表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウナとネコさんたちの異世界生活  作者: 藍
第2章 ユウナとネコさんの雑用クエスト
12/44

ユウナとネコさんの雑用クエスト

 にゃふっと、にゃふっと、にゃふっと。


 ネコさんの声を録音して設定したスマホのアラーム音で目を覚まします。スマホの時計を見ると22時になっており、寝過ごしてはいませんね。


 ネコさんはまだ眠っていたのでくすぐってみると、にゃふふと笑いながら起きました。


 この後は食事の後に掃除の依頼が始まるので、体操着のジャージに着替えます。部屋の洗面台で顔を洗い準備完了です。


「さて、食堂に行きましょうか」


「にゃふっと」


 私は掃除道具を入れたスポーツバッグを担ぎ、ネコさんにはバッグに入りきらなかった道具を持って貰って一緒に食堂に降りていきます。


 食堂にはまだ多くのお客さんが残っており、食事やお酒を楽しんでいるようです。


「ユウナちゃん、ネコちゃん、そこの席に座って」


 食堂に入ってきた私に気づいたリーネさんが席に案内してくれます。目立たないカウンター席の一番端を確保してくれていたようです。


「はい、お待たせ~」


 席に着くとすぐに料理を運んでくれました。お馴染みの固いパンと薄切り肉の炒め物、そして野菜スープです。寝起きでしたが昼食から時間が空いていたので2人とも完食しました。


 周りを見渡すと少しずつ席が空いています。もうしばらくしたら閉店になりそうです。


「ユウナちゃん、ネコちゃん、もうすぐ仕事が始まるけど眠たくない?」


 私たちのお皿を下げに来たリーネさんが声をかけてくれます。ネコさんもリーネさんに慣れたのか大人しく撫でられています。


「さっき仮眠を取りましたから大丈夫です」


「にゃふっと」


「準備万端みたいだね。じゃあ、もう一度依頼内容の確認をしておくね。掃除場所はキッチンとホール。キッチンは食器や調理器具はお父さんが洗っているから、他のコンロや壁や床の汚れを落としてね。ホールは壁や床に机と椅子だね。冒険者が多い食堂だから、料理や調理の汚れの他に外から持ち込まれた砂や泥の汚れも多いよ。って話しているうちに、最後のお客さんたちが帰るところだね」


 リーネさんがお客さんを見送り行って、閉店の立札を用意していました。


 しばらくしてロイさんがキッチンから出てきました。


「お待たせしました、ユウナさん、ネコさん」


「ロイさん、今日はお願いします」


「えぇ、こちらこそお願いします。それではキッチンの片づけが終わったので今から掃除をお願いします。終了の目途は翌朝の7時ですので、もし時間までに掃除を完了できないと思ったら切りのいいところで片づけに入って下さい。時の魔道具はそこの壁に掛かっています。もし何かわからないことがあれば、宿屋の受付カウンターの奥に時間交代で家族の誰かが起きていますから、遠慮なく声をかけて下さい」


「はい、わかりました」


「掃除道具は前に確認してもらったキッチン奥の小部屋にあるので自由に使って下さい。それでは我々はこれで失礼します」


「ユウナちゃん、ネコちゃん、頑張ってね」


「はい、ロイさん、リーネさん、お疲れ様でした」


「にゃふー」


 ロイさんとリーネさんを見送ったので、食堂には私たち2人だけになりました。


「それでは、ネコさん頑張っていきましょうか」


「にゃふっと、にゃふっと」


 私もネコさんも気合十分です。


 掃除の前にまずは現状の確認です。スマホを取出し、ホールとキッチンの写真を撮っていきます。掃除の邪魔になる備品は動かすので、掃除が終わった時に元の置き場所がわからなくなっては困るからです。そして椅子や観葉植物など同じ形状で区別がつかないものには、色の違う紐を結び付け区別がつくようにしました。本当なら数字や注意書きを書いた紙をテープを貼っていきたかったのですが、この世界には紙があってもテープがありません。ちなみに糊はあったのですが、跡が残ると綺麗にする為の手間が増えるので紐で代用しようと思ったのです。紐なら再利用可能で、他の用途でも使えますしね。


