6話
次の日の朝。夏休み初日は朝から暑かった。
今日の起床時間は朝の10時だ。
「おはよー」
俺は一階のリビングに顔をだす。
「おにい。おはよー。今日はおにいのお客さんがいるよ」
ソファに座る妹の秋葉の隣には橘さんと小夜さんがいた。
「二人で来てどうしたんですか?」
「小夜が出掛けようって騒いじゃったから連れてきたんだ。下野くんの家は広くてエアコンもついていて最適だと思って来ました……」
「俺の家は観光場所でもなんでもないですよ……」
橘さんの隣にいる小夜さんは俺に一切気づかず棒アイスをおいしそうに舐めている。
「じゃあ俺は朝食でも食べますね。食べ終わったらどこかに行きます?」
「秋葉は隣町のショッピングモールに行きたいなー!」
「橘さんはどこかあります?」
「あたしはないかな。でも、秋葉ちゃんの意見に賛成だよ」
「わたしもショッピングモールにいきたい!」
棒アイスの棒だけになったのか、小夜さんも勢いよく手を挙げて賛成した。
「さっと食べて、みんなで行きましょうか」
今日は暑くて日差しが強いから、熱中症には注意しなきゃな。
夏は暑いな。もう汗をかいてきた。
電車を使い、隣町のショッピングモールについた俺と橘さんは入り口付近にいた。着いてすぐにお手洗いに行った秋葉と小夜さんをいま待っている。
「そういえば、秋葉は小夜さんのこと知っているんですか?」
入り口付近のベンチに腰を下ろした橘さんに俺は聞いてみた。
「秋葉ちゃんには、あたしから話しておいたよ。そしたら、協力出来ることがあれば言ってくださいって言ってくれたよ。優しい妹さんだね」
「まあ……秋葉は誰にでも優しいやつなんです」
「そうだね。あたしもそう思うよ。秋葉ちゃんはいい子だねって」
丁度、秋葉と小夜さんは帰ってきて俺たちと合流して二階のフロアへ行く。
いま思えば、秋葉はショッピングモールに何しにきたのだろうか。
「秋葉ね、今日は洋服を見にきたんだ!あ、代金は、おにいね」
「俺持ちかよ……」
近くにあった洋服店に入っていく秋葉を見送り、俺は小夜さんを見た。
麦わら帽子を被っている小夜さんは、橘さんの手を握っている。
周りから見れば高校生が手を繋いでるように見えるが、俺らにしたら小学生の小夜さんとはぐれないようにしている高校生と見えてしまう。
「小夜さんはどこか行きたい場所はないの?」
「お兄ちゃんのお名前わすれちゃった。ごめんね……」
「俺は下野葉乃だよ。簡単な呼び方で呼んでいいよ」
「わかった。じゃあハノってよぶね!」
小夜さんは無邪気な笑顔を見せる。
――か、可愛い。小夜さんのこんな表情初めてだ。記憶に焼き付けておこう。
「あたしと小夜も秋葉ちゃんのところに行ってくるね」
「じゃあ俺はそこらへんのベンチにいますね」
「ハノ、じゃあねー!」
「じゃあね、小夜さん」
繋いでない手で手を振る小夜さんを見て、俺はベンチに座る。
高校生の小夜さんはあんな表情見せてくれなかったなあ……。
どうしてなんだろう。
「だーれだ?」
ふと目の前の視界が暗闇に包まれ、聞いたような声が後ろから聞こえた。
「忍!お前も来てたのか!?」
「まぁねー」