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ユウナとネコさんたちの異世界生活  作者: 藍
第3章 ユウナとエルフネコさんの採取クエスト
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第5話 ユウナとエルフネコさんの採取クエスト(前編)

今回は文字数が多かったので前編後編になります。あと、サブタイトルに第○話という表記を付けるようにします。過去投稿文も今後修正します。

 森の奥から現れた巨体の魔物を見て、ラルフさんがゴブリンキングだと叫びます。


「ちっ、ミラ。ユウナとネコさんを連れて入り口へ逃げるんだ!!」


「わかったよ」


「にゃふー!!」


 ミラさんが私の手を取って引き返そうとしますが、ネコさんが威嚇の声をまた上げました。


「なっ、囲まれている。ラルフ、一度下がって。ユウナちゃんとネコさんはボクたちの間に入って」


 ミラさんの言葉にラルフさんが私たちの場所まで下がります。ゴブリンたちは円状になって私たちを取り囲んでいる形です。


「おかしいぞ。いくら話をしていたとはいえ、こんなに囲まれるまで気づかないなんて。それにゴブリンキングがいるにしては数が少なすぎる。とりあえず、僕が入り口側のゴブリンを倒して囲みを崩す。そこから入り口まで撤退だ」


 指示を出し終わるや否や、ラルフさんはゴブリンに向かって一気に駆けていきます。ゴブリンの装備は様々で、剣や棍棒から遠距離武器の弓矢までありますが、ラルフさんは1番に弓矢を持っているゴブリンを切り捨てました。


「ユウナちゃん、ネコちゃん、走って!!」


 ラルフさんに続くように私たちも走り、殿しんがりをミラさんが務めます。


 ラルフさんは3匹のゴブリンを相手にしていますが、傷を負うことなく反撃をしているようです。


「【スラッシュ】」


 ラルフさんのスキルによる気合一閃。横なぎの一撃で3匹のゴブリンを同時に切り倒して、囲みを崩すことに成功しました。


「今だ。突破できるぞ、急ぐんだ!!」


▽▽▽


「ここまでくれば大丈夫だな。ネコさん、念のために気配を探ってもらえるかな?」


 私たちはゴブリンキングと遭遇した場所から走り続け、ラルフさんの指示で止まります。私たちが立ち止まったのは直径が20メートル程木々がない開けた広場のような場所です。遮蔽物はありませんが、視界は開けており敵が攻めてきたらすぐにわかります。


「にゃふー、にゃふー。にゃふっと」


 ネコさんが周囲を見渡して、両腕で丸を作ります。


「どうやら、大丈夫のようだな」


「はぁ、はぁ、はぁ。あれが…ゴブリンキングですか?」


 ラルフさんに追いつくように全速力で走ったのですが、息こそ切れていますがまだ走れると思います。女神様が授けてくれた『消費体力減少の加護(小)』のおかげですね。


「そうだよ、ユウナ。あの魔物がオーク並みの巨体を持ったゴブリンの突然変異種であるゴブリンキングだ。でも、おかしいことだらけだな」


 ラルフさんが首を傾げて続けます。


「ゴブリンキングとは何回か戦っているが、常に100匹近くのゴブリンをそばに従えていた。でも、今回は20匹程度だった。それに、囲まれるまで気配を感じないなんておかしすぎる」


「ネコさん、いつもより気配を感じることができなかったのですか?」


「にゃふー?にゃふっと」


 ネコさんも首を傾げた後に頷きます。


「あの、気配を隠すようなスキルとか魔法ってありますか?」


「確かに【ハイド】という気配を隠すスキルはあるが、あくまでスキル使用者限定の効果だ。僕たちを囲ったゴブリン全員が使えたとは到底思えない。なら、考えられるのは【ブラックミスト】という中級の水魔法だが、これは味方全員の気配をおぼろげにする程度の効果しかないんだ。ゴブリンも魔法の才能を持つことがあることは確認されているが、ゴブリン程度の魔法威力でネコさんの【気配察知の才能】から逃れられるほどの効果を発揮できるとは考えられないな」


「あの、ゴブリンにも個体差とかは無いのですか?魔法威力に特化したゴブリンがいるとか?」


「うーん、そういった情報は無かったと思う。魔法を使うゴブリン自体がレアだからね。でも実際に気配を感じられないのだから、特殊なゴブリンが存在していると思う方が建設的かな」