 次に掃除道具の準備に取り掛かります。ネコさんと一緒に小部屋から道具をホールに運び出しました。柄の長いブラシに雑巾を挟むタイプのモップ、木製のバケツと雑巾や布巾です。食堂の床はホールは板張りで、キッチンは石張りになっています。ロイさんに普段の掃除方法を尋ねると水を流してブラシで磨く程度と言っていました。汚れた水はキッチンの床にある排水溝に流し込めるようになっているそうです。その時に排水の処理はどうなっているのかと質問すると驚きの答えが返ってきました。


 食堂や宿屋から出た排水や汚物は配管を通じて地下室に流れ込むようになっているそうです。その地下室にはスライムが飼われており、スライムが排水などを消化吸収します。また、生ごみなどもダストシュートから地下室に投げ入れることで、同じように処理してくれるのです。スライムは消化吸収を続けると体が大きくなるので業者が月に1回から2回ほどの間隔で回収して、新たなスライムと入れ替えます。スライムは地下室から脱出しないのか尋ねると、スライムの忌避するハーブと消化不可能なコーティングを使用しているので大丈夫だそうです。まずは地下室全体をコーティングして扉や壁の消化による脱出を防ぎ、ハーブから抽出した濃縮液を地下室側の配管出口に散布することで近づかなくなるので脱出が防がれていると言われました。このような設備が商店から一般家庭にまで広まったのは、10数年前で街の衛生環境が大変改善されたそうです。


 この話を聞いて、室内を事前にコーティングをしていればスライムで汚れの消化吸収ができるのではと思い付いたので話してみると、コーティングや忌避液の匂いが強烈でとても耐えられないからできないのですと言われました。まぁ、そのおかげでお掃除クエストが残っているわけですが。


 考えがそれましたが、小部屋から掃除道具を運び出せたので、次は私が用意した掃除道具を並べます。まずはネコさんに持ってきてもらった箒とチリトリとはたき、そして私のスポーツバッグからルゥちゃんの店で買った大きめの布と端切れに、雑貨屋で買ったブラシとヘラ、桶に木製のお椀に鍋、あとはパン屋さんに教えてもらった『あるもの』を取り出します。他にも買った物はありますが、今日使うのはこれくらいです。


「準備が整ったので今から掃除を開始します」


「にゃふっと」


「ネコさん、始めにホールの動かせる備品を食堂の外に出していきましょう」


「にゃーふ」


 ネコさんと手分けして、時に協力して椅子や観葉植物などを入り口から外に出していきます。外と言っても屋外ではなく宿屋のロビーなのです。ロビーに備品を移動することは、ロイさんに説明して許可は取っています。備品の中の机は、酔った冒険者に壊されないように頑丈で重い物を購入しているので、私たちには移動できないのでそのままです。ちなみに、椅子はひっくり返して机に乗せておくという方法もありますが、残念ながら椅子自体の汚れがひどかったのでロビーに出しました。人数が少ないので何往復もしましたが、重かった物は鉢植えの観葉植物くらいなので程なく作業は完了しました。


「では、ここから作業を分担します。ネコさんは外に出した椅子を雑巾で水拭きして下さい。水はバケツに私が魔法で注ぎます。汚れてきたらキッチンの排水溝に流して、また私が補充しますので声をかけて下さい」


 掃除用の水は食堂で今日使わなかった水を使ってもいいことになっていますが、キッチンの水瓶から水をくむ手間を考えると効率が悪いので私が魔法で出すことに決めました。


「にゃふっと!!」


 ネコさんが元気に返事をしながら、右手で敬礼します。この世界にも敬礼があるのでしょうか?まぁ、可愛いので気にしませんが。


「アクア」


 ルゥちゃんに教わったとおり、水の量と威力をイメージしてバケツに水を注いでいきます。満タン近く入れても、捨てる時にネコさんが運ぶのに苦労するので半分より少し多いくらいにします。3つのバケツに注ぎましたが、魔力消費による精神的疲労はありません。威力を抑えているので消費量は少なくすんでいるようです。 


「では、雑巾で水拭きをお願いします。椅子は見える面だけではなく、座席の裏と脚、脚の底も拭いて下さい。冒険者の方はブーツやズボンが泥などで汚れている人が多いので、座っている時に足をブラブラさせると座席の裏や脚の内側に当たって汚れが移っている場合があります。また脚の底が汚れたままだと椅子をホールに運び込んだ後に床が汚れることになりますからね」


