その上にこの板を置きます」
ドワーフネコさんが積んだ2個1組のカラーボックスに橋渡しをするようにやすり掛けをした壁板を設置します。
「あっ、机です」
「ツクエになったにゃー」
「ほんとうだ。すごいね!!」
「これは確かに机ですね。箱と板を組み合わせることで作れるとは素晴らしいアイデアです」
雑貨屋さんに聞いた話では、この世界は家具などの道具は上質なものを長く使うという考えが浸透しているそうです。だから、こういった簡易で使い方次第という発想はないみたいです。
「クーちゃんたちが成長して机の高さが低くなったら、カラーボックスを縦置きにして下さい」
私の説明にみんなが感心してくれています。最後に縦置きしたカラーボックスにクッションを乗せた簡易的な椅子を用意しました。3人の体重なら強度的に問題はないでしょうが、念のために中につっかえ棒をいれて強度アップをしておきます。クーちゃんたちは、自分の机がもらえたことが余程うれしいのか、座って本を読んだり、ベッドに置いていたぬいぐるみを飾ったりしています。マリアベルさんもそんな3人を微笑ましそうに眺めています。
「大成功ですね、ドワーフネコさん」
「にゃぷっと」
ドンッ、ドンッ!!
「あら、来客ですか?」
ドワーフネコさんと喜びのハイタッチしていると、玄関の方からドアをたたく音が聞こえてきます。
「マリアベル、いるか!!」
「この声はラルフさん?」
「マリアベルさん、ごめんなさい。入るよ」
続いて聞こえてきたのはミラさんの声です。2人は慌てたように部屋に入ってきました。
「ラルフさん、ミラさんどうしたのですか?」
「すまない、マリアベル。緊急事態だ」
「って、ヨナちゃんにユウナちゃん、ネコちゃんたちもいたの!?って、ユウナちゃんだよね」
「えっと、はいそうですが?」
「メガネはどうしたの?って、素顔が…」
「ミラ、どうしたんだ?緊急事態なんだぞ。ユウナの素顔がどうしたん…綺麗だ…」
「どっ、どうしたんですか?2人とも」
「ラルフ、ミラ、どうした?」
「ラルフさん、ミラさん、緊急事態とは何ですか?」
「あっ、すっ、すまない。動揺してしまった。ゴホンッ。魔物が大群でカーヤの街に進行してきている。マリアベルには応援を頼みに来たが、ヨナにユウナたちも冒険者ギルドに来てくれないか?詳しい説明はそこでする」
「魔物ですか?わかりました。子供たちに説明してからすぐに向かいます」
「わかった。ユウナたちはどうする?」
「えっと…」
「ユウナちゃん、とりあえず来てくれる?前のゴブリンキングの件に関連することだから話だけも聞いて欲しいんだ」
私が迷っているとミラさんが助け舟を出してくれました。
「わかりました。ネコさんたちも行ってくれる?」
「にゃふっと」「にゃむっと」「にゃきゅっと」「にゃぷっと」
何が起きているのかわかりませんが、ラルフさんたちが慌てるほどの緊急事態のようです。それにしても魔物の大群の進行!?私たちの異世界生活はどうなるのでしょうか?
H29.8.3 編集あり
ラルフとミラがユウナの素顔を見て反応するシーンを追加しました




