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ユウナとネコさんたちの異世界生活  作者: 藍
第1章 ユウナとネコさんの異世界生活
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ユウナとネコさんの出会い

H30.9.10 編集。ストーリー的には変化はありません。

「にゃふっと」


 ポムポム。


「うー」


「にゃふ、にゃふー」


 ポムポム、ポムポム。


「うーん」


「にゃふっと!」


 ポムポム。


 なんでしょう?何かが私のほっぺたを叩きます。やわらかくて気持ちいいですね。


「にゃふー!!にゃふー!!」


 ポムポム、ポムポム、ポムポム。


 あうー、痛くはないけど叩く力が強くなってきました。あれ?私は寝ていたのでしょうか? 眠気が残ってる頭を軽く振りながら、目を開けます。視界には見慣れた天井が…ではなく、青空に真っ白い雲が流れていました。


 …えっと…そうだ!!私は世界の歪みで怪我をして、治療の為に女神様の管理する世界に転移したはずです。えっと、体を調べますが怪我などは…うん、一切ありませんね。


「女神様が約束通り魔法によって完治してくれたのでしょうか?」


 しかし、ここは本当に異世界なのでしょうか?夢だったのでは?という疑問を持ったのですが、すぐに解決しました。鳥の声が聞こえたので振り向いた視線の先には、何と大小の太陽が2つ浮かんでいるのですから。…少なくとも地球では太陽は2つ存在しませんよね。


「夢じゃなかった…のですね」


「にゃふ!!にゃふ!!」


「え?」


 あっ、今更ながら、私の隣で猫がにゃふにゃふと言っていることに気づきました。いえ、声は聞こえていたのですが、頭がぼうっとしていたことと、異世界に来たこと気づいたために失念していたというのが本当です。えっと、先ほど私を起こしてくれたのは、にゃふにゃふと鳴いているこの猫ですね。


 うん?猫?


「あなたは猫ですか?」


 思わず英語の教科書に出てきそうな?質問をしてしまいました。なぜなら、この猫?はぬいぐるみや漫画のキャラクターにあるような、デフォルメされた人型の猫の姿だったからです。毛並は光沢のある銀色で、身長は60センチくらいでしょうか?本物の猫のようなスリムさはなく、マルマルっとした4頭身くらいの体型です。短い後ろ足で立っている様は人間と言うより、ペンギンをイメージさせます。そしてスコティッシュフォールドのように真ん丸な頭部とペチャっと頭に垂れている耳が大変可愛いです。


「にゃふ?」


 私の質問に対して、にゃふ?という疑問的な鳴き声が返ってきましたが、残念ながら意味はわかりません。女神様がくれるといった言語理解の能力は流石に動物には適用されないみたいです。ただ、右前脚、…人型だから右手ですね、それを頬につけて首をかしげる様は大変可愛いです。結局、猫なのか、どうかわかりません。この世界特有の動物なのでしょうか?とりあえず、猫(仮)…はさすがにどうかと思うので、えっと、そうですね、ネコさんとしておきましょう。そういえば、ネコさんとのやり取りに気を取られていたため忘れていましたが、目覚めたら女神様の友人がそばにいてくれているはずです。しかし、あたりを見渡しても草木などの植物があるだけで人の気配はありません。

 

「まだ友人は到着していないのでしょうか?」


「にゃふっと」


「あっ、すみません」


 ネコさんが私の手をポムポムと叩いてきます。先ほどから私に対して何か言いたげな―私にはわかりませんが―ネコさんを放置しておくのは失礼ですね。


「そういえばあなたは女性を見ませんでしたか?女神様の友人である女性の方と待ち合わせしているのですが」


 いるはずの女神様の友人がいないことに不安を感じ、言葉のわからないネコさんに思わず問いかけていました。


「にゃふっと」


 すると私の問いかけに対して縦に首を振ります。もしかして話せないけど、私の言葉は理解しているのでしょうか?


「見たのですか?その方がどこにいるのかわかりますか?」


「にゃふー」


 ネコさんは自分の顔に手を向けます。


「えっ?どういうことですか?」


「にゃふ」


 私の呼びかけに、ネコさんは再度自分の顔に手を向けました。えっと、女神様の目覚めたら友人がいるという言葉を信じると…ということは…!?


