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魔法少女ラウナ  作者: 海海刻鈴音
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ep.1 出会いは突然? 私、変身しちゃいました!

 春。遠くから聴こえる鳥の声と、賑やかな子供たちの声。ぼーっと空を眺めながらベンチに座っていると、ぽかぽかと日差しが心地いい、素敵な休日。


 私、佐賀美うつはは、学校のない日を、こうしてのんびり過ごしていました。


 ときどき、カラスさんやハトさんが挨拶に来たりするのですが、餌は無いよと言っても、離れてくれません。仕方ないから、少し撫でてあげると、鳥なのに嬉しそうに目を細めてくれます。


 そうして、たらたらと時間は流れていたのですが、なんだか辺りが騒がしいです。


 屋台でクレープを買っていた女の子が、高校生ぐらいの人にぶつけられて、クレープをおっことして泣いています。その近くでは、ボールを取り合って、男の子たちが喧嘩をしていました。


 視界の端には、土曜日なのに、きっちりネクタイをした人が肩を落として歩いていました。


 そして、その全員が、黒いもやに包まれていたのです。


 もやはどんどんと、その色の濃さと量を増していきます。でも、私の他に、見えている人はいなさそうです。


 さっきまであんなに穏やかだった鳥たちも騒がしくなるなか、突然、公園のど真ん中で、大きな爆発音が聞こえてきました。


 ばらばらと湿った土が吹き飛んで、もうもうと煙があがる中現れたのは、太く大きいツノとツメのある、真っ黒な化け物。


 ぐぐっと胸をふくらませ、怒号をあげると辺りはすぐにパニックになって、悲鳴とともにみんなが逃げていきます。


 私もすぐに逃げようとしました。けれど、そのとき。私は気づきました。化け物の近くで、逃げ遅れて泣いている女の子を。


「危ない!!」


 私は迷わず、女の子目掛けて駆け出しました。そして、女の子の手を取り、抱きしめて、立ち上がろうとして。あの化け物が暴れて吹き飛んできたコンクリートの欠片が、目の前に迫っていることに気づいたのです。


 (あぁ、ダメですね、これ)


 妙に冷静に、飛んできた欠片がやけにゆっくり見えるなか、私は悟りました。目も閉じず、女の子だけでも守ろうと、より一層力を入れたのです。


 けど、欠片は私に当たることはなく、どこかへ飛んでいきました。横から矢のごとく弾いてくれた、カラスのおかげで。


「痛いよ、お姉ちゃん!」


 抱きしめていた女の子の声ではっとして、力を緩めて、立ち上がりました。化け物はまだ暴れているけれど、ずっと向こうに行っていて、さっきのカラスはどこにも見えません。


 助かった。まずは、この子を安全なところへ。


 そう思ったけれど、女の子はすでに居ません。どこへいったの? 慌てて探しても、近くにはいないので、とにかく安全なところに行ったたのだろうと、一安心しました。


 化け物はまだまだ暴れています。少しずつ距離は離れていってるけど、早く何とかしないと。


 でも、私に出来ることは、多分無いのでしょう。なんだかもやもやした気持ちのまま、その場を離れることにしたとき。声をかけられました。


「うつは。優しくて、動物に愛される、魔法の素質を持つ少女。君を探していたんだ!」

 光をさえぎって、目の前に現れたのは、一羽のカラス。つやつやとした羽の美しいそのカラスは、その羽を一枚引き抜くと、私に手渡してきました。


「その羽に、強く願うんだ。どんな願いでもいい。その想いが、君の力を解放する!」 

 何が起きているのか、まったくわからないまま。けれど、あの化け物を、もし止められるのなら、やるしかない。


 当然、怖いです。昔、テレビの中で戦う魔法少女に憧れていたこともありました。この街にも、フィクションじゃない、本物の魔法使いがいるなんて噂も聞いたことがあります。


 でも、そんなのは全部、私には縁遠いものだって、思ってました。


 だから、出来ることなんて、あるのかなって、少し疑いはしたのです。


 でも、このカラスは、迷わずに私のところにきました。羽を一枚渡して、君にならって、言ってくれた。


 だから、願うのです。私の手で、あの化け物を倒し、みんなの楽しい時間を取り戻すって!


 握りしめた拳のなか。羽が激しく光り、私の体を包んでいきました。


 短くまとめた髪は伸びて、鮮やかなカラスの濡れ羽色に。だぼっとしたオーバーオールは、黒を基調とした美しいドレスに。


 眩い光はやがて収まって、慣れないヒールで立つ私は、テレビの向こうに見た、あの女の子たちと同じく、変身していたのです!

カクヨムに投稿した作品のセルフ転載です。

作品自体は完結しているので、のんびりこっちに移していきます。

よろしくお願いします

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