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第七話 一緒に帰りましょう?

 あー。昼は散々だった。


 誤解されないようになるべく凛とは距離を置きたいのに、これじゃあまた噂になってしまう。

 実際席に戻ったとき、田崎に揶揄(からか)われたのだ。

 どうやら窓の外から俺たちを見ていたらしい。

「お熱いねー御両人。ヒューヒュー」とか言われてキレそうになってしまった。

 それから俺は、これから凛とは適切な距離を保たんとな! と決意を固めたのだった。


 だが、放課後また凛がやらかした。


 どうやらかしたのかと言うと、授業が終わり田崎と帰ろうとした俺のところに、凛がトコトコ近付いて来たのだ。


「公君。一緒に帰りましょう?」


 また恋人同士みたいなこと言ってやがる。

 俺は両手でバツを作り、ブンブンと首を横に振った。


「嫌だよ。田崎とメシ食って帰るんだよ」

「えー……」


 しょんぼりしている凛を見て、隣の田崎が慌てた。


「長屋ぁ!!」

「!?」


 田崎は大声で叫ぶと俺の頭をバシンと叩き、説教を始めた。


「お前はなんでそういうこと言うの!? せっかく桃山さんが帰ろうって言ってるんだぞ!? 一緒に帰ってやれよ!!」

「だって、大食いチャレンジしようって約束したじゃん」


 今日は田崎とラーメン屋に行き、『特盛ラーメン十五分で完食出来たら無料(タダ)!』に挑戦しようと思っていたのだ。

 田崎は呆れたようにため息をつくと、もう一度俺の頭を叩いた。


「そんなもんいつでも出来るだろ!? それより恋人を優先してやれよ!」

「り、凛は恋人じゃねーって言ってるだろ!」

「嘘つけー」


 俺たちのやり取りを聞いていた凛が慌てた。


「ごめんなさい。公君先約があったのですね? では、そちらを優先してください」


 凛は田崎の方に体を向けると、ペコリと頭を下げた。


「田崎君……でしたよね? 公君のこと宜しくお願いします」

「だから! お前は俺の母ちゃんかよ!?」


 田崎は凛に頭を下げられて大いに照れている。


「いやいや……。こちらこそ宜しくお願いします」

「お前も返答がおかしいんだよっ」


 なんだこの息子の友達に挨拶する母親みたいなやり取りは!?

 何度も突っ込んでるが、凛は俺の母親じゃねーんだよ!

 頭を抱えそうになっていたら、俺たちの話を聞いていた女子が近付いてきた。


「凛ちゃん。だったら私と一緒に帰ろー」


 あ。この子は確か松野(まつの)って言うんだよな。

 大人しい女の子で、密かに男子から人気がある。

 そうかぁ。凛、もう一緒に帰るくらい仲の良い友達が出来たんだな。良かった良かった。

 俺が微笑ましい気持ちになっていたら、凛が嬉しそうにうなずいた。


「うん、ありがとう。帰ろ。――じゃあ公君。明日は一緒に帰ろうね?」

「やだ」


 俺が即答すると、田崎に背中をバシンっと叩かれた。

 ギロリと睨まれて怯んでしまう。それから田崎はニコニコ笑いながら凛を見た。


「長屋、明日は暇だから大丈夫だよ」

「なんでお前が俺のスケジュール知ってんだよ」

「お前の一週間分の予定を把握しとるわっ」

「なんでだよ!?」


 凛と松野は俺たちのやり取りにクスクスと笑った。


「じゃあ、また明日ねー」

「うん。松野さん、桃山さん。またねー」


 田崎はデレデレ鼻の下を伸ばしながら二人が帰って行くのを見守った。


 二人が見えなくなると、田崎は『可愛いぃぃ!』と叫んだ。


「松野さんも桃山さんも可愛い! 美少女二人が揃うと破壊力が凄いよな!」

「まあな」

「松野さん。友達出来て良かったなぁ! いつも一人でいるから心配だったんだよ!」


 ふーん。田崎はどちらかと言うと、凛より松野のことが気になっているようだ。

 俺はニヤニヤ笑いながら、ちょんちょん田崎をつつく。


「ははーん。さてはお前、松野のこと……」

「な、なんだよ! 別に俺はっ……!」


 真っ赤になる田崎を見て、図星だと思った。

 なるほど。田崎は松野みたいなタイプが好きなんだな。松野可愛いもんな。良い趣味してんじゃん。

 俺が一人納得していたら、田崎がぶっきらぼうに言った。

 

「それよりラーメン食い行こうぜ」


 必死に話を逸らそうとしているのが見え見えで笑いそうになってしまったが、俺も色恋話より食に興味があったのでうなずいた。


「そうだな。行こう」


 こうして俺たちはラーメン屋に向かい、大食いチャレンジを失敗してガッカリしながら帰路についたのだった。

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