正反対の出会い②
遅くなりました。すみません。
リナと出会ったあの後、俺たちはすぐにゴブリン狩りを開始した。
基本は1体を二人で挟み込んで即殺、2体以上のときは早く終わらせた方が加勢に入るという戦法を取っていた。
その狩り方はなかなかに効率がよく、およそ半日でリナのLvは6、職業Lvは4になっていた。
俺のLvは9に、職業Lvは6になった。
リナはとても嬉しそうに
「ゴブリンって、かなり経験地が高いみたいね。もうLvがバンバン上がっちゃうよ~!」
なんて言っていた。
その後も黙々と狩り続け、日が沈む頃にはリナのLvが7、職業Lvが5になった。
俺は職業Lvが7になっただけだった。
そして、1体のゴブリンを狩り終えたとき、クエストが始まった。
「 クエスト発生
『ゴブリン族の徘徊』
クリア条件:ゴブリンリーダーの討伐
報酬: 小鬼石 」
「な、何これ?」
リナが焦ったように聞いてくる。
俺はそれに対して、少し考えてから答えた。
「多分イベントクエストだな、何かの条件を満たしてしまったのかもしれない。」
クエストについて簡単に説明すると、
通常、クエストではクエストギルドで契約金を払い依頼を受け、クリアしてクエストギルドへ報告することで報酬として金や素材を手に入れることが出来る。
それに対して、イベントクエストは様々な条件を満たすことで発生する。
・契約金が取られることが無い代わりに敵が強い。
・報奨金が無い代わりにレア素材を手に入れられる。
というものである。
リナに説明し終えると、
「どうする、やりたくないならクエストを破棄することも出来ると思うが?」
そうはいっても、俺はクエストを受けたい気持ちが沸々と沸いていた。
それに対するリナの返答は、
「いいわ、ここまで来たならやりましょう!」
よく言った!、と言わんばかりに彼女の背を思いっきり叩くと、蹴り返された。
「それじゃあ、まずは、ゴブリンリーダーの居場所を突き止めなきゃいけないわけだが。」
俺がそういうと、彼女から、
「ゴブリンがいっぱいいるほうを目指してけばいいんじゃない?」
「それはそうなんだけど...、それじゃ虱潰しになっちゃうだろ。」
「しょうがないじゃない。それじゃあなたは索敵スキルを持っているっての?」
「うっ、それは、持っていないが...」
「じゃあ、決定ね。」
そのとき俺は索敵スキルの必要性を多大に感じた。
その後、30分ほどで大量のゴブリンが沸いてくる方向を発見した。
「あっちね、突っ込むわよ!」
「オウ!」
二人はその言葉通りに、今も沸き続ける敵陣へと突っ込んだ。
向かってくるゴブリンを避け、攻撃を仕掛けてくる奴らは蹴散らしながら、背後にはMTと呼ばれる大行列を作りながらも進んでいった。
ある程度進んだ先には、森が開けた小さな空間があった。
MTも、それ以上は追ってこない。
すると突然奥の森がガサゴソと鳴ったかと思いきや、いきなりゴブリンが飛び出してきた。
敵は五体、真ん中の一体を取り囲むように行動している。
真ん中の一体は、明らかに通常のゴブリンとは違っていた。
他のゴブリンよりも一回りも大きい体躯。
その身に宿す全身鎧。
大きな鉈と、丸い盾。
「あいつがゴブリンリーダーね。」
「そうだな。」
「どうする?」
「んじゃ、まずは周りの雑魚から蹴散らしますか。」
そういって、二人して駆ける。
向かってくるゴブリンに対して、すぐに「スラッシュ」を発動、すると鉈で防がれたものの、それを弾き飛ばすことに成功したが、
「気をつけろ、こいつら普通のゴブリンと違うぞ!」
「分かってる」
リナは俺よりもLvが低いため少しギリギリ感があった。
