俺が最強の物語
悪気は無いんです……。
俺、高柳沢光一。
中学2年生だ。
ひょんなことから交通事故で死に、今神様のところにいる。
「あなたを最強で素敵にかっこよく転生させてあげましょう」
転生した俺は、侯爵家の次男として生まれた。
新しい名前はラファエロと名付けられた。
最強の俺は、剣術も魔法もメキメキと上達し、兄で次期英雄ともてはやされたリチャードも軽々と追い越したった。
家中のメイドも俺の虜だ。
「素敵!抱いて!」
メイド長も俺の前に陥落した。
リチャードが嫉妬して斬りかかって来るけど、俺の敵じゃないので適当にあしらっておいた。
ダンスパーティーでは俺を求めて声がやむことは無い。
あちこちの令嬢も俺を見て目がハートマークになっている。
お姫様ですら、俺のこの最強の魅力にメロメロだ。
「素敵!抱いて!」
ほら、この通り。
抱くってよくわかんないので、抱いて頭をヨシヨシしておく。
たぶん、これであってると思う。
学校では、俺の争奪戦が繰り広げられる。
抱かれたい男ナンバーワンの座は、俺が入学してからはずっと俺のものだ。
嫉妬したクラスメイトに喧嘩を売られるもすべて返り討ちだ。
なんたって、俺が最強だからな。
俺の使う最強の魔法は外宇宙から隕石を降らせる魔法。
最強過ぎて普段は使えないから封印しておくけど、魔王軍の幹部が来た時には使って撃退してやった。
リチャードを差し置いて、俺が次期英雄とささやかれるようになった。
リチャードには辛いだろうが、これもさだめだ。
最強で楽しい学園生活。
そんな楽しい学園生活にも暗雲が立ち込める。
リチャードの放った最強の刺客で番長のゴンザレスが、子分をたくさん引き連れて俺のもとにやってきたのだ。
もちろん、俺の最強に極まった剣術 “眠れる獅子の咆哮”の前の敵じゃない。
ばっさばっさと斬り倒し、峰打ちで。そんな感じで番長のゴンザレスの下に辿り着いた。
「オレをここまで追い詰めたのは、お前が初めてだぜ」
ゴンザレスが肩で息をしながら言う。
「俺も、お前ほどの“使い手”は初めてだ」
そして、俺もゴンザレスを称える。
奇妙な友情が芽生えた。
そう、俺達は互いに死線を乗り越え、気が付くと互いに握手をしていた。
「素敵!抱いて!」
男は嫌です。
いよいよ迫る、魔王との最終決戦。
最強の俺を筆頭に、国一番の剣士ジョーンズと、国一番の魔道士マイケル、そして美しく可憐に育った我が妹のレイチェルの4人で挑む。
レイチェルは普段はツンツンしているが、俺の前ではデレデレだ。
お母さんが生んだはずなんだけど、血は繋がっていないらしい。
たぶん、将来結婚する。
旅立つ俺に、王様は最強の剣 “悠久の剣”と、最強の盾 “無双の盾”と、最強の鎧 “金剛の鎧”をくれた。
さっそく装備する俺。
最強過ぎて、どうしたらいいのかわからない。
魔王の城に着いた俺は、挨拶代わりに時空魔法で最強の “眠れる森の俺”を使って大打撃を与えた。
たぶん、城壁とかもうどんどん崩れ落ちて大変なことになってる。
四天王を次々と倒し、あとは十二死天王を倒したら魔王との戦いだ。
俺達を止められる奴らは居ない。
あっという間に十二死天王の最後の一人、グロウシーザーを倒し、魔王の下に辿り着いた。
それまでに俺のレベルはカンストして、スキルも全て解放された。
たぶん、神々の息吹とか魔王の息吹とかもカンストしたから死なない。
ジョーンズとマイコーは、何か俺に凄いのを託して散って行った。
「さあ、追い詰めたぞ魔王!」
「よくぞここまで辿り着いたな、勇者で賢者のラファエロよ」
魔王と睨み合う、勇者で賢者の俺。
もう、両手から魔法を出して組み合わせたものを、更にそれを剣に纏わせたりできるらしいぜ?
「お兄様は、傷付けさせません!」
レイチェルが果敢にも前に出る。
「ほう、貴様は召喚士で薬師の生き残りであるという噂のレイチェル」
妹は召喚した使い魔で攻撃したり、融合して凄い技を使ったり、複数呼び出して鍋パーティーを開いたりできるんだ。
その上、薬剤師免許も持っている。
魔王と俺達の力は均衡していた。
だが、俺の最強に極まった “神と悠久の潜む深淵”が、いつの間にか付けていた魔王の仮面を叩き切った。
その瞬間、魔王の素顔が明らかになる。
勝負が付いたのだ。
「息子よ……立派になったな」
気が付かなかったけど、俺は魔王の息子だった。
「父さん……俺……」
父は俺に伝説の魔剣 “陸海空と超合金の剣”を託し、俺の腕の中で息を引き取った。
「とうさぁぁぁぁぁぁああああああんんんんんん!!!!」
世界が平和になったので、王宮へと凱旋する俺と妹のレイチェル。
王様と、お姫様、父さんと母さんが俺達を祝福した。
そして、俺とレイチェルはみんなの前で口付けを………………
「光一、そろそろご飯よ」
「か、母さん、部屋に入る時はノックしてよ!!」
「ん?あんた、今何を隠したの?」
「な、何でもないよ、明日からテストだから勉強してたんだよ!すぐ行くから!」
俺は、そっとさっきまで書いてたノートを隠した。
これだけは、誰にも見せることはできない。
そして、俺はテストで赤点を取った。
なんか、スッキリしました。