第三章 きっかけ
第三章
歩いている。かなり疲れてきた。多分四時間以上は歩いていると思う。
今のところ周りには、村も町もない。川がさらさらと流れているだけだ。
だが、クォーター村に戻る気はない・・。
憎きタイタンをぶっ殺すために可憐の復讐に燃えているからだ。それに戻るのはまた四時間もかかる。
来た道を戻るくらいなら、危ない道を進んででも、先に進む覚悟だった。 それにしても、歩きながら思ったのは空が赤いのと、車がないだけで、他は何も日本と変わりがない。 そして気付いて驚いたのは、太陽がない!それに、こっちに来てから、20時間はたっているはずなのに夜がこない。
この世界には、朝も昼も夜もない。 それはそれで便利なことだ。 舗装されていない道を歩いていると、小さな町が見えてきた。 「疲れてきたし、腹も減ったなぁ・・少し休もう」
俺は足早に町に向かっていった。
町に着いた。あまり広くないし、人も少ない。
だがそんな事は関係なかった。とりあえず飯の食べれそうなところを見つけるために、歩いてみた。
すると、宿屋みたいな建物があった。建物はぼろいが、中からいい匂いがした。さっそく中に入った。
中に入ると、思ったとおり狭かった。カウンター席が四つあり、テーブルが二つあるだけだった。二階が寝室みたいだった。
とりあえず、この店で一番安い物を頼んだ。
五分くらいたって、おじさんが焼き魚を二匹持ってきた。
「サービスだ。金は一匹分でいいよ。」
恐い顔してるのに優しかった。おじさんの顔が今でも忘れられない。
がつがつと、魚に食らい付いていると、女性の悲鳴が聞こえた。まったく気にせずにいると、店のドアが蹴り破られた!大柄の男二人が、女性を人質に金貨を出せと要求してきた。 おじさんが布袋に、30枚くらい金貨をつめて、男に渡すと男たちは、女性を連れて出ていこうとした。
俺がちらっと女性をみると凄い顔で睨んでいた。
「あなた最低よっ!助けようともしないで。臆病者!」
的な感じで。
大男達が出ていって、おじさんが壊れたドアを直していた。
俺はお茶を飲み終えると財布から金貨二枚を出し、カウンターに置いた。
「おい兄ちゃん、金貨は一枚でいいよ。それとも募金でもしてくれるのか?」
口は笑っていたが、目は笑っていなかった。
「いや、また後で取りにくるよ。」
と言って店から出た。
町の入り口に走って向かった。結構足は速いほうだから、すぐに着いた。
入り口辺りに、大男達がげらげら笑いながら、金貨を数えていた。その横に、女性が手足を結ばれて、口を塞がれて座らされていた。今にも泣きそうだった。
歩いて大男達に近づいていった。
話が変わるが、今までバイトを、色々してきたが、一番稼げた仕事が、片付け屋だった。
大犯罪をしたにも関わらず、悠々と生きている奴を殺したり、ヤクザの仲間になり、その組みの組長を暗殺したりと、ろくでもない仕事ばかりだった。だが、成功すれば高い報酬をもらえた。それに力もつけることが出来た。
大男達に話し掛けた。
「お兄さん方、どうかそのお金を返してもらえませんかね?ついでにあっちの人質も。」
大男達が大笑いしながら、
「なっはっはっは。チビが!痛い目みないうちにさっさと消えなぁ。」
と俺を見下しながら言った。
俺は、はぁっ〜とため息を吐いて、近くにいたお婆さんに、
「おばあさん、医者を呼んだほうがいいよ。今から怪我人が出るからねえ。」と言った。
大男の一人が、
「怪我人なんかでやしないぜ!それよりな、ねずみを連れてこい。死体を処分してくれるぜ!」
大男がナイフを抜きながらドスのきいた低い声で言った。
俺も剣を抜き
「じゃあ、百匹は必要だな。こんな大きな死体処分するのは大変だろう・・。」
大男のもう一人が、
「チビがあぁぁ!ほざくんじゃねえぇ!!」
叫びながら突っ込んできた。
こんな奴はただ力が有り余っているバカだ。
ひょいっと横に素早く避けると、大男はそのまま、家の壁に激突した。
起き上がって、また突進してきたら厄介なので、両足のアキレス腱を切った。 大柄の体には似合わない甲高い叫び声があがった。 大男はそのまま気絶した。もう一人の方を見ると、女性の首元にナイフを当てて叫んできた。
「こいつを助けたければ、その場を動かずに剣を前に投げ捨てろ!」
俺は言われたとおりにして、手を上にあげた。
大男が、興味深そうに剣を眺め
「なかなか高そうな剣だ。売れば金になる。」
男が、剣を拾おうとしゃがみこんだ瞬間に、猛ダッシュから膝を突き出し男の顔面にクリーンヒットさせた。大男がのけぞり、女性の首元のナイフが手からこぼれ落ちた。
後は楽だ。肩に剣を一刺しすれば言うことを聞く。 俺は、剣を拾い上げ、男のでかい肩に、思いっきり剣を斬り下げた。
