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生きてるか。

作者: 香月由良
掲載日:2026/06/29

佐和子は希死念慮が止まらない。

ストレスがかかった時に「死にたい」スイッチが入ってしまう。

それを信頼出来る人に話しても、「人は誰しもそういう業のようなものを背負っている」と返されて精神的に限界だった佐和子は絶望していた。

健康的に見えるあの子も、笑いながら過ごすあの子も、皆「死にたい気持ちを背負っているのなら希望はどこにあるんだ」と。

しかし、「生きたい」と思うことすらしない楽観主義者とは、仲間になれない気がしていた。

辛さを共有できる「仲間」が佐和子には必要だった。


そんな佐和子は大学時代の元彼によく相談をしていた。

また元彼もまた、精神的に繊細な人なので、佐和子の死にたがりをよく理解して救ってくれた。


今回も佐和子の希死念慮が蠢いた。

昔の佐和子ならカッターでリストカットしていたが、傷口が残ると人生が更にややこしくなることを高校時代に学んだため、今自分を傷つける方法はODくらいだ。

ODのせいなのか老化なのかストレスなのかは曖昧にされたが、前頭葉の萎縮も指摘されていた。

それでも佐和子は佐和子を大切にする手段がわからない。

専門医に尋ねても、佐和子のこころに響く回答は貰えず、頓服の薬を強いものへ変えようとなった。


そんな中で襲ってくる希死念慮に耐えきれず、元彼に相談した。

死にたい気持ち、傷つけたい気持ち、未来への絶望、少しだけ残った生きたい枯渇。

全部を洗いざらい話した。

頓服を飲んで数日過ごすと大きな波は過ぎ去り、趣味の時間や猫との戯れに癒され、死にたい欲求が徐々に縮まっていく。

それでも仕事にはまともにいけず、体調を崩しているというていで自宅療養をしている。

職場の人間関係も悪いわけではないけれど、笑顔で人と接することが出来なくなっていた。


そんな佐和子に定期的に元彼からLINEが届く。

「大丈夫か?」

「生きてるか?」

ひとつひとつは短文だが、コンスタントに支えがくるのは精神安定に有難かった。

「うん。」

「少しだけ死にたいと思っている。」

信頼できるが故に正直に告白する。

彼の回答はこうだった。


「生きろよ。」


忘れていた生きたい気持ちを思い出した。

自然が教えてくれた、命の尊さを。

朝の爽やかな風、青空、森林の香り。

また明日からお散歩を始めてみようと決意する。

それもこれもこの元彼から習ったことだった。


ありがとう、救ってくれた全ての仲間たちよ。

立場や間柄などどうでもいいのだ。

ひとりからでも必要とされるなら生きてみたかった。

そうすると「生きていて欲しい」という声が大きくなったような気がした。

些細なことでも人は救われる。


ありがとう、今日も一歩ずつ、歩んでいくよ。

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