ユウナとネコさんの『才能』と『加護』
「さてネコさん、今日の初クエストの作戦会議を始めます」
「にゃふ、にゃふ、にゃふ、にゃふ~」
私の言葉にネコさんが拍手をしてくれます。ただ、肉球の為ポムポムという音になっていますが。
「依頼の内容は、この『猫のしっぽ亭』のお掃除クエストで掃除個所はキッチンとホールです。今晩の23時頃から開始で、遅くとも3日間で終了させなくてはなりません」
「にゃふっと」
「期限こそ3日間ありますが、翌日に持ち越した場合は営業中にできた汚れも清掃対象になってしまうので、1日で終わらせる方が良いでしょう。広さ的にも時間的にも余裕はあるので私たちは今日の1日で依頼達成を目指しましょう」
「にゃふー」
「作戦会議は以上です」
「にゃふっ!?」
「だって基本的な道具は貸してくれますし、足りていないと思った清掃道具は先ほど買ってきました。それに下見と説明も終わっていますから、あとは開始してから体を動かすだけです。心配しなくても、私たちなら大丈夫ですよ」
「にゃふっと」
「それでは、まだ確認できていないギルドカードの表示項目で追加された『才能』と『加護』を確認しましょうか。お互いに見ておきましょう」
ギルドカードを出したいと念じると、私の手の中にギルドカードが出現しました。ネコさんを見ると同じく出現しています。
現在のギルドカードは『ユウナ イチノセ 冒』と書いてあるだけです。確か、表示項目の追加と念じると他の項目が出てくるはずです。表示項目追加と念じてみました。
「あれっ?何も変わりません。まさか、私には『才能』や『加護』は無いのですか!?」
でも、現にこの世界の言葉や文字がわかっています。最低でも『言語理解の加護』は持っているはずです。
「にゃふっと」
悩んでいるとネコさんがポムポムと私の手を叩き、ネコさんのギルドカードを見せてきます。ネコさんの爪先を見るとギルドカードの右隅の上下を交互に指していて、そこには上向きと下向きの三角のマークがありました。ネコさんが下向きの三角マークに触れるとギルドカードで表示されている名前の文字が上に進んでいき、下から『才能』という項目が上がってきました。
「これってパソコンなど画面のスクロールボタンですか?」
「にゃふ?にゃーふ、にゃーふ」
パソコンという単語がわからなかったのか、ネコさんは首を傾げましたが、その後は上下の三角マークを交互に押すことでスクロールするところを見せてくれます。
「わかりました。ありがとうございます、ネコさん」
改めて自分のギルドカードを見てみると、ネコさんのと同じように三角マークが表示されていました。先ほどはギルドカードの右端を持っていたので自分の指で隠れていて気付かなかったのですね。
「まずは、『才能』ですね」
『火魔法の才能(初級)』
『水魔法の才能(初級)』
『風魔法の才能(初級)』
『土魔法の才能(初級)』
「…え?大盤振る舞いじゃないですか!」
確か女神様は最低限度の『才能』と『加護』と言っていたはずです。ルゥちゃんは魔法の才能は珍しく、後天的に取得することが難しいので魔法を使える人は重宝されると教えてくれました。それを4つもくれるなんて過保護すぎやしませんか?