「とにかく、予想外の事態が起こっているのだから街に戻りましょう。気配を感じられない敵が存在する以上、遮蔽物の多い森にいる限り不利な状況に置かれていることは確実なんだから」


「そうだな。ユウナにネコさん、これから入り口まで走るが体力は大丈夫かい?」


「にゃふっと!!」


「はい、今休憩できたので大丈夫です」


 私は呼吸が整ってきていることを確認した後に肯定します。


「じゃあ、しゅっぱ…てーやっ!!」


 ラルフさんが私の正面に移動し声を上げて、剣を振りました。


 ガキンッ!!


 鈍い金属音がした後に、ラルフさんの足元に錆びたナイフが落ちます。


「なっ、馬鹿な。ナイフが目視されるまで気づけなかっただとっ」


 どうやら投擲されたナイフをラルフさんが剣で叩き落としたようですが、攻撃の気配を感じられなかったようです。


「ラルフっ!この状況は変だよ。逃げるのはやめて、敵を撃退した方が良い」


「わかってる!!だが、ユウナとネコさんがいる以上、その選択肢は取れない。逃げの一手しかない!!」


「それでも、気配が無い追手相手に背を向けて2人を守り切れるって言えるの!!」


「っ!!だが、レディたちを危険にさらしたまま、戦闘をすることなど僕にはできない!!」


「だから、その考えが…はっ!!」


 キンッ!キンッ!


 今後はミラさんが両手の棍棒を振るった後、矢が2本落ちました。この矢も、先程のナイフと同じで気配はありませんでした。


「とにかく、遠距離攻撃の気配が無いんだから、背を向けて逃げることはできないでしょ!!ラルフッ!!紳士だったらどんな状況でもレディを守るって言えないの!!だったら、紳士なんて言わないでよ!!」


「…わかった。僕が間違っていたようだ。ユウナ、ネコさん、すまない。ここでゴブリンキングの群れを迎え撃つ。2人は怖いだろうが、僕たちを信じてほしい」


 ラルフさんは周囲を警戒しながら、私たちに目配せをします。


「わかりました。あのっ、私も魔法で援護します」


「ユウナ、無理はしないでくれ。僕とミラがいればゴブリンキングの群れなど殲滅可能だから」


「…はい」


 戦力に慣れない自分が悔しいです。気配の無い相手ではどこに魔法を放てば良いのかわかりません。それに何よりも、先程のツノウサギの血のことが思い出されて魔法に集中することができそうにないのです。私だけでなく、ネコさんにラルフさんにミラさんが命の危険に晒されているのに、魔物を傷つけ命を奪うことに忌避感を感じています。先ほど逃げる時に、私たちの為にラルフさんがゴブリンを屠るところを見ているのに、私自身は手を汚したくないと未だに思っているとは、なんて傲慢な考えなのでしょうか…。


「ミラ、隙があれば最強装備に変換するんだ。逃げることを止めたのだから問題ないな?」


「わかったよ。でも、気配の無い飛び道具の使えるゴブリンが隠れているんだから、正直難しいよ」


 最強装備?確か、ミラさんは指輪に納めていると言っていましたね。


「来るぞっ!!」


 周囲を見渡すと先ほどの再現のように木の陰からゴブリンが現れます。どうやらすでに、私たちを囲み終わっていたようです。少しずつ囲みを狭めながら、四方から1匹ずつゴブリンが飛び出てきます。


「ミラ、正面の敵を一撃で仕留めるぞ。後は、僕は剣を持ったゴブリン、ミラは手斧を持ったゴブリンの対処だ」


「わかったよ」


 2人はそれぞれの正面に来たゴブリンに駆けて行き言葉通り一撃で倒します。そして、私たちを守るために元の位置に即戻ります。ですが…


「弓矢です!!」


「にゃふっと!!」


 私とネコさんが周囲を見渡しているとゴブリンを仕留めた2人に向けて、それぞれの正面から矢が飛んできていることに気づきました。


「煩わしい!!」


「邪魔だよ!!」


 ラルフさんは剣で、ミラさんは両手の棍棒で全ての矢を叩き落としていきます。私たちを挟み込むように矢が放たれているので、2人がかわすと後ろにいる私たちに当たるので回避できないのでしょう。


