見逃し三振
はーい、どんどん行きますよ!
「な、なんでこんな所に居るんだ。」
そう不良が呟くと同時に、ウィザードが『ファイヤーボール』を疾目掛けて発動させた。
だがそれを軽々と避けた疾はしまった、と思った。
彼の斜線上には不良が居たのだ。
直後、『ファイヤーボール』は不良の腹に吸い込まれ、爆ぜた。
もともと鎧も砕け、HPが削られていたため、彼のHPは0となり「助けてくれ。」と悲痛な声を上げ光の粒子となり散った。
「け、ケニスンを、ケニスンをよくもぉぉぉぉぉ!あべしっ!?」
怒りに任せ、突っ込んでいくおっさんの横っ腹を蹴り飛ばすと、残りの3人に向かって指示を出す。
「おまえら3人でそこのゴブリン抑えとけ。こっちは先にウィザードを狩る。」
「わ、わかった。」
そういうと彼らはリーダーを取り囲み始めた、戦い方は分かっているようだ。
「リナ、俺たちも早めに終わらせるぞ!」
「分かった!」
二人は近くのウィザード一体ずつに向かった。
突っ込んでいく最中も『ファイヤーボール』を放ってきたため、一応太刀でガードをしたがかなりのダメージを受けてしまった。
だがそれでも接近することには成功し、攻撃を加えようとした瞬間、ウィザードは杖で地面を叩いた、すると俺の立っていた場所がだんだんと氷結していく。
不審に思った俺は、後退すると、次の瞬間、そこには氷の氷柱が突き立っていた。
追撃に入られる前に素早く回り込むと、『スラッシュ』から『ツインスラッシュ』を発動、ウィザードのHPを削ぎ落とした。
リナの方を確認すると、リナは氷柱の攻撃をまともに受けてしまったらしく、左足から血を流し、苦悶の表情を浮かべていた。
一瞬加勢にはいろうかなどと考えたが、、余計な情けは捨て、優先順位の高いリーダーの方に向き直った。
そちらはもともと3人いたPTだったがすでに一人になってしまっていた。
「大丈夫か!」
駆け寄って、声をかけると、
「もうだめだ、こんなのに勝てない。」
そしてリーダーの一撃を受け、彼は消滅してしまった。
「まずいな。」
どこからともなくそう呟いてしまった自分をごちるが、今の状況がまずいということに変わりは無い、リナと二人なら余裕があるが、一人では勝つことすらままならない。
リナ方に視線を向けるが、俺と視線が合うと胸の前で腕をクロスしxを掲げた。
彼女は足をおさえ、へたりこんでいた。
「加勢に行けない。」ということだ。
(こうなったらちょこまかと相手を惑わせながら戦わないといけないようだ。はぁ。)
脳内で溜息を吐くと、リーダーへ向き直る。
距離が離れていることを確認すると、地面に向けて『スライス』発動させる。
刃に抉られた地面からは、小石が飛び散り、砂塵を発生させる。
リーダーの鎧からキンキンと音を鳴らす。
それによって完全に疾を標的として、動き始める。砂塵を突っ切った後には既に疾は居なかった。だが、疾を狙うあまりもぞもぞと動く塊を見逃してしまった。
疾とゴブリンリーダーは均衡を保っていた。
疾は攻撃をしたら退がるヒット&アウェイを繰り返し、リーダーの鎧を所々砕いていたが、接近した瞬間に掠ったり直撃したりするカウンターによってポーションがほとんど底をついていた。
だが、またも回り込んで接近・攻撃した瞬間に背の鎧を破砕させた。
そして、すぐさま距離を取るとまたも『スライス』で砂塵を巻き上げる。今度はすぐに突っ込んできたリーダーだったが、砂塵の中を移動し自分の背中に回り込もうとする影を目敏く見つけ、振り返って刃を振り下ろす。
攻撃に直撃してしまった疾は吹き飛ばされ、砂塵の中から排出されてしまったが、痛みに耐え最後のポーションを飲み込むと立ち上がろうとした時には迫っていたリーダーの一撃に気付き、防御に間一髪成功したが尻餅をつき、ボロボロの剣を掲げたリーダーに見下ろされていた。
勝利を確信したリーダーはニヤニヤしていたが、剣を振り下ろそうとした瞬間に見せられた、敵の不敵な笑いと、理解は出来なかったが放たれた言葉を訝しげに見下ろしていたことだろう。
「後ろだよ、バーカ。」
疾が呟いたときに、後ろからも叫びが上げられた。
「『スラスト』!」
次には、リーダーの胸に突き立った槍と、脳内に響き渡るLvアップの音が響いていた。
「がっはっは、大勝大勝、がっはっは!」
最初に皮肉を言ってきたPTリーダーのギランは俺たちの横で大笑いしていた。
「アンタなぁ(ねぇ)!」
当の本人はそんなことはとうに忘れているようだった。
「それより、あいつら大丈夫なのか?最悪引き篭もり化だぞ。」
「大丈夫大丈夫、あいつらはそんなに弱くないわい。なにしろ俺の弟たちだからな。」
そういうと、また一層大きな笑い声を上げる。
(大丈夫、という確証は無いんだがな。まぁいいか。)
疾はと言えば半ば呆れている様だった。
結局、最後の一撃は疾の考え付いた奇策であった。
『スライス』で砂塵を巻き上げたときに後ろにいた、横っ腹を蹴り飛ばしたおっさんに近付き「止めを刺してくれ。」と、それだけ伝えるとすぐにその場を離れた。
動く塊に気付いていればゴブリンリーダーは狩られることも無かったわけだ。
そのあと「俺も死に戻りだなぁ!」と止める間もなく、高笑いをあげながら森に消えていった、ギランを見送るとLvによって手に入れたVPを振ると
「それじゃあ、俺たちも戻りますか。」
「肩貸しなさいよ。」
死に戻りをしないためにも帰る準備をしていた。
空は既に夕焼けに染まっていた。
システムメッセージ
『戦士職業Lvが10に到達しました。
転職所で戦士系派生職業への転職が開放されました。』
『AGIステータスが100に到達しました。
≪移動技≫が開放されました。』
書き終えられたら、次は8時か9時に投稿します。