プロローグ
H30.9.1編集しました。
具体的な変更内容の説明につきましては、後日第二部の投稿前に説明投稿話を設けます。
…ここはどこでしょう?
真っ暗で…何も見えません…。
「…ぶ…」
それどころか…体の感覚がありません。
「だ…じょ…か!」
私は今日…確か…家庭科部の部活動を休んで両親の墓参りに…えぇ、行ったはずです。
墓掃除をして…お父さんとお母さんへの挨拶が終えました。…ここまでは普通だったはずです。そして…墓地を出ようとしたら?
えっと、墓地を出ようとしたら…?
「だいじょ…」
…ダメです…
そこから記憶がありません…
「大丈夫か!!」
えっ!!
「だっ、だれですか!?」
どこからともなく女性の声が聞こえてきました。ただ、変わらず目は見えない状態です。
「よかった。意識はあるな」
「はっ、はい、意識はあります。私は今、身体の感覚が無くて、身体が動かなくて、えっと、感覚がないだけで本当は動いているのですか?あっ、そもそも、私は話せていますか?えっと、私の声は聞こえているのですよね?」
「落ち着くんだ!!今はとにかく落ち着いて私の話を聞いてくれ!!」
「はっ、はい!?」
「まずは私のことについて説明させてくれ。いいか?」
「はっ、はい」
えっと、私が異常事態に陥っていることは間違いないようです。今は状況を把握しているであろうこの女性の話を聞くことが重要ですよね?
「ありがとう。驚かずに聞いてほしい。…私は女神だ。地球ではない、君から見たら異世界を管理している女神だがな」
「え?」
女神様?しかも、異世界?
「えっと…何かの冗談…ですか?」
「そうだな、君が信じれないのはもちろんわかる。君の世界では女神という存在が一般的でないということは私も理解している。しかし、君が異常な状況にあるのは理解できるだろう?」
「そっ、それはそうですが…」
先ほども認識しましたが、私が異常な状況に陥っているのは確かです。身体の感覚はなく、しかも自分は女神だという女性の声が聞こえてきたのですから。だからといって、この女性が言う女神や異世界について、急に信じろと言われても信じられません…よね?
「君の恐怖や戸惑いはよくわかる。ただ、無理を承知で言う」
「えっと?」
無理を承知と言われても困ります。
「…【今は私を信じてくれ!!】」
「はっ、はい!!わかりました!!」
えっ!?
先ほどまで否定的な意見を持っていた私ですが、女神様?の力強く凛とした声で信じてくれと言われ、思わず肯定の返事をしてしまいました。何よりその返事は偽りのものではなく、この人の言葉を信じてみようという気持ちから出たものだったです。本当にこの声の主は女神様なのでしょうか?
「えっと、女神様…私は今、どういった状況に置かれているのですか?」
「君は世界の歪みの発生による衝撃で怪我を負ったのだ」
「…世界の歪み…ですか?それに怪我も!?」
私の質問に女神様は答えてくれたのですが、初めて聞く単語に余計に混乱してしまいます。ましてや、私が怪我を負ったと言われたのですから。現状、私は身体の感覚がないのは間違いありません。ただ、痛みなどは全く感じていませんので怪我と言われても、ピンとこないのです。
「この世にはいろいろな世界がある。それらは通常なら交わることのない独立した存在だ。しかし、自然現象によって稀に世界が繋がることがある。その自然現象を【世界の歪み】と言うのだ」
女神様は私の疑問を含んだ驚きの声に対して、すまなそうな表情を浮かべ説明を続けました。それならと、具体的な質問を投げかけます。今
、私に必要なことは情報なのでしょうか?
「えっと、先ほど女神様は異世界を管理していると言いましたよね。会話の流れから考えると女神様の世界とこの地球がつながったということですか?」
「あぁ、そうだ。理解が早くて助かる」
「それでは異世界の女神様がいるのですから、地球の女神様もいるということですが?」
「あぁ、地球の女神も近くにはいる。だが彼女はその力を使い、世界の歪みの拡大を抑えているところだ。私と地球の女神は2つの世界が繋がったままでは危険だから、世界の歪みを消去しに来たからだ」
それでここからが本題なのだが、と女神様は続けます。
「先ほど言ったが、君は傷を負っている。しかも、このままでは死んでしまうほどの重傷だ。そして助かるためには私の管理する世界に来て、魔法による治療を受けるしかないのだ」
「えっ!?私はそれほどの重傷を負っているのですか!?」
「そうだ。地球の医療技術では治療不可能なほどの重傷だ。ただ私の世界にある魔法なら、君の怪我も完治させることができる。…しかし、魔法は地球では行使できない。だから君には私の世界に来てもらう必要があるんだ」
「そうですか。えっと、助けてくださるのでしたら、お願いしたいのですが。なぜ、異世界の女神様が地球人である私を助けてくれるのですか?」
「私たち女神は世界を管理している立場にいるが、世界の歪みの発生については予知できなんだ。情けないが私たち管理者は事後対応しか取れない。だから、世界の歪みによる被害については管理者である私たちは積極的に対応するようにしている。今回の君の怪我は地球の女神では治療できないから、歪みがつながった世界の女神である私が対応したいと思っている」
「そうですか、ありがとうございます。あの私はどれくらいの期間で完治して地球に戻れるのでしょうか?」
「…すまない」
先ほどまでの聞く者に勇気を与えるような女神様の声が、急に弱々しいものへと変わりました。
「世界の管理者以外が世界間を移動する技術は確立されていないんだ。だから…君は地球に戻ることはできない。これから君を私の世界へ連れて行けるのも、今発生している世界の歪みを利用するからなんだ。その歪みも君の移動が完了したらすぐに消去しなければならない」
「えっ?えっと、私は地球に戻ってこれないのですか?」
「過去に管理者以外で世界間を移動した人物はいることはいる。その人物は特殊な理論や才能を駆使して、それを成しえた。ただ、あまりに複雑すぎる技術や条件から他の者がそれを利用することはできないんだ。すまないが、君が地球に帰還できる可能性はほぼゼロであると考えてほしい」
「そう…ですか…?」
突然な急展開に…いえ、急展開はということは普通に考えたら突然に起こることですよね、はははっ…。…いえ、そうじゃなくて!?えっと…えっと…えっ!?私は地球に戻れない!?