「矢が全然途切れない。何匹いるんだっ」


「それより、ユウナちゃんたちにゴブリンが!!」


 仲間が瞬殺されたのを見て、足を止めていた2匹のゴブリンが、矢の弾幕によってラルフさんたちが足止めにあっていることで、あと10歩くらいの距離まで近づいていました。私とネコさんを標的にしているようですが、ラルフさんたちを警戒しているため足の進みが遅いようです。でも、ラルフさんたちは矢の対処から離れることができず、動けるのは私たちだけになっています。


「…ネコさんは剣を持ったゴブリンを対処して下さい。私は手斧のゴブリンを狙います」


「にゃふ!?…にゃふっと!!」


 ネコさんは私の言葉にびっくりしたようですが、少し間をあけ力強く頷いてくれました。


「にゃふーっ」


 ネコさんは両手に魔爪を伸ばし、弾丸のようなスピードで剣のゴブリンに飛び掛かりました。左手の爪による振り下ろしの攻撃を放ちますが、ゴブリンは反応しており、剣を上に持ち上げ爪を受けとめようとします。


「にゃふふ」


「ぎぃ!?」


 何と、ネコさんは左手の魔爪を消し、わざと空振りにしました。ゴブリンは来るであろうネコさんの一撃が来なかったことに驚いています。その隙を見逃すことなくネコさんは着地と同時に、剣を上段に構えている為がら空きになったゴブリンの胸元に魔爪による右ストレートを放ちます。


「ぎぃーー!!」


 魔爪はゴブリンの体を貫き、断末魔を上げて絶命したようです。







「あれは僕がツノウサギを倒した時の戦い方の応用だな」


 ラルフさんは矢を撃ち落としながら、ネコさんを見ていたようで感想をつぶやきます。


 ネコさんは無事にゴブリンを倒したので、次は私の番です。私はというと、ネコさんの様子を窺いながら魔法の威力を上げるべく集中していました。


 大丈夫。生き残る為だ。怖くない。死にたくない。私はみんなを守りたいんだ。


 魔物の命を奪うことへの忌避感を、ポジティブな考えで塗りつぶそうと、自分に言い聞かせます。大丈夫!!


「【ファイア】」


 手斧のゴブリンに杖の先端を向けて、火魔法を唱えます。火の球は魔法威力を上げるべく集中していたので人の頭ほどの大きさになっています。勢いよく飛んでいく火の玉を見て、これなら大丈夫だと気を緩めると、不意に炎に包まれ断末魔を上げながら苦しみもがくゴブリンの姿が頭に浮かびました。


「あっ!!」


 【ファイア】はゴブリンに当たる直前に霧散します。


 なんで?覚悟を決めて魔法を放ったのに。私はやっぱり魔物を倒すことができないのですか?みんなが命がけで戦っているのに、私はただの足手まといなのですか?


「ユウナ、避けろっ」


「ユウナちゃん!!」


 【ファイア】が消えたことに茫然としていた私に、怒り狂った手斧のゴブリンが襲い掛かってきました。どうやら、火の球は霧散したとはいえ完全に消えてなくなったわけではなく、ゴブリンに火傷を負わしていたようです。


「あっ」


 気づいた時には遅く、手斧が私の首筋に向けて振るわれています。そんな、私はここで死ぬのですか…。


▽▽▽

 

「にゃむっと!!」


 ガキンッ!!ざしゅ!!ざしゅ!!


「えっ?ネコさんですか?」


 ネコさん?の鳴き声の後に、光が飛んできてゴブリンの手斧を撃ち落とし、ゴブリンを貫き倒しました。


「にゃふふ」


 ネコさんを振り返ると、首を振っています。


「ユウナちゃん、大丈夫?」


「はい、大丈夫です。光が飛んできて助けてくれました」


「今のは、魔法の矢だな。放たれた方向を探っても気配が全くない。それと矢を放っていたゴブリンも倒してくれたようだから、敵ではなさそうだが…」


 そういえば、今はゴブリンから矢が放たれていません。


「あと、ネコさんのような鳴き声が聞こえたような気がしましたが、気のせいでしょうか?」


「にゃふっと。にゃふふ、にゃふー、にゃふ」


 ネコさんが魔法の矢が飛んできた方向を指し示し、必死ににゃふにゃふと言います。


「ネコちゃんは何て言っているの?」


「ネコさんにはすまないが、今はゴブリンの殲滅を優先しよう。あと、先程は守れなくてすまなかった、ユウナ。今からは魔法を使わなくていいように必ず守るから」


「…いえ、大丈夫ですから、気にしないで下さい。それと…私も戦います。さっき私は人生で初めて殺されかけました。本当なら私がゴブリンを攻撃することができていれば、命の危険はなかったのに。…私は殺されることはないんだ、ネコさんたちがいれば大丈夫なんだ、という甘い考えを持っていたのかもしれません」


