第2話 ユウナとエルフネコさんのお買い物(装備編)
体調と仕事の折り合いがついたので、何とか投稿を再開できるようになりました。
昨日のエルフネコさんの歓迎会でラルフさんからゴブリンキング討伐の報酬が貰えると教えてもらったので、朝食を食べてから冒険者ギルドに来ました。昨日は疲れがあると思ったので、起床は9時過ぎにしたので今はスマホの時計が10時33分を表示しています。
冒険者ギルドに入ると、ちょうど冒険者はまばらで受け付け込み合っていません。受付にはノーラさんが座っていたので、待つことなく報酬の件について質問することができました。
「昨日はお疲れ様でした。報酬の件ですね。今朝ラルフさんに頼まれたのですぐに渡せますよ。ちょっと待って下さいね」
ノーラさんは席を立ち、受付の奥へと移動しましたがすぐに戻ってきました。
「今回の報酬です」
「ありがとうございます。って、こんなに貰えるのですか!!」
「それでも、ちょっと少ないくらいですよ」
ノーラさんから渡された報酬は、金貨5枚と銀貨1枚になりました。日本円換算で金貨1枚が10万円、銀貨1枚が1万円だから、52万円です。
ちなみにこの報酬はゴブリンキング2匹とゴブリン約20匹の魔石換金によるものです。ラルフさんとミラさんの好意で、私とネコさんたちチームとラルフさんチームで等分していますから、トータルで104万円相当ですか。ふと思えば、この日本円換算って意味が無いですよね。でも何だか計算してしまいます。【異世界転移・異世界転生あるある】と言ってもいいかもしれませんね。
「えーと、3人で1日の生活費が銅貨165枚だから30日で4950枚。金貨約5枚分だから、今回の報酬で1月分の生活費を稼げたのですね」
金貨が含まれた報酬に驚きましたが、命の危険を伴って1ヶ月分の生活費というのは高いのか、低いのかどうなのでしょう?日本では考えられないにくい判断基準じゃないでしょうか。
あれっ?ラルフさんは生活費約1週間分の稼ぎと言っていましたが、現実には1月分でした。これは、ラルフさんの生活水準が高いということでしょうか?ゴレットさんはラルフさんに対して貴族と言っていたし。…違いますよね。多分、あの場で私たちが恐縮せずに受け取りますと言いやすいように、金額を下げてくれたのでしょう。
「あと、これは薬草の報酬です。薬草1束銅貨15枚で10束あったので銅貨150枚になります」
「はい、ありがとうございます」
エルフネコさんが見つけてくれた薬草の報酬を別に受け取りました。1束は10本分の薬草をまとめたもので、定食3食分の報酬。なかなかの稼ぎですが、宿屋代のことを考えると心許ないですね。ちなみに、採集の時にミラさんに教えてもらったのですが、薬草は根ごと引き抜くのではなく地面付近の茎から刈り取るのが正しいそうです。そうすれば、また成長して同じ場所で薬草が取れるようとのこと。
「でも、今回の件は本当に驚きました。ユウナさんたちは怪我は無かったですか?」
「はい、大丈夫でした。ネコさんとラルフさんとミラさん、そしてエルフネコさんのおかげです」
「そういえば昨日はあわてていて挨拶ができていませんでしたね。えっと、そちらの方がエルフネコさんですか?」
ノーラさんが立ち上がり受付カウンター越しに、視線をエルフネコさんに合わせます。
「はい、名前はエルフネコさんでネコさんのお姉さんですよ」
私はエルフネコさんを抱きかかえ、ノーラさんと自然に目線が合うようにしました。
「にゃむっと。にゃむむにゃむむ」
エルフネコさんはギルドカードを呼び出してノーラさんに差し出します。
「あっ、ありがとうございます」
ノーラさんはギルドカードを受け取り、確認してからエルフネコさんに返します。ギルドカードはまるでサラリーマンの名刺のようですね。交換はされませんが。
「私はカーヤの街冒険者ギルド職員のノーラと言います。エルフネコさん、これからよろしくお願います」
「にゃむっと」
ノーラさんが頭を下げると、エルフネコさんも頭を下げて挨拶をしました。ネコさんもそうですがエルフネコさんも、やっぱり礼儀正しいですね。
「そうだ、ユウナさん。ミラから雑用クエストを受けると聞いたのですが、何か受注したいと思っている依頼ってありますか?」
「えーと、今のところは街の中でできるお掃除クエスト以外としか言えません。今日、冒険者ギルドで探そうと思っていましたから」
