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五
北原瑞希の無意識の世界には、〝乙姫瑠璃華〟が棲んでいた。乙姫は瑞希の守護霊であり、瑞希の前世である。
乙姫は、巨万の富を築いたその晩年、キリスト教に興味を持ち、さまざまな慈善活動に精を出した。
彼女の息子──北原章成は、無能な経営者であった。乙姫の財産を元にして始めた消費者金融会社──〝北原ファイナンス〟の経営は厳しい。章成は乙姫から受け継いだ財産を、すでに大幅に減らしていた。
そんな章成が、乙姫の生まれ変わりである瑞希を、徹底的に過保護に育てた。母親の文香も、夫の子育て方針に従った。章成は経営者として無能であったばかりでなく、我が子の育て方に関しても無能であった。
子供の頃から、瑞希の自立の芽は、両親からことごとく潰された。両親は瑞希を徹底的に甘やかし、瑞希を一人では何もできないような弱い人間にした。
瑞希は今、保護者がいないと何もできないような、弱い人間に成り下がっていた──