 自分だけは大丈夫という言葉があります。異世界転移を経験して、私は物語の主人公のように特別だから大丈夫なんだという錯覚を持っていたのかもしれません。あれだけ命の危険が無い仕事を探していながら、魔法がそこそこ使えるようになった途端に実戦訓練をお願いするなんて、自分なら大丈夫だと心の底で思っていたのでしょう。 


「でも、今は甘い考えは捨てました。敵を倒さなければ、自分が殺されるということを本当に理解しました。自分が死ねば他の人に迷惑がかかるともわかりました。だから…私も戦います!!」


 私の言葉にラルフさんとミラさんは真剣な面持ちで私を見ます。


「そうか…ユウナの決意はわかった。だが、魔物に近づくのは危険だから、この場所から魔法を放って援護してくれるかい」


「はいっ」


「ラルフ、ボクは装備を変えるから時間を稼いで。短時間で決着をつけよう」


「わかった。ネコさんとユウナはミラのそばにいて守ってあげてくれ。僕はゴブリンキングに切り込むから」


「はい」


 心の整理はできました。今なら絶対に魔法を使えます。魔物を殺しても、ちゃんと自分がしたこだとを受けとめることができます。


「行きます。【ウインド】!!」


 私の放った風魔法はミラさんに襲いかかろうとしていたゴブリンを巻き込み、怪我を負わせます。ゴブリンは出血し、悲鳴を上げますが心は揺るぎません。


「にゃふっと!!」


 怪我を負ったゴブリンをネコさんが魔爪で薙ぎ払い仕留めます。ルゥちゃんに教えてもらった連携が成功した形です。ネコさんはそのまま、私たちに近寄ろうとしている別のゴブリンに挑んでいきました。でも、ネコさんとゴブリンとの距離が近すぎて魔法で援護することはできませんね。


 ならばとラルフさんを見ると、早くもゴブリンキングに接近し切りかかっています。しかし、手下のゴブリンが邪魔をして1対1での戦闘ができていないようです。私が今できることは…


「ラルフさん、援護します。【ファイア】」


 ラルフさんを中心に囲もうとするゴブリンのさらに外側の地面に向けて火魔法を放ちました。地面に着弾した火の玉は周囲に火の粉をまき散らし、ゴブリンに降りかかります。ゴブリンが突然の火の粉に慌てふためいるところを、ラルフさんが見逃すことはなく首をはねていきます。


「助かったよ、ユウナ」


 ルゥちゃんから教えてもらった、攻撃魔法による『行動の阻害』も成功しました。手下のゴブリンが減ったことでラルフさんは、ゴブリンキングとの戦闘に集中できそうです。


「ふにゃ!!」


 ドンっと足に何かが当たったので視線を下に向けると、ネコさんが転がっていました。


「大丈夫ですか!?」


「にゃふっと」


 土に汚れていますが、怪我はありません。どうやら、ゴブリンの攻撃を避けて私の足元にまで逃げてきたようです。私たちの周りにはゴブリンが5匹ほど取り囲んでいます。広範囲かつ威力の高い攻撃魔法がない私には不利な状況です。どうにか、ネコさんと連携して倒さないと。


「お待たせ、ユウナちゃん、ネコちゃん」


 振り返ると装備の交換が完了したミラさんが立っていました。


▽▽▽


ミラさんの装備はラルフさんと対照的で漆黒です。防具はフルプレートの鎧ではなく、額当て、胸当て、小手、具足で要所を守っています。それぞれ漆黒に金色の装飾が施されているセットの防具なのでしょう。そして一番目を引くのは、ミラさんが持っている武器です。それは2対の大斧です。ゲームなどではグレートアックスと呼ばれている、柄の左右に円を描くように付いた両刃が特徴の斧です。その2対の斧は柄の端で光の鎖によって繋がっています。モデルのような細身のミラさんが2本の大斧を持っているのにもかかわらず違和感はなく、その美貌と装備の美しさから戦女神のような印象を与えられます。