「にゃふー」


 返事をした後、ネコさんは椅子の下に潜り汚れを確認しています。


「にゃふふ!?」


 以外に汚れていることに驚いたのか、早速椅子の水拭きを開始しました。


「私はホールの方を掃除するので、こちらはお願いしますね」


「にゃふっと」


 掃除の手を止めることなくネコさんは返事をしました。これなら、まかせても大丈夫でしょう。


▽▽▽


 ネコさんに椅子の掃除を任せて、ホールに戻ります。


「では、上から掃除を始めますか」


 最近はいろいろな意見がありますが、掃除の基本は上から下と言われています。掃き掃除をした後にはたきをかけると、せっかく綺麗になった床に埃が落ちてしまうからです。


「この位置くらいからでしょうか?」


 食堂の構造は、食堂に入るとホールありカウンターを挟んでキッチンが奥にあります。つまり、ホールとキッチンの間に壁がありませんから、ホールの埃を落とすとキッチンに流れこむ可能性があります。


 私はカウンターを背に向け3歩ほど進み、両手を扇状に広げ天井に向けています。


「ウィンド」


 私を起点に扇風機の強風より強いくらいのイメージで風魔法を放ちます。風魔法は今日の掃除に使えそうなので、『妖精の針子』から戻った時に1度ずつ威力制限の練習をしました。



 『風魔法の才能(初級)』

  意識を集中して魔法名を唱えることで初級の風魔法を扱うことができる。

  使用可能魔法:ウィンド


 私を起点として手の先から扇状に風が放たれました。このホールには宿泊部屋と同じく灯りの魔道具が取り付けられているので蝋燭は使われていません。魔道具はしっかりと天井に固定されているので、風は天井や壁についていた埃だけを落とすことに成功しました。それを確認して2歩下がり、真上に手を上げもう一度、風魔法を放ちます。


「ウィンド」


 2度目に放った風魔法が壁となり先ほどの巻き起こった埃がキッチンへ侵入することを防ぎました。あとは、風魔法を放った位置より後ろの壁と天井を端切れを取り付けたモップで水拭きをします。これにはキッチンが近いという理由と魔力の節約の為に、水瓶からバケツに水を汲んで使いました。


 モップによる水拭きが終わったので、ホールの壁と天井を見渡すと埃は落ちていました。落とし切れていない汚れはウィンドを放った範囲にある壁についた料理の汚れや、壁にもたれた時に付いたような泥汚れなどです。これらの汚れは拭き取るしかないので、端切れで拭いていきます。その間にネコさんがバケツの水を捨てたので、何度かアクアで水の補給を行いました。椅子掃除が終わったネコさんがこちらに合流してくれたので開始から2時間ほどで、椅子と天井と壁の掃除が完了しました。


「お疲れ様です、ネコさん。10分程休憩しましょうか」


「にゃふー」


 体育用持ってきていたエナジーバーとペットボトルのスポーツドリンク1本をはんぶんこにしました。スポーツドリンクの味に慣れていないのでネコさんは不思議そうに飲んでいましたが、エナジーバーはルゥちゃんと食べた時のように喜んで食べてくれました。空になったペットボトルは水筒代わりに使えるのでスポーツバッグに戻します。


「作業を再開しましょうか。先にホールの掃除を完了したいのですが、床掃除はキッチンの床掃除と併せて最後にします。だから今からするのは机の拭き掃除です。私は天板を拭いていきますので、ネコさんは天板の裏と脚を拭いていってください。裏や脚を拭くのは理由は椅子の時と同じですよ」


「にゃふっと!!」


 おー、本日2度目の敬礼です。休憩により士気が上がったのでしょうか。


 天板はロイさんが営業終了後綺麗にしてくれていたので、天井から埃を拭き取るだけで済みました。すぐに完了したのでネコさんと合流します。この流れでカウンターの拭き掃除も終わり、床以外のホールの清掃は完了です。


