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一八

 午後になってから、来生と瑞希は、ホームレスたちの公園に行った。そして、そこでビスケットを配り、声がけをした。

 小金井はダンボールハウスの中で、動けなくなっていた。

「どうしたんですか?」

 来生はそう尋ねる。

「いやー、腰やっちゃった……」

 小金井はそう言って、呻く。

 どうやら夜中に、他のホームレスたち一緒に、缶集めをしたそうなのである。そこで小金井は新入りということで、ことさらに、こき使われた。大量の缶の持ち運びを命じられ、それを持って歩いていて、腰を痛めてしまったそうだ。

 それでもう歩けなくなってしまい、新庄の肩を借り、なんとか公園まで戻ってきたとのこと。

「大丈夫け?」

 新庄時貞は心配そうに、そう尋ねたそうである。

「いやー申し訳ない……。全然役に立てず、腰をいわしてしまって。面目ない。あんたの顔も潰したな。すまんことした……」

 小金井は、新庄にそう謝った。

 新庄は、気の毒そうな顔をした。

「いやいや、こっちこそ、すまんかった。あんた、若えもんたちから、ずいぶんと虐められたな……。まあ新入りじゃけえ、最初の二三日は虐められるじゃろうとは思ったけど、腰いわすまでやられたんじゃ、たまらんわな。すまんかった……。まあこれにこりず、腰なおったら、また一緒にやろうや……」

 そう言って、新庄は去ったそうである。

 動けなくなった小金井は、絶望的な顔をしていた。

 寝たきりになってトイレにも行けず、糞尿まみれになって餓死したホームレスを今まで何人も見てきた小金井である。その順番が、いきなり自分にまわってきた。

 そう思い、彼は絶望していた。

 そんな小金井に追い討ちをかけるように、来生は無神経に、生活保護申請が難しそうなことを告げた。

「ああ、そうかね。まあ、仕方ないね……」

 小金井は、諦めきっていた。

 生活保護なんか貰えないまま死んでいったホームレスを、たくさん見てきている。はなっから、自分だけが貰えるなんて思ってはいない。貰えたら儲けものくらいの軽い感じで思っていただけである。

 ダンボールハウスの中に入ったきた瑞希のスカートの中を、やはり小金井は覗いていた。

 しかしその目には力がない。その口元には、絶望しきった薄ら笑いが浮かんでいた。

 それを見てると、瑞希は可哀想で堪らなくなってしまう。

「小金井さん、元気出してください。早く腰を治して、また缶集め、がんばりましょう……」

 瑞希はにじりより、小金井にそう声をかけた。

 パンチラ美人が接近してきたので、小金井はドキリとする。昨日から、ずっと瑞希のパンチラが頭から離れない。年甲斐もなく想像の中で、何度も瑞希を穢していた。

 しかし一度腰を痛めてしまうと、もうしばらくは動けない。動けないと、もうゴミを漁りに行くこともできない。

 つまり、もう食えない。

 それを思うと小金井は、もうやけくそな気分になってしまった。

「パパパ、パンチラさん! もっと……もっとパンツみせてくださーい!」

 小金井はいきなり、そう奇声をあげた。

 そして近くまでにじりよってきた瑞希のスカートの中に、いきなり頭を突っ込んだ。

 腰が痛くて動けないくせに、性欲のパワーで動いたのである。

「あっ! ちょっ、ちょっとおっ!」

「こ、こら! 小金井さん、何してんですか!」

 来生は慌てて、小金井を止めた。

 小金井は、瑞希のスカートの中で純白ショーツに、ぐいぐいと顔面を押しつけた。そして瑞希のショーツが、小金井のヨダレで濡らされた。

「ちょっと、北原さん、逃げて! 早く逃げて‼︎」

 瑞希は、来生からそう促され、泡食ってダンボールハウスから逃げた。

(うそ、私……襲われた?)

 瑞希は、大ショックを受けてしまった。

 騒ぎを聞きつけ、ホームレスが数名が、様子を見にきた。

「あ、大丈夫です。なんでもありませんから……」

 瑞希は平気そうに、そう言った。そういう瑞希の目から、じんわり涙が溢れてくる。

(うう……小金井さん、どうしてそういうことするの……?)

 小金井のしたことを思うと、悲しくなる。

(でも、嫌なことがあったら……)

 小金井は一時的に、気がおかしくなってしまっただけである。仕事がうまくいかなくて、腰も痛めてしまって、それで一時的に気が動転して、ああいうことをしてしまった。

(だから、許してあげないと……)

 小金井をしたことを、大目に見てあげようとする。

 しかし涙は止まらない。

 瑞希は公衆トイレに行って、涙を拭いた。そして鏡に向かって、にっこり笑う。

(はあーっ……)

 引き攣った笑顔が、大きな溜め息をついた。


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