「えっと、気を取り直して『加護』を見ましょう」
『女神の加護』
『言語理解の加護』
「ほっ。今度は2つだけですね。でも、『才能』と『加護』の名前はわかりましたが、どうやったら魔法が使えるのかわかりませんし、『女神の加護』の効果も不明ですね。うーん」
「にゃふ、にゃふ」
悩んでいるとネコさんの爪先が『火魔法の才能(初級)』の文字に触れます。すると説明書きが出てきました。
『火魔法の才能(初級)』
意識を集中して魔法名を唱えることで初級の火魔法を扱うことができる。
使用可能魔法:ファイア
なるほど、スマホみたいにタップ(指先で1回叩く)することで、詳細が表示される仕組みみたいです。もう一度タップすると詳細は非表示に戻りました。他の属性の魔法も属性部分と魔法名が違いますが、火魔法と同じ説明です。次は『女神の加護』を見てみます。
『女神の加護』
ユウナは私のお気に入りだ。いつも見守っているぞ。
………。
「ネコさん、私は魔法の才能とこの世界の言葉がわかる加護だけがありました。ネコさんのギルドカードを見せてもらってもいいですか?」
「にゃふっ!?にゃふ、にゃふ!!」
「気のせいです。女神の加護なんてありません。ありませんとも」
ネコさんは戸惑っていますが、話を進めます。
私の対応を見て、ネコさんはやれやれといった風に首を左右に振りました。そして、私にギルドカードを見せてくれました。見せてくれる時に、ネコさんが『才能』と『加護』をタップしてくれたので詳細も表示されています。
『魔爪の才能』
魔力を物質変換して爪を伸ばすことができる。変換した魔力量により爪の長さや固さが変化する。変換する魔力の性質により属性攻撃が可能になる。
『危険察知の才能(動物)』
動物の勘により危険を察知することができる。この才能は『気配察知の才能』、『罠察知の才能』、『毒物察知の才能』の複合才能である。動物種族専用の才能。
『五指の才能』
不可視の力で人族の五指と同じような動きを再現できるようになる才能。これにより手の構造上扱えない武器防具から日常用品まで扱うことができる。ただし、範囲と力と器用さは自分の身体能力に依存する。
『女神の加護』
ネコさんは私の大切な友人だ。ユウナのことをよろしく頼む。
『????』
????。
「ネコさん凄いです。前に岩を削ったのは『魔爪の才能』だったんですね。『魔爪』なんてかっこいいですね。あと『危険察知の才能(動物)』も上位の才能みたいで便利ですね。それに『五指の才能』があったからグラスとかを持てたのですね」
私がネコさんを褒めると、にゃふ~と照れていました。
「でも、『????』って何なんでしょうか?」
「にゃふふ」
私の問いにネコさんは首を傾げて右頬に手をそえます。ネコさん自身もわからないみたいです。
そして注目すべきは、ネコさんの『女神の加護』です。まぁ、ネコさんの方が私より女神様との付き合いは長いですから当然ですね。詳細に書かれている、私のことをネコさんにお願いしている文面には正直心が温まりました。こういった感じで私にも接してくれたら私も素直に感謝できるのですが…。もちろん、女神様には感謝はしていますよ。
「依頼まで時間があることですし、ちょっと魔法の練習してもいいですか?」
「にゃふっと」
ネコさんの許可を貰えたので、今から魔法練習を開始したいと思います。
マンガや小説の世界にしか存在しなかった魔法を、自分が使えるということに少なからず…いえ、とても興奮していることがわかりました。
▽▽▽
さて、今いるのは『猫のしっぽ亭』で借りている銅貨40枚の部屋です。魔法の練習をするには危険でしょうか?
「ネコさん、この部屋で魔法の練習ってできますか?それ以前に『魔法の才能』があるからといって素人の私でも、魔法を出すことができますか?」
表示項目の追加の時点でギルドカードを確認していれば、『妖精の針子』のルゥちゃんに質問をしていたのですが。
「にゃふっと。にゃふにゃーふ、にゃふっと」
何となく肯定してくれているように感じました。ネコさんは先ほど買い物した生活雑貨の中から、洗濯用の桶を取出し部屋の中心に置きます。そして同じく先ほど購入したネコさん用のマイコップに水瓶から水をくみ、桶に注ぎ込みます。
「にゃふっと」
「えっと、これと同じことをするのですか?」
私もマイカップを持ち質問します。
「にゃふふ」
ブンブンと首を横に振ります。
やっぱり違いますね。魔法の練習なんですから。
「それなら、この桶に水魔法で水を注ぐということですか?」
「にゃふっと」
