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第四話 呼び方とか色々決めよう

 なんか変なことになってしまったが、とりあえず明日からの学校生活について話し合いたい。

 俺はおりんを引きはがすと、再びベンチに座らせた。


「それじゃあ、次に話を進める」

「はいっ」


 まず、俺たちはどこで知り合ったかについてだ。

 前世で知り合ったなんて言ったら引かれそうなので、適当に理由を考える。

 幼稚園が一緒だったとかでいいんじゃないかと話すと、おりんも賛成してくれた。


「そうですね。そうしましょう」

「よし、次! あと呼び方を変えよう。俺はお前のこと桃山って呼ぶよ」


 これに対しておりんは不満だったようで、ぷくーっと頬を膨らませた。


「嫌です! おりんって呼んでください!」

「なんで?」

「若様に名前で呼ばれるのが好きなのです!」

「……」


 でも、おりんじゃ変だろう……? 時代劇じゃあるまいし……。

 ちょっと悩んだ末に、俺は妥協案を思い付いた。


「……じゃあ、(りん)って呼ぶよ。それならいいだろう?」

「!」


 凛の顔がリンゴみたいに赤くなった。

 余程気に入ったのか、両手で顔を隠しながらキャーキャーはしゃいでいる。


「なんか嬉しいですー! そうですね、これからは凛って呼んでください」


 なにが嬉しいのかさっぱり分からないが、とりあえず話を進める。


「よし。じゃあ、凛。俺のことを若様と呼ぶのも禁止。変に思われるからな。俺のことは長屋でも(こう)でもなんでもいいから好きに呼べ」

「じゃ……じゃあ、公様って呼びます」

「様はいらん」

「じゃあ……公君……」


 公君なんて子供のとき母親に呼ばれた以来だな。

 なんかむず痒いが、公様よりかはマシだ。

 俺はぽりぽり頬を掻きながらうなずく。


「お、おう。それでいい」


 凛がおずおずと俺の名前を呼ぶ。


「公君……」

「なんだよ」

「公君、公君、公君――」

「連呼するなよ」


 凛がまたキャーキャーはしゃぎだす。

 なんではしゃぐんだよ。意味わかんねーな。

 凛の言動に疑問を持ちつつ、俺は更に話を進めた。

 ぶっちゃけ、これが一番重要なのだ。


「あと、クラスの連中が俺たちのことを恋人同士だと思ってるみたいだから、そこは明日ちゃんと俺が訂正しておく」

「こ、公君と私が恋人同士……!?」

「嫌だろう?」


 凛は真っ赤になりながらモジモジと体を揺らした。


「い、嫌じゃありません……。それよりも、なんて嬉しい――じゃなくて(おそ)れ多い勘違いを……。で、でも公君が嫌じゃないなら私――。あ! でも私公君の従者になったんだった! じゃあ、従者兼恋人なんてどうでしょう? それじゃあ図々しいかしら? でも、でも――!」


 なにを一人でブツブツ言ってるんだ?

 凛の意見を待っていたら日が暮れそうなので、ここは俺がまとめよう。


「よし! じゃあ明日みんなに説明しておく。凛とは幼稚園のときに出会って、高校で久しぶりに再会した。それと、俺たちは別に付き合っていないってな!」

「……」


 俺の言葉に、凛はなぜだかシュンとした。


「分かりました……。そうですよね。公君みたいな素敵な男の子が私みたいな女と噂になったら迷惑ですよね……。公君の気持ちも考えず、盛り上がってごめんなさい……」

「なに言ってんだ? 凛が俺みたいな凡人と噂になったら可哀想だから、訂正するんだぜ?」

「え?」


 俺はニカリと笑った。


「だって、凛ってすげー可愛いからさっ」

「!!」


 凛の顔が更に赤くなった。

 なに照れてんだ?

 可愛いって言われ慣れてないのかな? すげー美少女だと昔から思ってたんだけどな。


 そんなことを思いながら、スマホの時間を確認した。

 もう夕方近くになっていた。辺りも薄暗い。

 そろそろ帰った方がいいな。

 俺はベンチから立ち上がると凛に手を差し伸べた。


「じゃあ帰ろうぜ。暗くなってきたし、送ってくよ。家どこ?」

「わわわ……! 公君に送ってもらうなんて申し訳なくて出来ません! 一人で帰ります!」

「なに言ってんだよ。夜道を女の子一人で帰らせたら危ないだろ?」


 凛の目がキラキラと輝き出した。

 

「……カッコいい……」

「え?」

「い、いえ! なんでもありません。では、お言葉に甘えさせていただきます!」


 そう言って俺の手を取った。

 それから俺たちは夜道を手を繋ぎながら帰った。

 前世でもよく手を繋いで歩いてたな、と懐かしく思っていたら、凛がぽそりと口を開いた。


「公君の手……大きいです」

「は?」

「若様の手は、小さくて可愛かったから……」

「そりゃあデカくもなるよ。俺もう十六歳だぜ?」

「……」


 凛が黙り込んだので顔を覗き込むと、真っ赤になっていた。

 なんでいちいち赤面すんだろう?

 不思議に思いつつ、空を見上げた。


 冬の空は空気が澄んでいて、いつもより星が輝いて見えた。

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