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ユウナとネコさんたちの異世界生活  作者: 藍
第3章 ユウナとエルフネコさんの採取クエスト
17/44

ユウナとネコさんの戦闘訓練

お読み頂きありがとうございます。日曜に投稿予定でしたが、仕事が入ってしまい遅れてしまいました。第3章はあと1話で完結になります。

『ユウナにネコさん、久しぶりだな。前回、君たちの下へ馳せ参じようとしたが同僚の女神たちに封印されて監禁状態だったのだ。私がいなくなると、ただでさえ綱渡りのような勤務体制が地獄絵図へと変貌してしまうのを恐れての犯行だな。まぁ、彼女たちの恐怖もわからないではないが、ユウナを助けることは女神として重要な職務であるから我慢してほしかったがな。とりあえず、今は管理者は辞めないという意思を見せて監禁状態から解放されている。が、あくまで演技だ。私はユウナを助けることが神から授かった尊き天命だと考えている』


 女神様、冷静になって下さい!!本当に何が貴女をそうさせているのですか!?


『さて、今君の現状を把握したところだ。いろいろ不便な思いをさせていたようだが安心してほしい。明日からの戦闘訓練に備えて、まずは【消費体力減少の加護(小)】を授けよう。この加護があれば体力に不安のあるユウナでも、体力の消費を抑えることができて、新人の冒険者と同じ程度の行動をとれるだろう。本当なら【消費体力減少の加護(大)】を授けたがったが、女神としての干渉できる限度を超えてしまうので不可能だった。不甲斐無い私を許してくれ』


 そんな、本当に女神様には感謝していますよ。


『あと、ラルフとかいう若干私とキャラが被っている小僧が、ユウナの手の甲に口づけをしようとした時にネコさんが守ってくれたことに対して、私が感動しているとネコさんに伝えておいてくれ。ファインプレーだったぞ、ネコさん』


 あー、確かにラルフさんと女神様って種類は違いますが方向性は似ているような気がしないでもないですね。


『それで…誰だ?こんな時間に私の部屋をノックするのは…。まぁ、無視だ。今は大事なユウナへのメッセージを作成している最中だ。仕事にしか生きがいを見いだせない女神いきおくれの用事など大したことはない。さて、気を取り直し…えっ?なぜ私の結界による施錠が解錠されるのだ!?誰だ!!って、女神長!?どうして?えっ、いえ、そんな、いっ行き遅れなんて言っていません。なっなんですか!その荒縄は?違います!!私は心から女神としての職責を全うすべく、管理者を辞めることなんて考えて………いやー!!』


 えーと、女神様、新たな加護を与えて頂いてありがとうございます。ネコさんには、私を守ってくれていることを女神様が感謝しているよ、と伝えておきますね。えーと、えーと、あっ、女神長様とは仲良くして下さいよー。


 …以上が女神様から貰ったメールを読んだ時の回想です。


▽▽▽


「どうしたの、ユウナちゃん?苦しそうな顔をして。体調が悪いのなら、今日はキャンセルにしよか?」


「いえ、大丈夫です。ちょっと、思い出したことがあって」


 冒険者ギルドから出発して、東の門で身分確認の順番待ちをしていた時に女神様のメールを思い出していたら、私は苦しそうな表情を浮かべていたようです。


「そう?体調が悪くなったら、遠慮せずに教えてちょうだい。体調不良を他のメンバーに伝えることは、冒険者として大事な事だからね」


「はい、わかりました。でも、本当に大丈夫ですから。ミラさん、心配してくれてありがとうございます」


「ユウナが問題ないようだったら、そろそろ街から出発しよう」


「はい」


「そうだね」


「にゃふっと」


 私たちの身分確認が終わったので東の門をくぐり、街道へと出ました。ラルフさんをリーダーとして、私とネコさんの戦闘訓練の開始です。


「このまま街道を30分くらい歩くと、東の森の端付近に到着する。そこからさらに30分くらい歩くと東の森の入り口兼休憩所があるから、そこで一度休憩をしながら準備を整えよう」