「もっ、もしかしてあなたが女神様の友人ですか?えっと、言葉は話せないのですよね。あっ、そうだ!!もし、あなたが女神様の友人だったら万歳をして下さい」


 まさかと思いつつもお願いします。すると…


「にゃふっと、にゃふっと」


 ネコさんは嬉しそうに両手を上げ下げして万歳をしたのです。


▽▽▽


「えっと、つまり、あなたが女神様の友人ですね」


「にゃふっと」


 重複する私の質問に対して、ネコさんはこれまた万歳をします。女神様の友人は人間やエルフといった種族の方だと思い込んでいました。まさか猫、もといネコさんのような動物?だとは欠片も想像していませんでした。でも、このネコさんが人間社会に興味を持っていて博識だとしても、私の言葉を理解していたとしても、ネコさんの言葉を私が理解できないのは問題なのではないでしょうか、女神様!?


「あの、あなたは女神様とお話ができるのですか?」


「にゃふっと」


 ネコさんは嬉しそうに頷きながら万歳をしてくれました。もしかしたら、女神様はネコさんたちの言葉がわかるので、【言語理解の才能】とやらを得た私も当然理解できるとうっかりしていたのでしょうか?…まさか…ですよね。疑念は晴れませんが、ネコさんが来てくれたのは女神様の善意によるものです。善意に対して不満を持つのはいけませんね。気を取り直しましょう。


「えっと、申し遅れました。私は一之瀬優奈いちのせゆうなと言います。よろしくお願いします」


「にゃふにゃふ」


 私が頭を下げて自己紹介するとネコさんもペコリと頭を下げてくれます。そういえば勝手に仮の名をネコさんとしましたが、女神様の友人とわかった今では失礼ですね。ネコさんの名前が知りたいのですがどうすれば…?


「えっと、あなたは文字の読み書きができますか?」


「にゃふふ…」


 ネコさんは申し訳なさそうに首を横に振ります。


「ごめんなさい。気にしないでくださいね」


 そういえば、私も現状ではこの世界の文字の読み書きができるのかわかっていませんね。それ以前に、本当に【言語理解の才能】を得たのかも、現時点では不明です。今わかっているのは、私の問いかけにネコさんがリアクションを取ってくれているということだけですから。うーん、何か方法は…あっ、そうです!!昔テレビで見たこの手段なら名前がわかります。


「あの、あなたの名前が知りたいのですが、私が50音…ってわかるのでしょうか?あ・い・う・え・お・と言う風に順番に言葉を言っていくので、名前の初めの文字がでてきたら右手を上げ下さい。また、あ・から始めるので名前の2番目の文字がでたら右手を上げて下さい。これを終わりまで繰り返しますので最後の文字になったら万歳をして下さい」


 私なら『あ』から始まり『ゆ』で右手を上げる。続いて『あ』に戻り『う』で右手を上げる。最後に『な』まできたら万歳をして『ゆうな』の完成です。時間はかかりますがコミュニケーションを取ることができます。問題は日本語的に発音不可能な名前だった場合ですが…。


 あれ?ネコさんを見ると悲しそうな表情で首を横に振っています。


「えっと、私の言ったことが伝わらなかったのでしょうか?」


 これにも首を横に振りました。


「伝わっているのですね。だけど、この方法では名前がわからないのですか?」


 大きく首を縦に振ります。どういうことでしょうか?


「私の言葉では発音できないのですか?」


「にゃふふ。にゃふーにゃ」


 ネコさんは鳴きながら身振り手振りで説明してくれているみたいですが、やっぱりわかりません。お互い困り顔で見つめ合います。 


「ごめんなさい。私ではあなたの名前がわからない「にゃふ!!」っえ?」


 ネコさんが急に鋭く鳴きました。


「どうしました?怒っているのですか?私が名前がわからない「にゃふ!!」」


 また私が、名前がわからないと言うと、鳴きました。しかも今度は、鳴くと同時に右手を上げて、すぐに万歳をしました。何か意味があるのでしょうか?えっと、私がさっき言った言葉は?…「名前がわからない」…ですよね。


「名前がわからない「にゃふ!!」」


 やっぱり「名前がわからない」と言うと「にゃふ!!」と鳴くと同時に右手を上げ、万歳をします。私の言葉に反応しているのは明らかですよね。だったら、検証していけば答えが見つかるのかもしれません。とりあえずはゆっくりと言葉を発してみましょうか?