「それでは続いてキッチンの掃除に入ります」


「にゃふー」


「使う道具はブラシに鍋に端切れと布巾、最後にこれですよ」


 私が最後に指し示したのは、パン屋さんに教えてもらった『あるもの』です。『あるもの』とは『重曹』です。軍曹ではありませんよ…なんでもないです。


▽▽▽


 私は家庭科部で掃除の仕方を学びました。だからバイトもしたことが無い私としては、自分の知識でできるお掃除クエストは非常に魅力的な仕事だったのです。極端にいえば掃除は水とブラシや雑巾などの道具があれば、時間はかかりますが綺麗にすることができます。ただ、それでは効率が悪いので、もう一工夫が必要でした。


 ミラさんのセリフで冒険者は依頼人の満足のいく結果を出せれないと聞いた時には、やる気が無いのか、もしくは道具が揃っていないのではないかと考えました。私自身は掃除が好きなのでやる気の面は問題ありません。道具については、さすがに雑巾やブラシなどはあると思ったので、欠けているのは洗剤ではないかと思ったのです。地球での掃除は洗剤ありきだと私は思っています。汚れに対して適した洗剤を選ぶことで少ない労力で綺麗にすることができますね。食器洗剤に洗濯洗剤、トイレ用洗剤にカビ取り剤など用途別の洗剤が思い浮かびます。もしかしたら、この世界には洗剤に該当するものが存在しないのではないのかと考えましたが、すぐに否定しました。それは掃除の専門職である『清掃局』の存在です。専門職として組織がある以上は清掃に対するノウハウがあり、素人との違いが明確にあるはずだと思えたからです。家庭向けの掃除機や洗剤がある地球でも、より強力な業者用の掃除機や洗剤が存在するのと同じです。


 ミラさんにこの世界の洗剤について尋ねましたが、地球でいうところの石鹸にあたる木の実の粉はあるけど、汚れ落ちはいまいちだと言われました。だったら、本職の清掃局がどうやって掃除しているのか質問すると、専門職の仕事内容はわからないという答えだったのです。リーネさんに尋ねても同じ答えでした。清掃局の清掃方法はわからなさそうなので調べることを断念して、結局地球での知識を利用することにしました。そして、リュックサックに入れていた掃除の本を読み直していると、重曹についての説明が載っているページが目に付きました。この世界にもパンがあるので、重曹なら手に入るのではないかと思いパン屋さんで質問する流れになったのです。重曹の作り方はいくつかの方法があるのですが、この世界ではドワーフが土や鉱物から精製して作っているそうです。相変わらず文明レベルの振れ幅は不明ですが…。


 重曹は、炭酸水素ナトリウムという白い粉で、パンやお菓子のふくらし粉として使用されますが、昨今の情報番組で他の理由で特集が組まれることが多くあります。その理由とは掃除に役立つということです。油を分解する能力や、研磨剤としても使用できること、もともとが食品に使われるので食器や調理器具にも使っても安心で、肌に刺激が少ないなど多くのメリットがあるのです。スーパーや100円均一のお店の清掃用品のコーナーにも陳列されていることも当たり前になっています。ただ、食品用や工業用とグレードによってわけられていることや、肌への刺激が少ないとはいえ、肌の弱い人にはゴム手袋の着用を推奨されているなどの注意点はあります。使用する時には商品の使用上の注意の確認が必要ですね。


「ネコさん、キッチンの掃除を開始しましょう」


「にゃふっと」


「ホールと同じように掃除の邪魔になる物を出していきます。壁や棚にある調理道具や食器、調味料をホールに移動させましょう」


「にゃふにゃふ」


 背の低いネコさんが置き易いように床には大きめの布を敷きました。あとは高い位置にある物は私が、低い位置にある物はネコさんがそれぞれ運び出します。ホールの椅子や観葉植物と違い小さい物が多いので、体力的には楽ですが数が多かった為意外と時間が取られました。


