第六話 お前は俺の母ちゃんか!?
下駄箱で靴を履き替えると、花壇の近くのベンチに向かった。
空気は冷たいが日差しは暖かい。外で食うには絶好の気候だな。
そんなことを思いながら辺りを見回す。
俺たちの他にも外で食べてる奴らは結構いる。
そいつら(主に男)は凛を見てポーッと鼻の下を伸ばしている。
凛、可愛いもんな。見惚れる気持ちも分かるぜ。
別に俺がモテている訳でもないのに、なんだか得意げな気持ちになった。
身内(別に血の繋がりはないが、凛は俺にとって家族みたいなものなのだ)がモテていると、嬉しくなるものなのだ。
二人でベンチに座ると、凛は嬉々として弁当の蓋をパカリと空けた。
「さぁ、召し上がれ」
「おう。いただきます!」
俺はおにぎりを鷲掴みにし、大きな口を開けて食べ始めた。
具はツナマヨだ。たっぷり入っていて美味い!
「美味い!」
ガキのようにガツガツ食っている俺を見て、凛がクスクスと笑った。
「そんなに急いで食べなくてもいいのに」
「腹減ってんだよ」
そんな言い訳をしつつ、二個目のおにぎりを咀嚼する。
これはタケノコの混ぜごはんだ。シャキシャキした歯応えが美味い。手が込んでるなーと感心していたら、凛のこちらに手を伸ばした。
なんだ? とギョッとしたら、俺の頬についていた米粒をつまみあげた。
「子供みたい」
クスクス笑われて、さすがの俺も顔が熱くなった。
クッ……! おにぎりが美味すぎてはしゃぎすぎた。一生の不覚だぜ。
恥ずかしさを誤魔化すためゴシゴシと頬を拭っていたら、凛がパキンと割り箸を割り、卵焼きを挟んだ。
それから俺の口元に近付ける。
「あーん」
「!」
ふ、ふざけるな! お前は俺の母ちゃんか!?
こんなことされたのは小学校低学年以来だ。
俺は恥ずかしくて叫び出しそうになるのをこらえ、冷静に言った。
「やめろよ」
そう言ってもう一膳の割り箸を割ると、自分で卵焼きを掴み、口の中に放り込んだ。
「あー。食べさせたかったのに」
「マ、マジで勘弁してくれ……」
もしかしたら凛は、俺のことをガキだと思っているのかもしれない。
だって前世では俺、凛より年下だったからな。
でも、今世では同い年なのだ。
対等に扱ってもらわなきゃ困る。
俺は憤慨しながら凛に釘を刺す。
「凛。言っとくけどなぁ、俺はお前と同じ年なんだぜ? 前世とは違うんだ。ガキ扱いされちゃあ困る」
「分かってますよぉ」
そんなことを言いつつ凛はクスクス笑いをやめなかったので、俺はかなりムッとした。
仕返ししてやろうと思い、唐揚げを割り箸でつまみ凛の口元にもっていった。
「ほら、あーん」
やめろよと怒ると思ったが、凛は予想外の反応をした。
真っ赤になってモジモジしつつ、パクリと唐揚げを食べたのだ。
こ、この野郎! 食べやがった。
これじゃあ仲良く弁当を食べさせあうバカップルみたいじゃねーか!
「食うなよ! 恥ずかしいだろ!?」
「だって公君がやったんじゃないですか!」
「まさか食うとは思わなかったんだよ!」
「公君が食べさせてくれるなら、私は絶対に拒めません!」
「拒めよ!」
俺たちは恥ずかしくてなってきて、ぎゃあぎゃあ騒いだ。
しばらく言い合いをしていたら、視線を感じてハッとした。
周りを見回すと、昼メシを食っていた生徒たちが手を止めてニコニコ俺たちを眺めていた。
うわぁ……。なんだこの微笑ましい者を見るような視線は……。
滅茶苦茶恥ずかしい……。
俺は居た堪れなくなり、急いで弁当を完食した。
それから凛の腕を引っ張り、そそくさと教室に戻ったのだった。