「…そうですか。…なら、もし希望する依頼がないようでしたら私に声をかけてほしいのですが…その何て言いますか。うーん、やっぱり、ど
うしたらいいのか?」
「ノーラさん?どうされたのですか?」
「にゃむむ?」
「にゃふふ?」
「あっ、いえ、その…すみません。あの忘れて下さい」
「えっと、ノーラさんが困っているのなら力になりたいのですが」
「あっ、いえ、すみません。冷静に考えると、何とかミラが間に合いそうなので待ってみます」
「ミラさん?よくわかりませんが、わかりました。でも、本当に困っているのでしたら遠慮はしないで下さいね。私たちでも何かの力になれるかもしれませんから」
「にゃふっと」
「にゃむっと」
「あっ、本当にありがとうございます。すみません、心配をかけてしまって。うん、本当にダメだと思ったら頼らせてもらいますね」
「はい。ノーラさんにはお世話になっていますから」
「ふふふっ。ありがとうございます。ゴブリンキングと戦闘しただけあって、初めてきた頃よりユウナさんは頼もしくなりましたね」
「そうですか?自分ではわかりませんが。ネコさん、私って変わりましたか?」
確かにいろいろな経験をして、戦う力も得ました。でも、自分としては頼もしくなったとは思えません。
「にゃふふ?」
うーん、ネコさんは頬に手を当てて首を傾げています。やっぱり、ノーラさんの気のせいですね。
「それでは、この後はエルフネコさんの買い物に行きますから、午後に雑用クエストの依頼を見に来ます」
「はい、お待ちしていますね」
ノーラさんに挨拶をしてから、冒険者ギルドを後にします。行先はもちろん、ルゥちゃんのお店の『妖精の針子』です。
▽▽▽
昨日はラルフさんとミラさんがいたので安心だったのでしていませんでしたが、今日は迷子にならないように2人と手を繋ぎます。今日からはエルフネコさんがいるので、『両手に花』ならぬ『両手にネコさん』ですね。
『妖精の針子』に到着して、店主であり私の魔法の師匠であるルゥちゃんにエルフネコさんを紹介します。
「初めまして~。『妖精の針子』の店主で魔装技師のルゥです~。あと、ユウナお姉ちゃんの魔法の師匠でもありますよ~」
「にゃむむ。にゃむっと」
「はい、よろしくお願いします~」
エルフネコさんとルゥちゃんは挨拶の後に握手をしています。ネコさんと同じように仲良くなれそうですね。
「それでユウナお姉ちゃん、今日も魔法の練習ですか~」
「いえ、今日はエルフネコさんの紹介と買い物に来たのでが、今日は予約はありますか?」
ルゥちゃんの『妖精の針子』はエンチャントアイテムを作成する有名店ですが、私たちがお世話になるようになってから予約制に戻りました。ちなみに予約のお客様がいない日は、ルゥちゃんの気分次第で普通の服飾店として営業していることもあります。予約のある日は『本日は貸切です』という看板を掲げて入り口を閉めており、予約のお客様が来客中は『ただ今、貸切中です』の看板に変更しているとするのです。今日は『本日はお休みです』になっており、ルゥちゃんの自宅入り口側からベルを鳴らして入らせてもらいました。たまに、予約がある日でも営業していたりする日もあるので、念のために確認するようにしてます。
「今日の予約の午後からなので大丈夫ですよ~。ユウナお姉ちゃんは何をお求めですか~」
「エルフネコさんのエンチャントアクセサリーとポシェットの材料と裁縫道具です」
昨日の夜にネコさんがポシェットを嬉しそうにエルフネコさんに見せており、エルフネコさんのポシェットも作りましょうかと尋ねると「にゃむっと、にゃむっと」と笑顔で万歳をしていたので、作ることにしたのです。あと、手持ちもあるしせっかくなのでマイ裁縫道具も買おうと思いました・
「裁縫道具はまたお貸ししますよ~」
「ありがとうございます。ですが、せっかくなので自分の裁縫道具を購入しようかなと思いまして」
「そうですか~。だったら、前お貸ししたのを中古価格で購入しますか~?わたしはプロなのでいっぱい道具をもっていますから~」
「えっ、いいのですか?」
「はい、使わないより使った方が道具も喜びますから~」
「では、お言葉に甘えます。ありがとうございますね、ルゥちゃん」
「師匠として当然ですよ~」
ふふふ、裁縫の師匠ではないのですが、ルゥちゃんの気遣いは嬉しいですね。
「ポシェットの材料は前回と同じようなものでいいですか~?」
「はい。色はエルフネコさんに似たものでお願いします」