「運び終わりましたね。うーん、やっぱり油汚れが多いですね」


 コンロのある壁際や調理台、換気扇代わりの通気窓などは特に油汚れが酷いです。


「あとは水垢ですね」


 木製のシンク周りには水垢が目立ちます。


「私は天井や壁の掃除をしますので、ネコさんは低い位置にある棚の中を拭いていって下さい。ブラシを使って隅の埃を掃き出してから端切れで水拭きをして下さいね」


「にゃふっと!!」


 ネコさんの身長の関係でキッチンは上下の同時進行で掃除をします。私は買ってきた鍋に水を入れ、事前に許可を貰っているので魔道具のコンロを借りて湯を沸かします。火傷に気をつけながらお湯に端切れをつけて、モップの柄に装着させます。あとはモップを使い、壁や天井を磨いていきます。一通り磨き終わったので確認します。コンロから遠いところはこれで十分綺麗になりましたが、油汚れの酷いところの汚れはそんなに取れていません。ここで重曹の出番です。


 重曹をお椀に入れて少しずつ水を加えて混ぜ合わせます。重曹と水が2対1の割合くらいでペースト状になるので、これを油汚れの酷いところに塗り付けました。あとはしばらく放置することで油を浮かせることができるのです。


「ネコさん、状況はどうですか?」


「にゃふー」


 身をかがめて棚の中にいるネコさんを見てみます。棚の中は綺麗に拭けていますが、やはりところどころに埃が吸着された油汚れが残っています。


「ネコさん、このペーストを落ちなかった汚れに塗り付けて行って下さい」


「にゃふっと」


 ネコさんに重曹ペーストの入った容器とヘラを渡します。ネコさんは【五指の才能】があるのでこういった細かい作業も平気ですね。ネコさんがペーストを塗り終わったので、これから拭き取りをしていきます。


 端切れでペーストをこすると、重曹の効果によって浮いていた油汚れが面白いように取れます。ネコさんも一生懸命拭いてくれたので壁や天井、棚の中の汚れが無くなりました。


 あとはコンロや調理台に水回りの掃除と、ホールとキッチンの床掃除のみです。ネコさんがコンロや調理台の上を掃除しようとすると、それらの上に立たなければなりません。流石に食材を扱う場所を踏むわけにはいかないので床掃除をお願いしましょう。


「ネコさんは箒を使ってホールの床の掃き掃除をして下さい。やり方は、入り口側の右端からカウンター側に一直線に掃いて入り口側に戻り、また先ほど掃いた列の左横からカウンター側に一直線に掃いて戻るを繰り返すようにします。そうすればカウンターの下にゴミが溜まるのでチリトリで集めてダストシュートに捨てましょう」


「にゃふー」


 ネコさんはホールに戻り床掃除に取り掛かりました。


「さて私もコンロ掃除と調理台の掃除に取り掛かりましょう」


 頑固な脂汚れは先ほど作った重曹ペーストを使用します。ほかの汚れについては重曹の粉を振り掛けてブラシで擦ります。重曹は研磨剤の代わりになるので、こびりついた汚れが綺麗に取れていきます。あとは水で洗い流し、乾いた布巾で拭いて完了です。


「次は水垢ですね。うーん、いったん部屋に戻りましょう」


 ネコさんに声をかけ部屋に戻ります。目的は、家庭科部から補充目的で持って帰ろうとしていた調味料です。


「これなら残量は十分ですね」


 調味料のボックスから取り出したのはお酢です。お酢は酸性の為、アルカリ性成分の水垢を取るのに効果があるそうです。


 キッチンに戻り、水垢掃除に取り掛かります。端切れにお酢を含ませて水垢のある個所に貼りつけます。しばらく放置してブラシで擦ってみると水垢汚れが取れました。匂いが残らないように水ですすいで終了です。


 ネコさんは掃き掃除が終わったので、私を待っていてくれました。


「では、ホールとキッチンの床を磨きと、移動した物を戻したら依頼達成です。今は5時なので2時間もあれば十分です。あと少しなので頑張って行きましょう」


「にゃふっと!!にゃふっと!!」


 依頼の初達成が見えてきたので気合十分です。


「まずはキッチンから外に出した物を元の位置に戻しましょう。そして床を磨きます」


 スマホの写真を参考に2人で元の位置に戻していきます。


 戻し終えたら次は水瓶から床に水を撒いて、ブラシで磨きます。キッチンまでは泥や砂が入っていないので、床は比較的きれいでした。最後に水を流して完了です。


「ホールは先に床を磨きます。ネコさんが掃き掃除を先にしてくれているので、水を撒いても泥汚れにはなりませんよ」


「にゃふっと」


「アクア」


 精神的疲労も無く時間短縮の為、水魔法で床に水をばら撒きブラシで磨き終えました。最後にもう一度床にアクアを放ち、排水溝の方に箒で水を掃いて、残った汚れを流していきます。あとは床が乾くのを待って椅子などを元に戻すだけです。


