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《Over World》Online   作者: 川岸雑草
第一章 はじまり
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終わりのはじまり

「---サプライズの始まりだよ...」


そんな言葉にユーザーたちは、

「えっ?」とか「おおっ!」とかそれぞれ反応している。

男は再びしゃべり始める。

「サプライズと言ってもそこまで大それたものじゃないさ、ただの正式発表だよ。」

この声には大衆の大半は、「おおっ!」という声を漏らしている。

男は再び呟く。


「みんな心して聴いてくれ。」


その一言に、広場は静まり返る。


「今現在、このゲームは始まったばかりだ。

 職業も無ければ、戦技(スキルアーツもスキルも無い。

 始まったばかりの、しかも新感覚のゲームとして楽しんでいるだけに過ぎず、やりこめばやり込むほど 不足感が募っていくだけだろう。

 開発者としてもそう思われるのは心外だ。既に気付いている者もいるかもしれないが、」




「現時点より、《Over World》Onlineの公式サービスを開始する!」



広場は、一瞬の静寂の後、「KITAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」や「おおおおおおおおおおお!」という歓声で埋め尽くされた。


そんな中、目の前にウィンドウが表示される。


『職業を選択してください』


【戦士】

前衛として戦闘を行うための技術、力を持つ。

【魔術師】

魔法攻撃を得意とし、多くの特殊技能を併せ持つ。

【術士】

他の職とは異なり、一癖二癖ある能力を扱う特殊術士。

【市民】

戦士たちのアフターケアを行う、職人見習い。


俺は迷わず【戦士】を選んだ、せっかくのゲームなんだから戦って楽しみたいと思う。


「もう戦闘を行ったものが知っているであろうAPとは、戦闘を有利に進めるための戦技スキルアーツを習 得するために必要なポイントだ。

 だがスキルを取得する方法はポイントではなく、スキルカードを手に入れ装備するか、特定条件を満 たすことで習得できることを忘れないでくれ。」


「これより、《Over World》Onlineを大いに、そして永遠に楽しんでくれ!」


黒いローブの男はそういうと、空間に溶けるように消えてしまった。

疾はその言葉に違和感を感じ取った。


『職業が開放されました。』

『スキルが開放されました。』

戦技スキルアーツが開放されました。』


『ログアウトが不可能になりました。』


「えっ!?」


一瞬の静寂だった、


「さ、さすがサプライズだ、ログアウト機能も無くなってやがる。」

一人の男が震える声でそう呟くと、またしても一瞬の静寂が広場を覆う。


「さすが運営だなぁ!」と笑い飛ばすものもいれば、


「なんで何も音沙汰が無えんだよぉ!?」と叫ぶ者もいた。


だが、いつまで待ってもログアウト機能が復活することは無かった。

そんな中で、疾は「ああそうか。」と、本当にログアウト不可能だということを改めて再認識した。


まず第一に、サプライズだとしても運営側には何の利益も無い。

      最悪、サービス停止などということに為りかねないからだ。


  第二に、運営が放った、「永遠に楽しんでくれ。」という言葉。

      これは俺たちにログアウト不能であると宣言しているようなものである。

      

「永遠」という言葉からも、「死にはしないのか・・・?」とも考えたが、最終的になにがどうあれ死なないということが大切だという考えに切り替わった。


辺りは、真実から顔を背けるような、多くの怒声などで喧騒が絶えない。


そこからの疾の行動は早かった。

宿が満杯になる前に三人部屋を取ると、サキとエンドをチャットで部屋に呼び出した。


宿の前で待っていると、エンドが泣きじゃくるサキを引きずるように連れて来た。


「うっう、ぐすっ、ひっく...、私たちこれからどうなっちゃうんですか?」

「・・・。」

その質問に答えることはできなかった。



部屋に通して、サキが落ち着くのを待ってから話し始める。


「単刀直入に聞く、お前らは攻略組と停滞組、どっちに付く?」

俺の質問に対しての答えは、


「俺は攻略組に付くつもりだ。」

「わ、私も攻略組に属したいと思っています。」

意外とも、予想通りともいいがたい返答だった。


「そうか、俺も攻略組に付こうと思ってる。ちょうどいいから情報交換でもしとくか。」

二人が頷くのを見て、話し始める。


「俺は、職業が戦士、Lvは5だ。」

そう言った途端に、二人は驚きの表情をする。


「? どうした?」

疑問を口にする。

「どうしたもこうしたもねえよ。なんでそんなにLv高ぇんだよ、間違いなくトップクラスだぞそりゃあ!」

サキも頷いている。


「俺も戦い続けてLv3だぞ!」

「わたしは2です...。」

目には目を、質問には質問だ。


「お前ら何と戦ってるんだよ?」

「何ってスライムだろ?」

「ゴブリンは?」

「ゴブリンなんて今のLvじゃ倒せないって、ってお前、まさかゴブリンと戦ってたのか?」

「そうだと言ったら?」


エンドから大きなため息が聞こえる。

サキに至っては口をぽっかりと開けたままだ。


「はぁ、ああそうだ、そうだったな、お前はそんなやつだよまったく、もういいわツッこむだけ疲れる。

 さっきの話に戻るが俺は戦士だ。」

「私は魔術師です。」

予想通りだ。


「まあほとんど情報も無いが、モブの装備は拾っとけ、ドロップ扱いになってる。ゴブリンから拾える。」

二人とも頷いている。


「他に何かあるか?今後考えられることでもいいぞ。」

すると、サキが口を開く。


「やはり職業の転職、Lv、サブ職業があると考えたほうが無難ですよね。」

「まあそうだな、そのうち分かると思うが、Lvアップとかグランドクエストクリアとかな。」

「グランドクエストってどんななんだ?っていうかここから出られるのか?」

その質問に対して全員が黙り込んだ。


「そんなこと考えるだけ無駄だ。もう休もう、明日のことはまた明日。」

そう言い残し、布団に入る。

横からも二人がそれぞれ布団に入る音が聞こえる。


俺は決意することとなる、妹たちを現実世界へ絶対に帰還させると。


そうして、終わりが始まった...


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


明朝


広場は宿に入れなかった人々の啜り泣きが響き渡っていた。


話し合いの末、疾はエンドとサキとは別行動ということになった。

二人から「ギルドに入ろう!」と誘われたが、「団体行動は学校だけで充分だ。」と言って断った。

「パーティーならいいぞ。」と言ったら、サキに

「いいです。私は実力で兄さんをギルドに引き入れます!」

俺が頭上に「?」を浮かべていると、


「私が兄さんに勝ったら、ギルドに入ってもらいます!」


頭痛を覚え、こめかみを押さえていると、その隣でエンドはニヤニヤと笑っていた。

そのとき俺は、「確信犯か。」そう思った。

(その後、エンドは一生忘れられないトラウマを植えつけられる事になる。)


その後、俺は状況の分からない死地へと赴き、サキとエンドは信頼できる仲間を探す。

彼らはそれぞれの道を歩み始める。








次話よりまあまあ期待してください。

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