「わかりました~。あと、アクセサリーはどうしますか~」
「えっと、ネコさんと同じようにリストバンドでお願いします。あの、エルフネコさんは魔弓を使う遠距離攻撃をするのですが、おすすめのエンチャントはありますか?」
ネコさんは近接攻撃のため、素早さと防御にしました。ただ、エルフネコさんの遠距離攻撃は近接攻撃より選択肢が多くてエルフネコさんも決めかねたので、ルゥちゃんにアドバイスをもらおうと昨日の夜に話し合いをしていたのです。
「そうですね~、エルフネコちゃんの実力はどれくらいなのかわかりますか~」
「えっと、前に一緒に買い物に来たミラさんが言うには、Bランクの冒険者に相当するそうです。5本の矢を同時に撃ってすべて命中しましたよ」
「なるほど~。それほどの命中率で器用さもあるのなら、素早さを2つにしてみてはどうでしょうか~」
「素早さですか?」
「はい~。5本同時に命中するほどの腕前なら器用さは上げなくてもいいでしょう~。攻撃力も中途半端に上げるよりも、部位を狙って撃つ方が効果的です~。防御力も後方なので無視です~。消去法になりましたが、対遠距離攻撃として、物理攻撃と魔法攻撃の回避のための素早さを上げるのです~。被弾しないの前提でリスキーですが、Bランクと言われるほどなら素早さに特化したほうが良いと思います~」
なるほど、肉を切らせて骨を断つではなくて、そもそも切らせないということですね。ゲームなら遠距離キャラだと攻撃力や器用さを上げますが、ここは現実なので部位を選ぶことでダメージが上がり、またエルフネコさんはそもそも5本の矢を同時に命中させるほどの器用さを持っています。なら、少しでもエルフネコさんが怪我を負わないためにも素早さを上げた方が良さそうですね。いわゆる、固定砲台ではなくて移動砲台というやつですか。
「エルフネコさんは素早さで良いですか?」
「にゃむっと」
エルフネコさんも同意をしてくれたので、素早さに決めましょう。
「それでは素早さ2つでお願いします」
「わかりました~。それでは、色はどれを選びますか~」
「にゃむ~。にゃむ~」
エルフネコさんはネコさんの青色リストバンド、そして私の髪の毛の三つ編みの青色リボン順番に指し示します。そういえば、ネコさんは私のリボンと同じ色を選びましたね。
「エルフネコちゃんもネコちゃんと同じで青色で良いのですか~」
「にゃむっと」
「うーん、それなら少し時間をもらってもいいですか~」
「どうしたんですか、ルゥちゃん?」
「青色のリストバンドで素早さのエンチャントをしているのが1つしかないのです~。材料はあるので、もう1つは1時間くらいで作れるのですが~」
「それなら、また明日に受け取りに来ますよ」
「すみませんが今日の午後からのお客様と一緒に1週間出かけることになるのです~」
「えっ、そうなのですか」
「はい~。ですから、時間があれば待っていてくれますか~」
「それなら大丈夫です。待っています。あっ、でも、そろそろお昼ですね。ルゥちゃんはお昼ご飯はどうしますか?」
「もう、そんな時間ですか~。 う~ん、時間的にきびしいのでお昼はぬきにします~」
「えっ、駄目ですよ。それなら、私たちが何か買ってきますから」
「そうですか~。でしたら冒険者ギルドの隣のパン屋さんで買ってきてもらってもいいですか~。あっ、できればエルフネコちゃんには残ってほしいのですが~。せっかくだから、サイズを計って作りたいので~」
「エルフネコさん、いいですか?」
「にゃむっと」
私の問いかけにエルフネコさんが肯いてくれました。
「では、エルフネコさんは残って下さい。ルゥちゃんはパンのリクエストはありますか?」
「今日のおすすめパンを2つでいいですよ~。なかったら、なんでもいいので2つ買ってきて下さい~」
「わかりました。エルフネコさんは何か食べたいパンはありますか?」
「にゃむっと、にゃむむ。にゃむ~」
エルフネコさんは身振り手振りでネコさんに伝えているようです。
「にゃふっと!!」
エルフネコさんにネコさんが頼もしく肯きました。エルフネコさんのパンはネコさんに尋ねると良いみたいですね。
「では、行ってきます」
「にゃふっと」
「いってらっしゃい~」
「にゃむっと」
私たちは、ルゥちゃんとエルフネコさんに見送られて出発しました。
▽▽▽
「さてと、無事にパンを購入できましたね」
「にゃふふ」