「あの、なんで東の森の端が入り口じゃなくて、そこから30分くらい歩いた場所なのですか?」


「それはね、主要な街から伸びる街道には、成人男性が歩いて1時間くらいの距離ごとに魔物除けの聖なる魔石を置いて休憩所や目印を設置するようになっているんだ。旅人が安全に休憩できるための配慮と、目印を目安にどれくらいの時間や距離を歩いたのかわかるようになっているんだ」


「そういえば、私とネコさんが来た道にも、石の台座に光る石が置かれていました」


 ネコさんに綺麗な石だね、と言ったら、にゃふにゃふにゃふ、と話していたのは私に聖なる魔石だと説明をしてくれていたのだと、今更ながらわかりました。あの時は、ネコさんも綺麗だと同意してくれているのだと思い込んでいました。


「ユウナちゃんが来た南の街道は見通しが良いから、ほとんど目印しか置かれていないんだ。休憩所を設置するには、それなりの大きさや数の聖なる魔石が必要だから重要なポイントや街から6時間おきぐらいの地点に設置されるのが普通だよ」


「なるほど。だから、街から東の森への入り口という重要なポイントだから、カーヤの街へあと1時間という場所に設置されているのですね」


「そういうことだよ、ユウナ。東の森は広いから、奥に進むには十分な準備が必要なのさ。僕たちみたいに道具や食料、装備品の持ち運びを気にしなくて良い冒険者は少ない。だから、移動での疲れ癒すために休憩を取ったり、装備の交換をしたりするための拠点として休憩所が設置されている場所を入り口にしているんだ」


「そうゆうこと。とりあえず、ラルフを先頭にネコちゃん、ユウナちゃん、ボクの順番に並んで歩いて行こうか。街道でも魔物と遭遇することはあるから、ユウナちゃんとネコちゃんも警戒してね。今後の練習でもあるからね」


「はい、わかりました」


「にゃふっと!!」


 異世界転移後にカーヤの街へと移動していた時は、ただただビクビクしながら自転車を進めました。でも、今はラルフさんにミラさん、そしていつも一緒にいるネコさんがいるので安心感があります。でも、慢心はしてはいけません。安心感から注意散漫にならないように自分を律します。


「ユウナ、こういったパーティーで行動する時は役割分担が重要なんだ。例えば、今みたいな開けた場所での警戒についてなら、先頭の僕が前方を警戒する。2番手のネコさんが左右前方、3番手のユウナが左右後方、最後尾のミラが後方と言った具合だ。もちろん、ネコさんが左側の前後方、ユウナが右側の前後方でも良い。もちろん、1歩進むごとに首や体を左右に振る必要は無くて、移動に負担が無い程度で役割の方向を警戒するんだ。とにかく、パーティーで全方位に注意を向けながら移動することだよ。」


「…役割分担が重要」


 ラルフさんの言葉を復唱します。


「にゃふっと。にゃふ、にゃふーとー、にゃふ」


 ネコさんが自分と私を指し示した後に、くるくる回ります。


「えっと、ネコさんと私の2人だとネコさんが警戒するのですか?」


「にゃふっと、にゃふっと」


 おー、ネコさんが久しぶりに万歳します。私が思った通りに、『危険察知の才能(動物)』を持っているネコさんが全方位の警戒を引き受けてくれると示すためにくるくる回っていたようです。


「ネコさんの考えは正解だよ。クエストでは人数が少ないと個人負担が増えてくる。だが、その負担を個人均等に分担しなくても、才能の有無や得手不得手で調整すれば良いんだ。魔物の警戒については、ネコさんの才能を信じて警戒を任せて、ユウナは魔法による迎撃を担当するという方法が一番効果的なのさ」


 ネコさんの提案に、ラルフさんがお墨付きをくれました。流石、ネコさんです。できる女は警戒方法さえも、直ちに理解するのですね。


「ネコさん、凄いです」


「にゃふっと、にゃふー!!」


 私がネコさんを撫でると喜んだ後に、早速周囲の警戒に入りました。


「警戒について理解できたようだから、東の森に向けて進んでいこう。もし、魔物を見つけても奇襲を受ける以外は僕に報告をして判断を仰ぐように」


 3人がラルフさんに頷き、それぞれの役割分担を守りながら進んでいきました。


▽▽▽


「やっぱり、街の近くだと魔物は出てこないのですね」


「うーん、こればっかりは仕方ないよ。普段なら出てこられても困るし、喜ぶべきことだからね」


 私たち一行は魔物と出会うことなく、予定通り1時間ほどで東の森の入り口休憩所に到着しました。女神様がくれた加護によるものか、比較的近距離だった為なのか体力的には問題ありません。休憩所の小屋に入りましたが、私たち以外には人はいませんね。