「あの…あの…えっと…」
「ユウナ!!」
「はっ、はいっ!!」
女神様の言葉に思わず返事をしました。…あれ?
「えっと、私は自己紹介しましたか?」
「いや、地球の女神に君の、いや、ユウナのプロフィールをあらかじめ教えてもらっていたのだ。ユウナ、本当に申し訳ない。地球の女神もこのことについては心を痛めていた。本当に…本当にすまない」
女神様の沈痛な声が私の心を揺さぶります。…先ほどの説明を信じると、女神様たちは悪くありませんよね。女神様たちは、突然発生する自然現象の尻拭いをしているだけなのですから。しかも、私を助けてくれると言ってくれているのですから。それなのに私が文句を言うのはお門違いということですよね。
「えっと、私は女神様の世界で暮らしていけますか?」
「私の管理する世界は、ユウナの世界にあるファンタジーを描いたアニメやゲーム作品などの基本的な世界観を思い浮かべてもらえば間違いはない。地球でいう中世ヨーロッパをイメージさせる世界観に、剣と魔法、エルフやドワーフに獣人、魔物や冒険者ギルドにダンジョン。日本よりも危険はあるが街中で暮らすのならば命の安全は保障される。私の今の立場から君には【言語理解の才能】などの最低限度の【加護】や【才能】を与えることくらいしかできないが、それらをうまく活用すれば生活には困らないだろう」
えっと、アニメやゲーム作品などのファンタジー世界ですか?私は小説や漫画、アニメ、それにゲームが好きですから女神様が言うファンタジー世界の設定などはわかります。私が今置かれている状況は、いわゆる【異世界転移もの】のそれです。自分が主人公ならどう行動しようと妄想したことも、恥ずかしながらあります。私は自分がおとなしい性格だと思っていたのですが、物語のような今の状況に対して興奮していることに我がことながら驚きました。私にもヒロイック願望があったみたいです。
…いえ、それよりも私が本当に気になったのは【命の安全は保障される】と言われた言葉です。私には異世界に転移して地球に戻れなくても、日本より治安が悪いのだとしても、生きることを選ばなければならない理由があるのですから。
「…女神様、地球の女神様に教えてもらったのかもしれませんが、私は幼いころに両親を事故で亡くしました。同じ事故に巻き込まれた私をかばってくれた両親は息を引き取る前に『優奈は私たち以上に長生きしてね』と言いました。私は…まだ死ねません。お父さんとお母さんの願いを叶えたい。…私を…私を異世界へ連れて行って治療してください!!」
「わかった。君の両親に誓って、君を命は絶対に救う!!…ただ…転移後は私は管理者という立場上、君に干渉することが難しくなる。アドバイスや多少の支援くらいならできるが、世界に降り立って君を助けるのは不可能だ。それこそ、管理者の立場を返上しなくては…」
「あの、女神様。命を救って下さるだけでも十分です。思い詰めないでください」
「しかし、それでは君や君の両親に対して…そうだ、私の友人たちに君の手助けをしてもらうようお願いしておこう。あっ、友人たちは5人姉妹で君と同性の心優しい女性たちだから安心してくれ。それに、彼女たちはいろいろな分野のエキスパートだ。間違いなく君の助けになるだろう。君がこの世界で独り立ちできるよう成長するまでは一緒に暮らしてくれるはずだ」
女神様は名案を思い付いた興奮からなのか、先ほどより早口になっています。
「そうだな、まずは末っ子に会えるよう手配しておくよ。彼女だけは成長途中で特別な力こそ持っていないが、一番人間社会に興味を持っていて博識だ。君の異世界生活の先生になってくれるはずだ。あとの姉妹は追々君に合流するだろう」
突然の女神様の申し出に私は驚きましたが、よく考えると非常にありがたいことですよね。右も左もわからない私のサポートをしてくれる方がいるなんて。ただ、私は社交的な方ではないので他人と一緒に暮らすことはもしかしたらストレスになるかもしれません。いえ、そのようなことを考えるのは女神様やご友人に対して失礼ですね。わざわざ、同性の方を選んでくださるのですし。なるようになれ!!です。
「女神様、ご迷惑を掛けてすみません」
「ユウナが謝ることはない。君は私たち管理者の力不足による被害者なんだから。さぁ、ゆっくり眠るんだ。起きた時には怪我は完治して異世界にいる。そして、そこには私の友人がいるから遠慮せずに頼ってくれ」
女神様の言葉に安心した私は、これからおとずれる異世界生活への不安と少しの興奮を抱え、眠りにつきました。




