剣士の証
頑張りました。
「いやぁ、最近はアイテムの消費が激しいな。」
「まぁ、あれだけ闘ってれば、ねぇ。」
彼らは死ぬことなく帰還していた。
そして、明日のために消費してしまったアイテムの補充をした帰りである。
「そう言えば、解放された移動技だっけ。あれはもう解除したの?」
「ああ、一応教えとくと【俊足】と【加速】だ。」
「へぇー、AGI特化が思わぬところで活躍したわね。でも、明日はどうやって攻略についていくつもり?」
「それは宿で話す、スキルの効果も知らせときたいが、転職しないといけない。また夜にいつもの宿で。」
そこで丁度転職所を見つけると、リナの「いいなぁ。」という声を聞きながら、小走りで入店する。
店の中は薄暗く、怪しく照らされていた。
そして中央にあったカウンターにローブを着たNPCがいた。
「やぁやぁいらっしゃい。転職かい?やっぱり市民かい?いや君の装備からだと戦士だね。いやいやこれは不躾なことを聞いたよ。それにしては速いねぇ、戦闘職の転職は君が始めてだ。よし、お姉さんサービスしちゃう!出血大サービスだよ!転職費用無料!あぁ、言っちゃった、言っちゃったよ、このこの~、君は幸運だぞ!」
ズビシッ!、という音が聞こえそうなほど、勢い良く右手の親指を立てた、声音と発言から女性であろうこのNPCの話振りはマシンガントークとしか言えないものだった。
「そ、それはどうも。」
俺は曖昧な答えを返すと、
「ごめんごめん、何時もの癖が出ちゃったよ~。でも転職費無料は本当だから~。」
そんなことをいいながらカウンターの下をゴソゴソと弄ると、一枚の羊皮紙を取り出した。
「はいは~い、それじゃあこの紙に手をかざして必要事項を入力したらまた見せてね~。それじゃあよろしく!」
そういうと彼女は横で寝始めてしまった。
疾は言われたとおり、羊皮紙に手をかざすとウィンドウが表示された。
名前、職業、Lv、主武器、それらを入力し終えると、新しいウィンドウが開かれた。
そこにあった選択は転職先だった。
『剣士
剣や鈍器といった武器を使う、近接戦闘型。
拳士
格闘技等を扱う、超近接格闘型。
銃士
弓や銃といった飛び道具を使う、遠距離戦闘型。』
俺は迷うことも無く剣士を選択するとウィンドウは閉じられた。
そこで彼女を起こして羊皮紙を渡すと、
「ほうほう、剣士ですか。それじゃあファナイルのところかな~。」
など、ぶつぶつと呟くこと約30秒、
「はいはいOKOK、それじゃあ騎士団長のファナイルさんとこ行ってこの紙にサインをもらったら受理するからもう一度持ってきてね~。騎士団長はクエストギルドにいると思うよ~。」
と、送り出された。
それと共にNPCも本当の、この世界の一人として生活してるんだ。と、しみじみと考えてしまった。
疾は現在、草原を駆けていた。
それもこれも、サインを貰う為には騎士団長に認めて貰わないといけない=クエスト、というウンザリする様な当たり前のことが起こったからだった。
そのクエストは与えられたボロボロの剣で森の中に現れたゴブリンを狩ることだった。
ゴブリンの集団は比較的早く見つかった。
楽な依頼である。だが戦闘は危険極まりないものとなった。
剣は今にも折れそう、ダメージは少ない。
そこで疾は、剣の耐久度を考えても一撃必殺を目指していた。
「フッ、フッ、ハッッ!」
かわして、かわして、攻撃。およそ2発で一体を葬ることが出来る。
剣の性能からしても賞賛されてもいい成果だ。
だがそれも4匹目までのことだった。
最後の5匹目に一発目を加えたところで、剣が折れてしまった。固有スキル【創造】のことを完全に忘れている疾は間髪居れず殴りかかった。
だがたいしたダメージを与えることも出来ず、ゴブリンが鉈を振りかぶる、瞬間、ゴブリンの首が吹き飛んだ。
「な、何!?」
驚き、見回すとそこにに居たのは、ファナイルだった。
「流石、筋がいい。さぁ紙を出せ。」
そういうとファナイルは手を差し出してくる。
「失敗じゃないのか?」
いぶかしみながらも聞いてみる。
「あぁ、あれは戦闘への意欲を見るものだからよっぽどのことが無い限り全員合格だよ。」
そしてサインを貰うと、いそいで街に戻りあのNPCの所へ行くと、
「じゅ~り~。」という間の抜けたような声を出しハンコを押してもらった。
『【剣士の証】を手に入れました。』
あたりはすっかり暗闇に染まっていたため急いで宿に戻った。
次はまた遅くなるかもです。
評価・感想、待ってます。