鉈を弾き飛ばしたゴブリンを斬り付けて倒し、次のゴブリンを見据えるが目の前に鉈が迫っていた。
「うおっ!」
横に倒れこむように体を動かすが、「回避」スキルを持っていないためか、完全によけきることは出来なかった。
「ぐあっ!」
肩口が抉られ、血が飛び散る。
痛覚までもがリアルになったこの世界で、その痛みは想像以上の痛みを伴った。
HPゲージは、3分の1も削られた。
追撃を仕掛けてこようとするゴブリンに気付くと、剣でガードを行い「スラッシュ」を叩き込む。
さらに迫ってくる鉈をかわしながら、少しずつ攻撃を仕掛けていくとゴブリンは倒れた。
リナの方を確認すると、あっちも2体目を相手取っているところだった。
それを見た俺は、今度はゴブリンリーダーを見据えた。
今まではそうゆう仕様なのかと戦闘には参加していなかったが、今度は明らかに目に闘志の光が灯っている。
「ふっ!」
リーダーに向かい駆け接近しても動じる様子は無い。
そのまま「スラッシュ」を発動させるが、鎧に弾かれほとんどダメージを与えることは出来なかった。
すると、今度はこちらの番だとでも言うように、リーダーが武器を構える。
俺は急いで距離を取ったが、それでも少しかすってしまい残りHPを4分の1ほど削られてしまう。
急いでポーションを飲み込むと、またもゴブリンに向けて駆けた、だがその背後には戦闘を終えたらしきリナの姿があった。
リナが構えたのは「スライス」、俺が「いける!」と思った直後、ガァン、という音と共に、またも弾かれてしまった。
減ったHPも極僅か。
「どうしよう、こいつ硬すぎるよ!」
「鎧の隙間を狙うぞ!」
かく乱するように戦闘を進めていったが、ようやく敵のHPが半分になったところで、疾たちのポーションは底を尽こうとしていた。
「くそ、もうだめか!」
俺の叫びに対して、
「そうだね、でも一矢報いなきゃ!」
そう言って、「スライス」を発動、リーダーの頭に直撃しまたも弾かれたが、
「いまだ!」
リーダーは初めて焦りの表情を見せながら、衝撃で硬直していた。
「頭を狙え!」
二人掛かりで連劇を叩き込む、HPの減少は微々たる物の着実に削られていく。
そして、「カキィン」という音と共に兜にひびが入った。
「いくぞ!」
「はぁっ!」
「スラッシュ」と「スラスト」を受け、兜は砕け散った。
「これで終わりだ。」
「スラッシュ」でリーダーの首を取り、勝負は決着した。
「ほら、これ報酬の小鬼石だ。持ってけば自慢にでもなるだろ。」
「えっ、いいの?」
「もともと俺は手伝いだ。」
トレードウィンドウを開き待機していると、
「やっぱりこれはあなたにあげるわ。」
「なんで?」
「代わりに一つ頼みを聞いてほしいのよ。」
「どんな?」
リナは一息空気を吸うと、言った。
「私とペアを組んでほしいのよ。」
満面の笑みでそういわれたが、俺は「はっ?」ということしか出来なかった。
ようやく硬直が溶け、
「いやいや、おまえPT組んでるんだろ?」
「あれは嘘。ほんとはねみんな逃げちゃった。」
「なんで?」
「あなたも今回の戦闘で痛覚までリアルに再現されてるのは分かったよね。それでね、私たちのPTは私を除いて全滅したの、その痛みがトラウマになっちゃったらしくて、ね...。」
リナは少し悲しそうに言った。
「ふうん。」
「で、どうなの?組んでくれるの?」
「んー、ま、いいだろう。その代わり邪魔だと思ったらすぐに捨てるからな?」
少しきつく言ってやっても、リナは、
「うん、ありがと。これからよろしく!」
そういって、右手を差し出す。
「ああ、これからよろしく。」
二人はがっちりと握手を交わした。
次話から二人での狩りとなります。
意見、感想お待ちしてます!