ルゥちゃんの要望通りに今日のおすすめパンを2つを購入できました。エルフネコさんのリクエストはジャムの塗られているパンが2つだったようです。私とネコさんはエルフネコさんと同じジャムのパンと、ハムが挟まれている惣菜パンを買いました。
「じゃあ、『妖精の針子』に戻りましょうか」
「にゃふっと」
ネコさんと手を繋いで、ルゥちゃんとエルフネコさんが待つ『妖精の針子』へと戻ります。
「すみません。掃除のクエストを受けていた冒険者のユウナさんですよね」
「えっ」
ふいに、声をかけられて振り返るとエプロンをつけた中年の男性がいました。
「突然すいません。俺はこの道の奥の食堂の店主です。ユウナさんは掃除が上手だって噂になっていて依頼を出そうと思っていたのですが、清掃局のいざこざがあって。ただ、ギルドを介さずに個人的に依頼を受けて貰えればと思って声をかけさせてもらったんです。あっ、先程噂になっていたと言いましたが、俺は『猫のしっぽ亭』の食堂で見かけたので顔は知っていたのです」
「えっと、あの、そうですか。でも、すみません。私は今掃除に関する依頼を受けることができないのです。あの、ギルドや個人に関しなくても」
ゴレットさんのことがあるので、今はお掃除クエストに関することに手を出すのは得策ではありませんね。ちなみに、今までに依頼を受けさせてもらったお店は『猫のしっぽ亭』も含めて現状を説明しています。あっ、ゴレットさんは商業ギルドに圧力をかけていないみたいですが、掃除関連の依頼は噂が元で発注されていないようです。
「そうですか…。では、せめて俺の店の汚れ具合だけでも今見てくれませんか?もちろん、掃除の方法を教えてくれとは言いません。ただ、ユウナさんから見て食堂として気になる汚れ個所やここだけは綺麗にしたほうが良いというアドバイスを貰いたいのです。俺がそういった箇所を気を付ければ、清潔な環境で調理することができますから。ユウナさんの現状的に報酬は受け取れることができないようなので、10食分の定食を無料で提供させてもらいます。どうか、どうか、お願いします」
あう、いきなり男性が土下座をしながらお願いをしてきました。えっと、どうすればいいのですか。こんな状況は日本ではありませんでしたよ。
「ネコさん、どうすればいいのでしょうか?」
「にゃふふ?」
えっと、ネコさんも困っているようです。
「あの、お時間は取らせません。せめて、一目でも店を確認して下さい~」
「わかりました。それではこの後に約束があるので時間は取れません。本当に一目見るだけになってもいいのでしたら、お受けします。ただ、定食の無料の件については、申し訳ありませんがお断りします。私自身、どうしたらいいのかわかっていませんので」
「そうですか。では、今後状況が改善されましたら、何らかの報酬をお渡しするということで。では、この道を奥にいったところに店がありますので、ついてきてください」
食堂の店主は、冒険者ギルドのあるメインストリートの建物の角を曲がって奥の方へと進みます。ですが、しばらく歩くと右へ左へと曲がって行きます。
「あの、お店は何処にあるのですか?」
「なに、もうすぐですよ」
「にゃふっと!!」
突如、ネコさんが叫びました。ネコさんは必死に繋いでいる私の手を引っ張ります。どうやら、ネコさんは何かおかしいと思っているようです。
「すみません。今回の件は無かったことでお願いします」
「何を突然?どうかされましたか?」
「いえ、時間がかかるようですので後日対応するということでお願いします。昼食の買い出しに来ている私たちの帰りを待っている人がいるので」
「いえ、すぐそこですよ」
「では、お店の名前を教えて下さい」
「なっ、名前ですか。えっと『麦の麺亭』ですが」
「そうですか…。ネコさん、走って!!」
私はネコさん抱きかかえてから後方転換、そしてネコさんを地面に置いて声をかけます。ネコさんも私の意図を理解しており、即座に駆け出します。
「おっと、待ちな!!嬢ちゃん!!」
「きゃ!!」
「にゃふ!!」
急に私たちが進もうとしていた道が爆ぜました。
「痛いっ」
道を見ると、手斧が地面に突き刺さっています。
「おいおい、せっかく来たのにつれないな~。嬢ちゃん、ゆっくりしていけよな~」
地面から視線を上げるとそこには、私が冒険者ギルドの登録を時に問題を起こしたザインがニヤニヤと笑みを浮かべていました。
お読み頂きありがとうございます。