「装備の変換完了。さくっと終わらせるからちょっと待っててね」


 ミラさんは装備の重さを感じさせることなく、買い物にでも行くような気軽さでゴブリンへと歩を進めていきました。


「はっ!!」


 ミラさんが右手の大斧をゴブリンに向かって投擲します。大斧は外れることなくゴブリンを両断しました。そして、大斧に繋がっている光の鎖を引っ張ることで手元に戻ってきます。光の鎖はどうやら伸縮自在の様で、投擲した時は伸びており、手元に戻っている今は邪魔にならない程度の長さに戻っています。


「久しぶりだけど、問題ないみたいだね。周りのゴブリンを片付けたら、ラルフの援護に行くから2人ともついてきてね」


「はい」


 ミラさんが大斧を振るい、投擲し、振り回すことで見る見る間にゴブリンは殲滅されていき、5分とかからずゴブリンキングの下に到着しました。ゴブリンキングの周辺にいた手下はラルフさんによって全て倒されており、残りはゴブリンキング1匹のみのようです。


「相変わらずの攻撃力だな、ミラ」


「まだ、実力の半分もだしてないよ。それよりラルフ、ゴブリンキング相手に時間をかけ過ぎじゃないの」


「面目ないな。だが、こいつは自己再生を持っているみたいで僕では決定打に欠けるんだ」


「だったらボクの出番だね。ラルフはユウナちゃんたちを守っていてよ」


「わかった。任せる」


 ミラさんがラルフさんと交代して、ゴブリンキングと対峙しました。


「ユウナちゃんを休ませたいから、手っ取り早くいくよ」


 ミラさんが両手の大斧でゴブリンキングへと切りかかります。斬撃は大きく傷痕を残しますが、傷痕から白い煙が出てきたかと思うと瞬く間に再生しました。


「へぇ、突然変異種だけあって凄い回復力だね」


 ミラさんが攻撃の手を止めると、ゴブリンキングが大剣を両手持ちにして振り下ろします。


 キーンッ。

 

 大剣の攻撃はクロスさせた大斧で難なく受け止められ、甲高い金属音が森に鳴り響きました。


「でも、攻撃力はいまいちかな。キングなんて言われているんだからこれくらいやってよね。【唐竹割り】」


 ミラさんは屈んだかと思うとゴブリンキングを軽々と超える大ジャンプをみせます。そしてスキルによる青い光に包まれた両斧を振りかざし、ゴブリンキングの脳天へと勢いよく振り下ろします。ミラさんの攻撃に何とか反応できたのか、大剣での防御で鈍い金属音が響きますが…。


「無駄だよ!!」


 分厚い大剣がミラさんの一撃により両断され、勢いは止まることなく腰元まで到達しました。ミラさんが大斧を引き抜くと、ゴブリンキングの死体が魔石に変わります。


「流石、ミラだね。僕だとこうはいかないよ」


「すっ、凄いです。ミラさんって力が強いのですか?」


 ミラさんの圧倒的な攻撃力を前に興奮してしまい、子供みたいな質問の言葉しか出てきません。


「…ちょっとした加護を持っているだけだよ」


 私の質問に対してミラさんは微妙な表情を浮かべながら答えてくれました。私は何かいけない質問をしてしまったのでしょうか?


「さてと、片付いたし今日はこれで帰ろうか」


「そうだな、実戦訓練を飛ばして実戦を経験してしまったからな。流石に訓練や薬草どころではないな。ユウナとネコさんは怪我はないかい?」


「えっと私は大丈夫です。ネコさんはどうですか?」


「にゃふっと」


「ネコさんも大丈夫のようですね」


「それは良かった。…ユウナ、今日はいろいろあったが、明日からはどうする?もし、戦闘が心の負担になるようなら違う仕事を探すのもいいと思うのだが…」


「えっと、それについては「にゃふ!!!」きゃっ」


 突然ネコさんが飛び掛かってきて、私を突き飛ばしました。

お読み頂きありがとうございました。

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