「とりあえず、準備をしよう。ダンジョンやこういった魔物の出るエリアに入る時には入念な準備か大切だ。今回はミラと僕は念のために回復薬を持ってきているが、こういうアイテムをバッグの取り出しやすい位置に置くなどちょっとしたことが戦闘を有利に進めたりするんだ。まぁ、今日は森の手前で弱い魔物と戦うくらいだから、とりあえず、休憩をしよう」


 ゲームだとアイテムコマンドから回復薬を選ぶだけで使用できましたが、現実だとバッグから取り出してから、飲むなり振り掛けるなりしなければいけません。ネコさんのポシェットに腰ひもを追加できるようにして、腰の位置で固定して回復アイテムが使いやすいように改良しましょうか。


「今日1日の流れは、昼まで僕がリーダーとして指示を出しながら魔物を探して戦闘の訓練。昼休憩にここまで戻ってくる。休憩後は、昼の前半はユウナとネコさんの2人で魔物を探して倒す訓練。後半はミラの指示で薬草を探す訓練としよう」


「はっ、はい」


「ユウナ、君に危険が迫れば命に代えても僕が必ず守る。だから安心するんだ。」


「ラルフ…。いい加減女の子を勘違いさせるようなセリフはやめときなよ。ユウナちゃんは大丈夫だけど、それで昔何回も苦労したでしょ」


「何を言うんだ。不安になっているレディを安心させるのは紳士の役目なのさ」


「知り合って長いけど、ラルフの紳士の定義が未だにわからないよ」


 王子様みたいなラルフさんにさっきのようなセリフを言われると、勘違いする女性は多そうですね。私は勘違いしませんよ。


「まぁ、いっか。ユウナちゃん水を出してもらってもいいかな。水分補給をしておこう」


「わかりました」


 ミラさんの言葉でみんながバッグからコップを出します。輪になって座っている中央に4つのコップが並びました。


「休憩所には備え付けの桶があるはずだから、ちょっと持って来るよ」


「ミラさん。大丈夫ですよ。アクア」


 威力は最弱、量は200ミリリットルと意識してコップに手をかざしながら魔法名を唱えます。私の手のひらの下に水の球が生み出され、コップに向かってゆっくりと落ちていきました。水は溢れ出すことなく綺麗にコップへと収まります。まだ、1度の魔法で1つの水球しか生み出すことができないので、4回唱えることになりますが。


「ユウナちゃん、凄いじゃない!!魔法の制御は完璧だね」


「本当だな。ゴレットもここまで繊細な制御はできなかったはずだ」


「ありがとうございます。でも、低威力の制御は得意ですが、威力を高めるのは苦手なんです」


「そんなことないよ。立派な才能だよ。ユウナちゃんは胸を張ってもいいよ」


「そうですか?」


 ミラさんが褒めてくれるので、ちょっとふざけて胸を張ってみます。


「うわ、ユウナちゃんって、本当に胸が大きいね。ボクなんて…」


「なっ、何を言うんですか、ミラさん!!」


 ミラさんの言葉に顔が真っ赤になっていくのがわかります。でも、ミラさんは私の非難の声が聞こえていないらしく、自分の胸元に視線を落としてため息をついています。ミラさんは8頭身のすらっとしたモデル体型じゃないですか。そっちの方が羨ましいですよ。