そうですよね。魔法の練習なのに魔法を使わないのでは意味はありません。ネコさんの水魔法のチョイスも部屋への被害が少ないことを考えてのことでしょう。火なら下手をすると火事になりますからね。風なら部屋の破壊、土なら…土ってどんな魔法なんでしょうか?土を操れるのか、土が出てくるのか、土に関係する鉱物をぶつけるのか、作品によって扱いが違います。この世界に来て魔法はまだ見たことがありませんから、私のイメージとの違いが起こる可能性があります。ただ、ネコさんがこの部屋での練習方法を提示してくれているのだから、それを信じます。もちろん、洗濯桶から狙いを外すと部屋が水浸しになりロイさんには怒られますが。
「では、水魔法の再確認をしますね」
『水魔法の才能(初級)』
意識を集中して魔法名を唱えることで初級の水魔法を扱うことができる。
使用可能魔法:アクア
「魔法名はアクアですね」
「にゃふっと」
ネコさんは頷き、私の両手を『五指の才能』により掴み洗濯桶の中心に方向を定めます。
「にゃふにゃ」
にゃふにゃ?あっ、今のはアクアと言えということですね。水が両手から出るイメージを描いて意識を集中します。
「アクア」
私が呟いた言葉と同時に心臓から両手の先に向かって、何か熱い物が流れていくような感じがしました。そして、掌の少し先に野球ボール程の水の塊が産まれ出て、洗濯桶の中心へと飛んでいきます。水の塊が洗濯桶に接触すると、パシャッとはじけました。洗濯桶に注がれたのは、コップ1杯分くらいの水でしょうか。威力が弱かった為、桶を傷つけることもなく床に飛び散ってもいません。
「今のが…魔法…ですか?」
ゲームの中なら大津波を敵に放ったこともあります。水をカッター状に放出して鉄を切るような想像をしたこともあります。それに比べて今私が起こした現象は、ただ洗濯桶にコップ1杯分の水を注いだだけにすぎません。でも、間違いなく私が現実に起こしたのです。魔法を使ったのです。桶の中の水を触ると、間違いなく水が存在し指先を濡らしました。
「本当に…私は魔法が使えるのですね…」
この事実に私は言葉にできないような万能感を感じています。物騒な例えですが、日本で特別な許可無くしては所持を認められていない銃を持っているといったところでしょうか?自分が銃を持つことで人の優位に立つことができる特別な力を得たと感じているようなものです。
ですが…。
「すー、はー」
深呼吸をします。
「今私が行ったのはコップ1杯の水を洗濯桶に注いだだけなんです。ネコさんだってマイカップを使えば同じ結果を得たじゃないないですか」
あえて言葉に出します。
「強いとされるBランクのザインをラルフさんが目にも止まらぬ神業で倒しました。コップ1杯の水を出したところで、私程度では切り殺されるのがオチなのです」
女神様からもらった『才能』を理由に、自分は特別なんだと勘違いしてはいけません。
「こんなことで調子に乗っていたら、いつか失敗してお父さんとお母さんより長生きするという願いを叶えられません」
私の願いはこの世界で長生きをして、私とネコさんが楽しく喜んで暮らしていくことなんです。
「にゃふ?」
ネコさんが心配そうに私を見つめています。ネコさんを撫でると気持ちが落ち着きました。
「何でもないですよ。私の世界には魔法が無いから、自分が魔法を使えたので想像以上に驚いたのです」
「にゃふー」
「ところで、ネコさん。魔法ってどれくらいの回数が使えますか?マジックポイントとか魔力とかを消費するのでしょうか?」
「にゃふふ。にゃふっと」
ネコさんは悩んだ後、カーヤの街のパンフレットを取出し地図のページを開きます。そして、ルゥちゃんのお店である『妖精の針子』を指し示しました。
「えっと、ルゥちゃんに質問をした方が良いということですね」
「にゃふっと」
うーん、私に『魔法の才能』があることを隠した方がいいのか悩んでいましたが、この世界で暮らしていく以上隠す方が行動を制限されデメリットになりそうですね。
今は15時です。外はまだ暗くなっていませんから、魔法の練習はできなくても質問だけでもさせて貰いましょうか。それに魔法は掃除に応用できそうですから、自在に扱うことができれば効率が良くなりそうです。
「では、ルゥちゃんのお店に行きましょうか」
「にゃふっと」
手土産に手作りのエナジーバーを持って行ってみましょう。
▽▽▽
『妖精の針子』はお客さんがいなくてちょうど閉店の準備をしているところでした。ルゥちゃんに説明をすると快く迎えてくれ、手土産のエナジーバーを見せるとお茶の準備をしてくれたので、ちょっとしたお茶会になりました。ドライフルーツの入っているエナジーバーは、ルゥちゃんとネコさんに好評で、嬉しかったです。ちなみにお茶会後、ネコさんはルゥちゃんに抱っこされて居眠りをしています。