「よし、この椅子で最後です。はー、掃除は完了しました。ネコさんお疲れ様でした」


「ふーにゃっと、ふにゃっと」


 時間は6時30分になっています。30分の余裕があるので、初めての依頼としては上出来でしょうか。もうすぐロイさんが仕込みに来るので、その時に評価してもらい合格を貰えれば、依頼の達成ですね。


▽▽▽


「うん。ホールは椅子の裏まで綺麗にしてくれているね。キッチンの方はしつこい油汚れも落ちていてまるで新品みたいだ。この依頼の結果は清掃局以上と言えますよ」


「本当ですか!?」


「にゃふふ!?」


 仕込みに来たロイさんに掃除のチェックをして貰うと想像以上の高い評価をしてくれました。


「安心して下さい、この評価は本心からですよ。最近の清掃局は冒険者の受注が減っていることでほぼ独占となっているので、手を抜く者が現れているのです。それを差し引いてもユウナさんとネコさんの掃除は我々が望んでいる以上の結果を残しているのです。清掃局以上に綺麗にすることができる知識とそれを実現できる技術。なにより、お客様の目に付かないところまで綺麗にしようとする気遣い。その結果が今の評価になっているのですよ」


「では、今回の依頼の結果は?」 


「もちろん、ユウナさんとネコさんの依頼は達成ですよ。2人のギルドカードを渡してもらえますか?」


 ロイさんの言葉に従い、私とネコさんはギルドカードを出現させてロイさんに渡します。


「ユウナさんとネコさんの依頼の達成をここに宣言します」


 ロイさんが私たちのギルドカードを受け取って依頼達成を宣言します。そうすると、ロイさんが手に取っている私たちのギルドカードが淡い光に包まれました。


「これでギルドカードを冒険者ギルドに提出することで報酬を受け取ることができます」


「ありがとうございます。やったね、ネコさん」


「にゃふっと」


 無事に依頼を達成できたのでネコさんとハイタッチです。


「ユウナさんたちは良い仕事をするということを食堂の店主たちに伝えておきますよ」


「本当ですか!ありがとうございます!」


「にゃふー」


 ロイさんのおかげで依頼の受注がスムーズに行えそうです。その後、ロイさんが仕込みに入るというので邪魔にならないよう部屋に戻ります。


「ネコさん、お掃除をしてみてどうでしたか?」


「にゃふっと、にゃふにゃふ。にゃふっと」


 ネコさんは嬉しそうに掃除をするマネを見せてくれます。どうやら、掃除は嫌いではなかったようで安心しました。


「今後はどれだけ効率的に掃除を行えるかが重要です。私たちは2人ですから、物を運んだりする単純作業に時間がかかってしまいます。だから、効率的に行えることを頑張って時間を短縮できるように頑張りましょう。ネコさんの今後の課題は作業に慣れることですね。私の課題は魔法の技術を上げて、掃除により活用できるようにすることです」


「にゃふっと」


「…でも、お掃除クエストだけじゃ今後は問題がでてくるんですよね…」


 私は今後発生するであろう問題を考え、頭を抱えます。


「にゃふ?」


「あっ、ごめんなさい。とりあえずはお掃除クエストの数をこなして稼いでいきましょう。ネコさんお願いしますね」


「にゃふっと…にゃふぁー」


 ネコさんが返事の後にあくびをしました。


「ちょっと仮眠を取りましょうか。お昼に起きてから、冒険者ギルドで報酬を貰った後に依頼書の確認をしましょう」


「にゃふっと」


 桶にアクアで水を貯め、タオルを絞って私とネコさんの身体を拭きます。さっぱりした後で一緒にベッドで横になります。


「今日はお疲れ様でした。おやすみなさい」


「にゃふにゃい」


 初めての仕事に疲れた私とネコさんはすぐに眠りにつきました。



お読み頂きありがとうございました。

これで第2章は終了しました。おまけをはさみ、第3章を開始します。第3章からは新しいネコさんが登場します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