「ゴホンっ。ミラ、セクハラな言動は同性とはいえ慎んだ方が良いぞ」


 ラルフさんを見ると顔を赤くしています。女性の扱いが上手そうなのに意外です。


「うっ、うん。ごめん」


 何となく気まずくなってしまいましたが…


「ぷにゃー」


 ネコさんがコップの水を飲んで満足そうに声を上げました。


「とりあえず、水を飲みましょうか」


 私が言うと、そうだね、と2人もネコさんにならい水を飲みます。その後は雑談をしたり、戦闘の心得を教えてもらったりしながら過ごしました。


「さて、休憩もしたしそろそろ出発だ」


 ラルフさんの指示で私たちは休憩所から出発しました。


▽▽▽


 私たちは森の中を進んでいます。東の森は、うっそうとしていなくて適度に太陽の光が差し込み視界は保たれています。


「そろそろ、魔物が出てきてもいい場所だ。ネコさん、魔物の気配はあるかい?」


「にゃふー。にゃふー」


 ラルフさんの言葉にネコさんは周囲を見渡しながら、鼻をヒクヒクさせています。


「にゃふっと」


 ネコさんは一鳴きして、私たちが進んでいる方向の右前方を指示しました。


「よし、ユウナとネコさんは僕から少し距離を開けてついてきてくれ。ミラは2人の護衛だ」


 ラルフさんが剣を構えると足早に進んでいき、私たちはミラさんに先導されて進みます。しばらくすると、ラルフさんが立ち止まり手招きをします。音を出さないようにラルフさんの方に向かいます。


「ユウナは魔物を見たことがなかったな、あれが魔物だ」


 ラルフさんが指差した先には中型犬位の大きさのうさぎがいました。私が知っているうさぎとの違いは大きさの他に、額から1本のツノが生えているところです。あと、魔物の特徴であると教えられた、黒い淡いオーラのようなものを纏っていますね


「あれは、ツノウサギと呼ばれる魔物だね。特徴は見ての通りの額から生えているツノだよ。強力な脚力で飛び掛かり、ツノで刺してくるんだ」


 普通のうさぎでも素早いのに、あの大きさで飛び掛かりツノで刺されるとなると下手をすると即死じゃないでしょうか?


「ツノウサギは攻撃をされると前後左右と器用に飛び退くが、攻撃をするときは一直線に飛び掛かってくる。そこが攻撃するチャンスなのさ」


「あと、ツノウサギのツノと毛皮はそれなりの値段で買い取ってもらえるから、できるだけ傷つけないように倒すのが良いよ。確か、ツノと毛皮がそれぞれ銅貨10枚くらいだったかな」


 ツノと毛皮で銅貨20枚。目の前にはツノウサギが3匹いますから、銅貨60前前後です。これだけで、1人分の基本的な生活費を手に入れることができます。これからは魔物討伐を…いえ、目先の利益に飛びつくのは危険です。自重しましょう、自重を。


「ツノウサギ3匹なら僕1人で倒すことができる。僕は移動してわざと敵に攻撃をさせるから、ユウナとネコさんは観察していてくれ。では、行ってくる」


 ツノウサギはまだこちらに気づいていません。ツノウサギを中心に、ラルフさんは右周りに移動していきました。私たちとツノウサギとラルフさんを結ぶ線の角度が90度になった時に、足元に落ちていた木の枝を拾いツノウサギの方へ放り投げます。


 木の枝が地面に落ちて音をたてるとツノウサギが一斉にラルフさんの方へ顔を向けます。そして、3匹同時に飛び跳ねながら、ラルフさんへと襲い掛かりました。


「ユウナちゃん、ツノウサギは素早く飛び跳ねながら移動するから、飛び道具や攻撃範囲の狭い魔法は当てにくいんだ」


 確かに、結構速いスピードです。また飛び跳ねている時は、上下に動いているので魔法はファイヤやアクアは当てにくそうです。


「今から1匹目が体当たりするから、ラルフは避けるよ」


 ツノウサギの3匹は連携などしないようで、我先にとラルフさんに向け進んでいます。先頭にいたツノウサギがラルフさんを攻撃範囲におさめたようで駆けつけるスピードそのままに体当たりを試みました。


 ラルフさんは両足を肩幅に開いて正面を向いていましたが、左足を右後ろに退くことで半身になりツノウサギの体当たりをかわします。続く2匹目、3匹目のツノウサギの攻撃も同じように回避しました。


「今みたいに一直線の単調な攻撃って当たりにくいんだ。ユウナちゃんの初級魔法は基本的に一直線に飛んでいくから、使うタイミングや使い方を工夫することが大事だよ」


 なるほど、だからルゥちゃんは私にネコさんとの連携攻撃を教えてくれたのですか。


 ラルフさんの方を見ると、体当たりを避けられたツノウサギたちがラルフさんの方へ体を向きなおしたところでした。そこへラルフさんが駆けて行き、剣を振るいます。先頭のツノウサギへ右斜め下への斬撃を振るいますが、後ろに飛び跳ねられてかわされます。しかし、そのまま一歩踏み込み着地のタイミングで突きを放ち絶命させます。


