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幸せな2人

 秋晴れのある日。王都でもっとも権威ある、と言われるハーシュディーン大聖堂。普段から多くの人で賑わうそこは、異様な程の賑わいを見せていた。


 それもそのはず。今日はここ数年で一番多くの令嬢の視線を集めた、と言われるマイルウェル侯爵家の嫡男の結婚式なのだ。その上その相手は諸事情あって貴族の世界に飛び込んだ下町育ちの女性であり、しかも今は王国有数の権威を誇るレーゼリア公爵家の養女なのだという。話題にするな、という方が無理だろう。


 そんな祝いと好機の目がごちゃまぜなったような空気の中でイザベラは今更ながら顔を引き攣らせていた。


「エドワード? なんだか参列なさる方が多くありません?」

「いやイザベラ……きちんと招待状をお出しした相手しか来てないよ。ーーまあ外には街の人達も詰めかけているみたいだけどね」

「どうしてそんなことに!? そういうのって王族の方の結婚式とかだけじゃないのですか?」

「まあ……王太子殿下の結婚以降、大きな慶事が少なかったからね。イザベラだってレーゼリア公の養女なんだから王族の親戚だし……」

「まあ、そうなんですが」


 とはいえこれは聞いていない。とばかりにイザベラは声にならない悲鳴を上げる。あまりの緊張に口をハクハクとさせるイザベラにエドワードは少し眉を曲げた。


「ごめんね、イザベラ。こればっかりは宿命ってやつで……それともやっぱりこんな風に注目されるのは嫌? 」


 そう言ってエドワードは少し悲しそうな顔をする。その表情をみてイザベラは


「その顔はずるいですわ……」


 と呟いた。


「ん? ずるい?」

「ええ、ずるいわ! だってそんな顔されたら嫌とは言えないじゃない。それに……エドワードと結婚できるのは嬉しいもの」

「ありがとう。僕もイザベラと結婚出来て嬉しいよ」


 そういってエドワードは悲壮な顔から一転、嬉しくてたまらない、といった顔に表情を変える。


 そんなところも含めて「ずるい」と思うのだが、同時にそんな彼も好きなのだ。仕方ない。


 怒ったり、頬を染めたりと忙しいイザベラを可愛くて仕方ない、という風にエドワードは見つめ、そして白い手袋で包まれた手をキュッと握る。


「イザベラにとって僕の立場が相当面倒なのは承知の上だ。でもそれでも良いって思えるくらい幸せにする。約束するから……許してくれない?」


 白い燕尾服に包まれたエドワードは普段以上に美しく、その瞳はイザベラへの愛に溢れている。そんな瞳で見つめられれば、イザベラの答えは一つしかない。


「許すも何も……私もエドワードを愛してるもの。たとえどれだけ緊張するとしても、あなたと結婚出来てとっても嬉しいわ!」


 そう言って、イザベラは今日を迎えられた幸せを噛みしめるのだった。

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