「それでユウナお姉ちゃんは魔法について知りたいのですね~」
「はい、先程ギルドカードの才能を確認したら『水魔法の才能(初級)』があることがわかりました。水の初級魔法のアクアを使うことが出来たのですが、魔法の基礎的な知識が無いので教えてもらえたらと思ったのです」
「そうですか~。さっきいっぱい商品を買ってくれたし、美味しいお菓子を貰えたのでサービスで教えますよ~」
「すみません」
「気にしないで下さい~。それでは講義に入りますね~。ユウナお姉ちゃんはアクアの魔法を使えたと言ってましたが~、『魔法の才能』さえあれば魔法は簡単に使えるのです~。では魔法を使う為には何が重要かというと、魔法の体力ともいえる魔力と威力上限ですね~。自分の体内で生成する魔力と自然界に存在する属性の魔力を合成して魔法を発動するのです~」
「魔力と威力上限ですか?」
「そうですよ~。たとえば、剣士は体力のある限り剣を振り続けることができます~。でも体力万全の時の一振りと~、何百回も振り続けた後の一振りでは威力が全然違いますよね~。魔法も同じで魔力が万全なら集中すればするほど威力は上がります~。でも、魔力が残り少なくなっていれば、基本的には威力も減りますし集中もできません~」
「では、魔法を続けて使用すればするほど威力が落ちてしまうのですか?」
「そうとは限りませんよ~。魔力量の多い人は魔法を使っても残量がなかなか減らないので魔力減少による精神的疲労度を感じにくいのです~。他に魔法の使用経験が豊富だと精神的疲労度による威力が減少が少なくなるのですよ~」
確かに体力と同じ感じがしますね。体力の多い人は普通の人と同じ距離を走っても疲れません。またマラソン選手など経験者は全力を尽くしつつもラストパートできる体力を残すことができたり、ここぞという時には気力で走りきったりできます。
「ちなみに魔力は魔法を使えば使うほど多くなります~」
「だったら、『魔法の才能』を持っている人は魔法の練習を続ければ、全員が強い魔法使いになれるということですか?」
「残念ながら違います~。魔力の上昇率と魔法の威力は個人差が大きいのです~。魔力が無限に近い人でも薄い板を壊すことができない人もいますし、大岩を消し飛ばせても1回しか発動できない人もいるのですよ~。だから魔法使いは必ず冒険者などの戦闘職に就くのではなく、私のように店を経営したり水魔法で飲料水を売ったりする人もいるのです~」
魔法の水が飲めるのはミラさんから聞いていたのですが、飲料水として販売されていることは知りませんでした。これは良いことを聞きましたね。
「あの、さっき自分の魔力と自然界に存在する属性の魔力を合成と言いましたが、例えば砂漠なら水魔法は使えないのですか?」
「いい質問ですね~。結論から言うと使えます~。属性魔力は密度の濃いところから薄いところへ移動する性質を持っているみたいなのです~。だから、大地に豊富にある土の魔力は空に舞い上がり、海や川に豊富にある水の魔力は砂漠へと移動していくのですよ~。大規模な水魔法を使った直後でもすぐに水魔法が使えるのは、使用された水属性の魔力分を周辺の水属性の魔力が移動してきて補っているからですね~。もちろん、属性の魔力は絶えず産み出されるので無くなるということはありませんよ~」
熱の性質みたいですね。高温の物体と低温の物体が接すると、熱が低温の方に移動していくような感じでしょうか。
「あとは何か質問はありますか~?」
「それでは2つ質問させて下さい。魔法の使用回数とか魔力量の残量とかはわかりますか?それと魔法の威力の調整はどのように行えばいいのですか?」
「えっとですね~、具体的な回数や残量はわかりません~。感覚的な物ですね~。体力と同じでこの速度ではこれ以上は走り続けれないとか、このペースなら何キロメートルは走れるな、とか感覚でわかるのと同じですよ~。とにかく何回も魔法を練習して、感覚としてわかるようになって下さい~。ただし、無理は禁物ですよ~。魔力が全く無いのに魔法を使おうとすると、魔力が全快するまで眠り続けることになりますから~」
この世界にはレベルやステータスと同じように、マジックポイントのような明確な数値が無いということがわかりました。でも、数値が無いとしても体力のように感覚的にわかるというのであれば問題なさそうですね。
