死にたがりのピエロ
突然だが、質問をしよう。
『死ぬ前にお前の望みを一つだけ叶えてやろう。お前の望みは何だ?』
普通の人ならば何と答えるのだろうか。死にたくないです?お腹一杯美味しいものが食べたい?はたまた、世界一の美女に看取られたい?
俺はただ一言、こう答えた。
「死にたいです」
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俺の名前は春日春一。名前に春が多いのは凄く俺も突っ込みたいのだが、生憎名前を付けた親は生まれてこの方会ったことがないのでどうしようもない。
小さい頃は親戚の家で育てられ高校生の頃に一人立ちをした。恋愛歴としては、中学三年生の時に、小学生からの幼馴染みに思いきって告白するも、友達とすら思っていなかった事が発覚して玉砕。
ちなみに、その時の台詞が「はぁ?あんたって私の事を友達だとでも思ってた訳?うわ、引くわ」だった。あの言葉は未だに忘れられない傷である。
高校に入ってからは、恋愛そっちのけで勉強に励むも、成績は伸びず、中の上止まり。
それでも何とか有名大学に滑り込み、明るいキャンパスライフが待っていると期待した俺が馬鹿だったのか、大学で出来た初めての男友達にお願いされ、いい気になって判子を押した先が借金の連帯保証人。友達は勿論夜逃げ。連絡も無し。
もうこの辺りで既に人生を諦めていたが、バイトに勤しんで何とか半額返し終えた時には既に周りは就活一色。
有名大学のブランドであろうか、割とあっさり入社が決まったかと思えばとんでもないブラック企業。それでも借金を返すためにはと身を粉にして働いていた矢先に倒産。
もうどうしようもないと全てを諦めて、帰路に付いた訳だが、どれだけ前世で俺は駄目な奴だったのか、車に轢かれて瀕死である。
ちなみに、今はもう意識が怪しい。あぁ、ようやく死ねるかもしれない。
余程運が悪かったのか、俺を轢いた相手は見る影も無い。まさかの轢き逃げ。死にたいとは思ったけど流石に救急車ぐらい手配してくれても良かったんじゃないだろうか。
などと色んな事を一気に思い返していた訳だが、これが走馬灯かと感動している俺に水を指すかのように声が響いた。
『死ぬ前にお前の望みを一つだけ叶えてやろう。お前の望みは何だ?』
何というバッドタイミング。人生至福の時に神様っぽいものが登場しなさったらしい。来るならもっと早く来て欲しかった。
『わしも余り暇じゃないんじゃ。望みを早く言え』
そしてまさかの強請。出来ることならそっと死なせて欲しい。
『何か無いのか?神様が願いを叶えてやると言っておるのに強情じゃな』
何だか声に苛立ちが滲み始めている。とりあえず怒りたいのはこっちの方だ。
「望みって何でもいいのか?」
『おお、やっと決まったか?何でも良いぞ。叶えてやる』
「ならば、」
願うことは昔からたった一つだ。
「死にたいです」
『それは無理じゃな』
俺の望みは一刀両断。
「何でだよ!何でも良いんじゃ無いのかよ!」
思わず飛び起きると、何やら明るい。身体もどこも痛くない上に感覚も無い。
「あ、俺死んだ?ラッキー!」
『いや、死んでおらんよ。』
「早く死なせて下さいお願いします」
『ふむ、何故それほど行き急ぐのじゃ若人よ』
「生きることに疲れました」
これは俺の本心だ。何をやっても尽く打ち砕かれてきた。今更希望などを持ちたいとも思わない。いや、思えないのだ。それほど俺は疲れきっていたのだ。




