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焼きそば

作者: S10氏

ショートショート

S10氏は、焼きそばが好きだった。


平凡なサラリーマンの彼は、毎週金曜の昼休みに会社近くの屋台で焼きそばを買うのが習慣だった。香ばしいソースの匂いが、彼の中に微かな幸福をもたらした。


だが、三週間ほど前から、焼きそばの味が変わった。

妙にスパイシーで、脳の奥にじわじわと染み込むような風味。だが不思議とやめられない。

彼はそれを「クセになる」と思った。


その週の月曜、S10氏のアパートに黒いスーツの男女が現れた。

「秘密警察です」と女が名乗った。「あなた脳虫を飼っていませんか?」


S10氏はぽかんと口を開けた。

男の方が続けた「この国では、脳虫の未登録飼育は重罪です。即時処分の対象です」

わけがわからない。だが、彼らはS10氏の頭に小型の装置を当て、何かをスキャンした。


ピーッ、と音が鳴る。

女がうなずいた。「やはり…高密度型、しかもUFO由来です」


「UFO……?」


「三週間前の未確認飛行物体、覚えていませんか? 都市部上空に出現した例のアレです。あのとき、撒かれたんです。調整済みの脳虫が。あなたのように、特定の食物に仕込まれた個体もいました」


「じゃあ、焼きそばに……?」

「はい、焼きそば型拡散装置ですね。最近流行りの手法です」

「誰がそんなことを……」

「それを探るのが、我々秘密警察の仕事です。そして…あなたのような、感染済み被験者を回収するのが…」


後ろの壁に異様な機械が出現した。口を大きく開けた、それは…ブラックホール掃除機だった。


「待ってください、私は何も――」


言い終わる前に、S10氏はその中に吸い込まれた。音もなく…痕跡もなく。

翌日、秘密結社〈ソースの会〉の会合が開かれた。

議長はニヤリと笑った。「計画は順調だ。人間たちは気づかず、脳虫は広がっている。来週はたこ焼きでいこう」


会場に、ソースの香ばしい匂いが漂った。

脳虫=脳内を巣にしている昆虫と思われて現在でもNASOにて研究中

ブラックホール掃除機=その名の通り物質なら何でも飲み込んでしまう2199年に発売予定の新製品

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