「あと、威力の調整は結果をイメージすればいいのですよ~。これくらいの水の量を出して、威力は1cmの厚さの板を割るという風にです~。経験を積めば積むほどイメージと結果のズレが無くなるのです~。ただこれは威力を抑える場合は簡単ですが、威力を上げようとすると集中が必要になります~。火の魔法で木を焼き尽くす場合なら、体を動かすことなく雑念を捨ててひたすらに木を焼き尽くすことだけをイメージして魔法名を唱えるのですよ~。これは非常に難しいので段階的に威力を上げていく練習をする方が効果的です~。試しにこの陶器のコップちょうどの水の量をアクアの魔法で出して注いで下さい~。壊さないように気をつけて下さいよ~」
ルゥちゃんが机の上に置いたのは200ml―つまり1カップ分の容器ぐらいの陶器のコップです。水の量をまずイメージしてから、陶器を壊さないよう水道から流れ出る水程度の威力をイメージします。
「アクア」
私の掌の先から水の塊が出て、ゆっくりと容器に入っていきます。多少水がはねてしまいましたが、陶器は壊れることなく水で満たされました。
「ユウナお姉ちゃん、凄いです~!!実はこのコップは丈夫だからちょっとやそっとじゃ壊れないんですけど、普通初心者がピッタリの量の水を出すことは難しいんですよ~」
ルゥちゃんの間延びした口調は変わりませんが、上々の成果に驚いているようです。ルゥちゃんの声にネコさんが目を覚まし、ふにゃふにゃと言っています。
「このカップって200ミリリットルくらいの容量ですよね。200ミリリットルは料理の基本の量の1つだからイメージしやすいですよ」
「ユウナお姉ちゃんは料理人だったのですか~?でもミリリットルなんて単位は、薬師か貴重な素材を扱う商人や生産者くらいしか意識しませんよ~。料理人は個人の感覚で調理するものですよ~」
どうやらこの世界での料理は目分量で行うようですね。分量が明確なレシピというものが無いのかもしれません。だから、料理人として認められるための免許証を手に入れるには、実務経験が必要で見習いとして住み込んで師事するのでしょう。ミラさんとの就職相談の時の会話が思い出されます。
「私は料理人ではないですよ。料理の仕方はお母さんから教えてもらいました。お母さんは私が理解しやすいように数字で教えてくれたのかもしれませんね」
この『妖精の針子』で初めて買い物をした後のルゥちゃんとの雑談で、この世界には嘘を感知する魔法は無いということがわかりました。でも、積極的に嘘をつく必要はありません。だから、異世界転移以外のことはなるべく本当のことをしゃべるようにすると決めています。実際に料理の基本はお母さんの手伝いをしながら教わったのですから。
「そうですか~。ともかく、ユウナお姉ちゃんには魔法を制御する才能があるみたいですね~。魔力や魔法の威力の上限については今は何とも言えませんが、練習は欠かさないようにして下さいね~。暇な時は『妖精の針子』に来て下さい~。威力制限の練習ならともかく、威力上昇の練習は屋内では危険ですから裏庭を貸しますよ~。火魔法の訓練で火事を起こしてしまったら騎士に捕まってしまいますからね~」
「えっ、何で私が『火魔法の才能』を持っているってわかったのですか!?」
私は『水魔法の才能』があると説明しましたが、他の属性については話していないはずです。
「わたしは道具に魔力を付与するのが専門ですから、魔力の存在にはとても敏感なのです~。『魔法の才能』がある人はさっき説明した自然に存在する属性の魔力を無意識に集めてしまうのですよ~。ユウナお姉ちゃんからは火水風土の4つの属性の魔力を感じていました~」
「では、何の魔法が使えるか魔力に敏感な人にはばれてしまうですか?」
ギルドカードにはせっかく『才能』を隠す機能があるのに、意味が無くなってしまいませんか?
「明確に感じ取れるのは『魔力感知の才能』を持っている一部の人だけですから、誰も彼もがあの人は何の魔法が使えるなんてわかりませんよ~。安心して下さい~」
「そうですか。よかったです。今日は時間を取らせてすみませんでした」
「気にしないで下さい~。学園を卒業して引っ越してきたばかりなので、この街では友達がいませんから話し相手ができて嬉しいです~」
「そうですか。では私とネコさんの友達になってくれますか?」
「にゃふっと」
「本当ですか~。それは嬉しいです~。ユウナお姉ちゃん、ネコちゃんよろしくお願いします~」
ルゥちゃんは笑顔で私とネコさんを交互に見て、ネコさんを撫でています。
雑談の後、ルゥちゃんに挨拶をして宿屋に戻りました。時間は18時になっており、結構長居していたようです。夕食は依頼開始30分前の22時30分頃に食堂に行くので簡単な物を出してもらうようにロイさんにお願いしています。
さて、準備も済んでいるので22時まで寝ておきましょう。スマホのアラームをセットしてネコさんと仮眠につきました。
次話で第2章は完結です