「えっと、な・ま・え・が・わ・か・ら・な・「にゃふ」」


 私が「名前がわからない」という言葉を間をおいて一音毎に発していきました。すると、わ・か・ら・な・の時点で鳴きながら右手を上げました。さきほどまでは、わからないで「にゃふ」と鳴くと同時に右手、万歳をしたはずですが今は私の次の言葉を待っているようです。「名前がわからない」では右手を上げて万歳をしました。でも今は、わ・か・ら・な・のタイミングで鳴きながら右手を上げただけ…万歳は何故かしませんでした。それによくよく考えると名前の【な】とわからないの【な】は同じ言葉です。【な】という音が重要なら名前の【な】と発した瞬間に右手を上げるはずですよね。何回も繰り返しているのにネコさんはそれをしなかった【名前】という言葉と【ない】という言葉の違いは…あっ!!


「もしかしてあなたには名前が無いのですか?」


「にゃふっと!!にゃふっと!!」


 私の質問に、ネコさんは元気よく万歳をして飛び跳ねました。そうです。ネコさんは初めから【ない】という【単語】に反応していたのです。


「すごいです!!あなたは頭がいいのですね」


 さっき言った私のルールで名前が無いということを教えてくれたのです。ふと、【ない】という名前=【ナイ】かと思いましたが、それだったら50音のやりとりでわかるので違いますね。ネコさんの首元を撫でてあげると気持ちよさそうにゴロゴロとのどを鳴らしています。やっぱり猫なのでしょうか?しかし、名前が無いとコミュニケーションに困ります。かといって種族的に名付けるという概念が無かったのか、ただ単に必要が無かったのかわかりませんが、今まで名前を持っていなかった彼女に対して、勝手に私が名前を付けるのも気が引けます。えっと、そうです。


「あの、一緒に暮らしていくうえで名前は必要ですから、あなたに名前をつけてもいいですか?もちろん、あなたの本名というのではなく、愛称みたいなものです」


 気が引けますが、必要な物は必要です。妥協案として愛称みたいなものとしておきましょう。


「にゃふっと、にゃふっと」


 ネコさんが嬉しそうに万歳しながら私の周りをグルグルと走ります。喜んでくれているみたいです。これはしっかりと名前を考えなければなりませんね。外見が猫みたいだから、【タマ】…ではさすがにまずいですね。うーん、毛並が銀色だから【銀】…女の子だから【銀子】?愛称と言うより名前みたいです。にゃふにゃふ鳴くから【にゃふちゃん】。個人的には可愛いと思いますが、それって犬をワンちゃんと呼ぶのと同じですね。これからお世話になるネコさんにつけて良いのでしょうか。どうやら私にはネーミングセンスが無いみたいです。いっそ、ネコさんと話し合いで決めましょうか。時間はかかるかもしれませんが、妥協するより良いはずです。


「ネコさん」


 ネコさんはまだグルグルと走っていたので呼びかけます。


「にゃふ!にゃふにゃふーん」


 えっ?私の呼びかけに、ネコさんは満面の笑みで飛び跳ねながら万歳をします。


「あっ!?今のはネコさんというのはあなたの名前ではないですよ!!私が勝手につけいてた呼び方というか何というか。とっ、とにかく、今から2人で考えましょう」


 私の言葉に対してネコさんは「にゃふふ」と言いながら首を横に振ります。


「気に入ったのですか、ネコさんって。ですが、もっといい名前を考えましょう。ねっ」


 適当に考えた名前ではかわいそうです。そもそも、名前というより、【ネコ】という種族名?に【さん】をを付けただけのものですから。


「にゃふ!にゃふ!にゃふ!」


 どうにか考えを変えてもらおうとお願いするも、ネコさんは駄々をこねる子供みたいに地面に横になり、鳴きながら手足をじたばたします。 


「落ち着てください。えっと、【にゃふちゃん】はどうですか?」


 苦し紛れに先ほど考えた名前をぶつけてみます。ネコさんは一瞬止まったのですが…やはりじたばたし始めました。気に入らなかったようです。


「あうー、わかりましたから、やめて下さい。えっと、あなたは今日からネコさんですよ」


 あー、せっかく私のことを助けに来てくれた女神様の友人の名前が、私の不注意によりネコさんになってしまったのです。これからどうなるのでしょうか?

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