肩から真っ赤な血が溢れ出てきた。大男は苦痛の顔を見せ、肩に手を当てていた。
剣を鞘に戻し、男の前に立ち、余裕を見せながら、
「おい、あのもう一人の男を連れてさっさと帰れ!」
睨み付けながら見下すように吐き捨てた。
すると男は、立ち上がりもう一人の方に向かって歩きだした。
「観念したか・・。」っと、ふぅっと息を吐き、倒れている女性の方に向いて走りだした。
「ガチャッ・・」
っと、後ろから金属音が鳴った。 ・・まさか。と思い、後ろを見ると、男がリヴォルバー拳銃を構えていた。 とっさに伏せようとしたが、後ろには女性がいる。 男が引き金を引いた!すさまじい轟音が鳴り響いた!っと思うと、右手が後ろに跳ね、真っ赤な鮮血がたらーっと垂れ流れてきた。
痛がっている暇はない。次は、確実に頭を狙ってくる!そう判断し、左手で剣を逆手に抜き、忍者刀みたいな構えで、相手に向かって突進した。
人を殺すのは慣れていた。だが殺したくはない。だが、殺さなければこっちが殺られる。
葛藤しながら、大男の胸に黒い剣を突き刺した。
黒い剣に、赤い血がつーっと流れてきた。そのままの態勢で、俺は一歩も動かなかった。
大男の体から力が抜けた・・。
俺は、剣を体から抜き取り、 いつのまにか気が付いていたもう一人の大男は俺の事を、まるで鬼を見るかのように怯えていた。
俺は、剣を大男の目の前に突き出して、
「おい!こいつを連れて今すぐ消えろ!」
大男がへこへこと、這うように町から逃げていった後、女性を解放した。
「大丈夫かよ?怪我はないか?」
と優しく言った。腕がかなり痛んだし、横腹の痛みが再発した。が、ぐっと我慢した。
女性は、安堵の溜め息をつき、ゆっくりと喋りだした。「ありがとう、たすけてくれて・・。最初は助けてくれないと思った。睨んでごめんなさい・・。」
俺は、あははっと、笑いながら
「あそこで喧嘩を売ったら店がぐちゃぐちゃだよ!もう大丈夫だから家に帰りなよ。」
と言った。
金貨の入った布袋を持って歩きだした。すると女性が弱々しく
「あの・・、私の家ここじゃ無いんです。ファースト城下町にあるんです。」
と言った。
じゃあ戻ればいいじゃんっ!と言いそうになったが、また襲われるのが嫌なのだろう。連れていって欲しいみたいだ。
まぁ俺もエミルを探しに行くからいいが・・・
「わかったよ。俺もファースト城に用事があるからさ。」
俺がそう言うと、女性は嬉しそうに、
「ありがとう!じゃあ早く行きましょっ!」
と、言ってきた。
「いや、まだこの町に用があるからここで待っててくれ。」
と言って、さっきの宿屋に戻った。
宿屋に着くと、おじさんが外に立っていた。
「よう、無事だったかい?その袋を見ると勝ったようだな!」
嬉しそうに言ってきた。俺は袋を渡した。 「じゃあ俺もう行くな。魚うまかったよ。」
おじさんに背を向けて歩きだした。するとおじさんが袋から、金貨を鷲掴みして、
「ほらよ。餞別だ。持っていきな!」
と言って、多分十枚はくれた。
振り返って、金貨を受け取った。ありがとう、と感謝の気持ちを伝えた。
おじさんがポケットから金貨一枚をだし
「預かりもんだ。しっかりがんばれよ!」
と言って、俺のポケットに突っ込んだ。
おじさんと別れて、町の入り口に行くと、女性が待っていた。
「遅いわよ。早く行きましょ。」
助けてあげたことを忘れたのか?と、聞きたかった!女はいつも自己中だ!と改めて思った。
この町から、ファースト城までは、すぐそこだ。 もう目の前に見えるが、山の上にあった。しかし、軽く舗装されているので、なんなく登れそうだった。
登りながら女性に聞いた。
「あんた、名前は?」
と。すると女性は、なにも言わなかった。
少しして女性が同じ事を聞いてきた。女は自己中だ!と、改めて思った。 「俺は、薫だ。」
と言った。すると何故か笑われた。イラっとしたが耐えた! 女性が、変な名前!と、言った。俺は結構、自分の名前が気に入っていた。
そんな話をしていると、いつの間にか着いていた。 とても賑わっている。まるで祭りのようだ。
ところどころで、城の兵士みたいな人たちが、慌ただしく駆け回っていた。
さっそく、人混みに入ろうして、後ろを見ると、さっきまで居た女性がいない。ホントに女は自己中だ!それに恩知らずだ!と改めて思った。
あんな奴はほっといて、エミルの捜索を開始することにした。
ぱっと、人混みの中に目をやると、可憐が手招きをして、俺を呼んでいる姿が見えた。
まさかと思い、まばたきをしてみたが、そこには誰も居なかった・・・。
横腹の傷がズキズキと痛み出してきた。
俺は・・痛みをこらえて、エミルを探し始めた。
可憐の事を・・思いだしながら・・・。
今回のタイトル名の意味は、訳分からんと思うでしょうが、いずれ分かります。ではまた・・・