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第三話 なにを言い出すんだよ!?

 放課後になったのでおりんの席に向かったら、またクラスの連中が騒ぎ出した。


「長屋ー。上手くやれよぉー」


 本当、こいつらガキだよ。

「はいはい」と適当にあしらいつつ、おりんに話しかけた。


「おりん。帰ろうぜ」


 おりんはガタンと席を立ち、満遍の笑みを浮かべる。


「はいっ! 若様!」

 

 俺はおりんの腕を掴み、「早く行くぞ」と引っ張った。

 教室を出る瞬間、「長屋君って男らしい。キャー!」と女子がはしゃぎだした。

 なにが男らしいんだ? と考えて腕を掴んだことだと気付く。

 あーあ。しばらく俺とおりんの話題で盛り上がるだろうな。俺はどうでもいい。でも、転校初日で俺なんかと噂になるおりんが可哀想だ。


 おりんのためにもここでしっかり話し合いをして、明日クラスの誤解を解かなきゃなと決心する俺なのであった。


※※※※


 どこで話をしようか迷ったが、ファーストフード店ではうるさいかなと思って近くの公園にした。

 コンビニで温かい飲み物を買ってからベンチに座ると、待ちきれなかったのかおりんが抱き付いてきた。


「若様ーーー。やっと二人きりになれましたねー」

「そ、そうだな」


 抱き付くなって言ってるのに……。まぁ、二人きりだしいいか。

 

 それから色々な話をした。

 まず、前世で俺が死んだあと、おりんは幸せに生きたのか? 答えはノーだ。あのあと戦が始まり、おりんも命を落としたらしい。


「気の毒だったなぁ……」

「まぁ、戦国の世ですからね」


 そう言っておりんはあっけらかんと笑った。


「それよりも私は今を楽しみたいです! だって、折角若様に会えたんですもの!」

「……。うん、そうだな。俺も今を精一杯生きたい」


 前世は前世なのだ。それよりも、今世をどう生き抜いていくかの方が重要だ。


「おりんは、今幸せか?」

「はい! 優しい両親に育てられ、何不自由なく過ごしています。若様は?」

「俺も幸せだ」

「そうですか! それなら良かったー!」


 今世はお互い幸せに暮らしていることが知れて、俺たちはホッと胸を撫で下ろした。

 それと、もう一つ聞きたいことがある。


「おりんはなぜ前世の記憶があるんだ?」

「十歳のとき階段から落ちたんです。その衝撃でいきなり前世のことを思い出して、ビックリしました」

「あはは。俺も全く同じだよ」

「えー? そうだったんですかぁ?」


 おりんも俺も階段から落ちた衝撃で記憶を取り戻したのか。なんか運命的なものを感じるな。

 俺がクスクス笑っていたら、おりんが肩にもたれかかってきた。


「もう絶対会えないって思ってたのに、また会えた。これって奇跡ですよね?」

「そうだな」

「神様が、私の願いを叶えてくれたと思うんです。だって私……おりんだったとき死ぬ直前まで若様のことを考えていたから……」

「そっか……。ありがとうな」


 おりんは顔を上げると、じいっと俺の顔を見つめた。


「若様……。若様が亡くなる直前、私が言った言葉を覚えていますか?」

「確かおりんは、生まれ変わったらまた俺の従者になるって言ってたよな?」

「はいっ」

「そんな元気よく返事するなよ。従者になんてならなくていい」


 俺が苦笑すると、おりんはフルフルと首を横に振り、ベンチから降りた。

 それから俺の前でひざまずき、深く頭を下げた。


「いいえ若様! 私は今世でもあなた様の従者になります!」


 遊具で子供を遊ばせていたママさんや散歩をしていたご老人がギョッとしている。

 俺は大慌てで、おりんを立たせようとした。


「や、やめろ。みんな見てるぞ」

「嫌です! 若様が私を従者にしてくれるまで一歩も動きません!」


 このままでは注目の的だ。

 いや、もしかしたらイジメだと思われるかも……!

 だって変じゃないか。公園のベンチで女子高生がひざまずいてるんだぞ!? 俺が無理矢理させてると思われるかもしれない……!

 俺はやけくそになって叫んだ。


「分かった……! 分かったから立て! 周りの視線が痛い!」


 おりんの表情がみるみる明るくなっていった。

 パッと立ち上がり、ギュウっと俺に抱き付く。


「わーーい。約束しましたからね!? これから私は若様の従者です! ずーっとおそばにいますからね!?」


 うわぁ……。

 この平和な世の中で主従関係なんておかしいだろう……? 俺はなんて約束をしてしまったんだ……。

 後悔してももう遅い。

 おりんは大はしゃぎで「若様若様」と連呼している。


 俺はへなへなと崩れ落ちそうになるのをこらえて、諦めたようにつぶやいた。


「もう……どうにでもなれ」

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