「初めの斬撃はわざと回避をさせる為の罠だったよ。本命は着地の回避できないタイミングで放った突きというわけなんだ。2人で言えば、ユウナちゃんの魔法が斬撃で、ネコちゃんの魔爪が突きにあたるね」


「にゃふ、にゃふっと」


 ネコさんを見るとラルフさんの動きみたいに、左フックからの飛び込み右ストレートを練習しています。


「ラルフさんは私たち2人での戦いを想定して、敵の動きや攻撃方法を見せてくれているんですか。凄いです。あと、ミラさんもラルフさんの動きの意味を即理解できるなんてわかり合っているんですね」


「べっ、別にわかり合ってなんかいないんだからね。ただの腐れ縁で付き合いが長いからこれくらい想像つくだけだよ」


 おっ、ミラさんのツンデレセリフが久しぶりに出ました。うーん、2人は恋仲だったり片思いだったりするのでしょうか…なんて、良くしてくれている人たちの関係を邪推するなんて失礼ですね。それより、戦闘に集中しないと!!気を引き締め直します。


 残る2匹をラルフさんは危なげなく倒しました。2匹目は1匹目と同じ方法で、3匹目は体当たりを回避したすれ違いざまでの斬撃によるものです。私たちはラルフさんに手招きされたので戦闘が行われた場所に移動します。


「どうだったかな?」


「とても勉強になりました。あと、ミラさんが解説してくれたのでわかりやすかったです」


「それは何よりだね。では、ユウナこれを見てくれるかい」


 ラルフさんが私に剣を差し出します。その剣には先ほど切り捨てたツノウサギの血がべっとりと付着していました。


「あっ」


「今回の戦闘訓練の依頼の話を冒険者ギルドで聞いた時に、僕が名乗りを上げたのはユウナの心を心配してのことなんだ。ユウナは心優しいレディだ。そんなレディが魔物とはいえ、命を奪うことに対して心を痛まないはずはないと思ったわけだ。新人の冒険者の中には男女問わずこういった問題で心を病み引退するものも多少いる。あと、君のパートナーのネコさんは爪を武器に戦うのだから、全身に返り血を浴びることもあるだろう。そんな、ネコさんを見ても平常心でいられるかい?」


「私は…」


「ボクもその点を心配してたんだ。本当なら、冒険者ギルドで説明しても良かったけど、実際に体験してみないと本当に大丈夫なのか、ダメなのかわからないから。だから、現地で質問しようとラルフと話し合ったんだよ。ごめんね」


「いえ、その、ありがとうございました」


 魔物の討伐に対しては、自分やネコさんの身の危険についてばかり考えていました。魔法が少しばかり使えるようになったので、弱い魔物相手なら大丈夫だと思っていましたが、魔物の命を奪うということに対する忌避感については欠片も思い至っていませんでした。ラルフさんの剣についたツノウサギの血は紛れもない現実です。その血を見ると、忌避感だけでなく恐怖心も湧きあがってきます。私の魔法で傷を負った魔物が苦しんでいるのを見て、私は冷静に止めを刺せるでしょうか。返り血を浴びたネコさんに良くやったねと喜んで褒めてあげることができるでしょうか。


「ごめんね、ユウナちゃん。一度休憩所に戻って休もうか。それから、今後のことを考えてみよう」


 ミラさんが優しく私の肩を抱いてくれました。私はこれではいけないと、『大丈夫です。ちょっとびっくりしただけです。生活のこともあるから頑張れます』と言おうとしますが、なかなか言葉になりません。


「にゃふー!!にゃふー!!にゃふー!!」


 突然ネコさんが威嚇の声を上げました。見ると毛を逆立てて威嚇しながら、森の奥をにらみつけています。


「どうしたネコさん。なっ!!ゴブリンキングだと!!」


 森の奥から、大きな巨体の魔物―ゴブリンキングが数匹の魔物を引き連れて姿を現したのです。

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