エピソード8 あの人が来たる
「君、ちょっといいかね」と40代後半に見える男性生徒が話しかけてきた。
「んぁ?俺か?、…あんた誰?いや先生か、何か御用で?」
「あぁ、私は3年主任兼3年D組の担任のナワドゥ・ホーワッツと申します。まあ初めましてだね」
「あー、主任か、で?」
「いやね、君の魔法が前々から気になっていてね、私は魔法の研究が趣味でね、どういう原理なのか」
「あー、大会終わったら教えますよ、時間も作りますよ」
「まあ、そうだね、じゃあ楽しみにしてるよ」と手をひらひらしながらナワドゥは去っていった。
「はーい」と二人は、その場で別れたが、その時お互い凶悪な笑みを浮かべていたが、それをお互い察知することはなかった。
「そういえば、今回色々使い忘れてたな、結局目潰し銃使わなかったし」と独り言を呟いていると
「そういえば実践で試してなかったね」と楓と合流したカリーナが楓の独り言を拾う。
「まあ、安心しろあれらは使えるさ、そういずれな」と悪い笑みを浮かべていた。
「あっでも、苦痛のコインは使ったんだね」
「あー、あれは完全におもちゃだからな」
苦痛のコインとは、そのコインに触れてるだけで針に刺されたような痛みをふれたところに与えるものだ、まあ触れてるやつ全部が精神的ダメージも低いため文字通りおもちゃである。
だが、楓はあらゆる技術を持っている、針治療の応用で特大の精神苦痛を与えることもできた。
「てか、それずっと持ちっぱなしで使ってた?自分も針を刺された痛みが常にあるのも苦痛だと思うけど?」
ダメージ発動中のコインをいじってるのを今気づいたかのように袋にしまう楓であった。
「あ、いって…」と無表情で淡々と呟きながらポケットを袋にしまう。
「ねぇ、前々から思ったけど」
「あ?、なんだ?」
「なんか、痛み慣れしてない?元いた世界って、そんな刃とか弾丸行き交う世界だった?」
「いや、まあそうだなそういえば物心ついた時には、痛みというか精神が強かったってうちの親が言って気がするな」
「え?、もはや前世でこっちの世界だったとか?」
「ほう、前世か、非現実的ではあるが、そういう考え方もあるな、実際こちらの世界だと200年前にそういう話があったらしいしな。そもそも前世って概念は、記憶だけ受けたがれたり、能力面というか性格?っていうのが………」
ほう、ができる時はオタクモードが入った証拠だ、めっちゃ口数が多くなる。
ただカリーナには楓が何か深い後悔を隠しているように見えた、なんとなくそんな感じがしたのだった。
「まぁ、それはさておき、例のアレは間に合いそうか?」
「一応できるよ、使用回数制限は3回くらいかな」
「ふむ、いいなじゃあ引き続き頼んだ」
「はーい」
「じゃあ俺はこれで」と楓はふらっとこの場を去ろうとした。
「どこか行くの?」
「あぁ、まぁ用事だな試合には関係ないようだし、すぐ戻る」
楓は、少し離れた訓練所の裏にある森林に入っていった。
「しばらくだな、エリミエール先輩」
「待ち侘びたじゃないか、でやはり今回ダンラル教団はやってくるのか」
「その可能性は高い、あとさっき会ったが多分あいつは黒だな」
「…やっぱりか」今まで明るくしか振る舞っていなかったエリミエールの表情は、とても冷たくそして深い憎しみを感じるものだった。
そうエリミエールは、昔ダンラル教団に幼馴染を殺されているのだ。
そうこれはエリミエールがこの学園に入るより前、王都から離れた村での話だ。
エリミエールは、ティナという幼馴染がいた、エリミエールの父親とともに三人で王都へ出かけた帰り、村は滅んでいた。
村を守るために派遣されていた騎士(学園卒業者)がなす術なく村は滅んだのだった。
父親は真っ先に殺された。
そしてティナは俺を庇って死んだ、エリミエールは奇跡的にやつの攻撃を避けた。
それを面白く思ったのか、死体を黒く染め上げ、黒い人形を作り出し、それでエリミエールを殺そうとした。
じっさい、ティナだったものに殺されかけた。
その時一瞬ティナがエリミエールを殺すことに抵抗した。
その一瞬が無ければエリミエールは死んでいたという。
結果大事なものを残酷な形で奪われていたのだ。
だからこそ、常にその過去と立ち向かうために強く、絶望の過去に押しつぶされないように明るく生きていたのだろう。
「その様子じゃ、実力が上回っていたとしても勝てないぞ」と楓は無表情で告げた。
「…それはわかってるさ!、まあ危ないなら逃げるさ!、どうせ最後の最後に勝てばいいんだからね!」
「そうそう、それでいいんだ、どうせ今回俺たちの許容を超える事件が起きるだろうしな」
「多分あの人が来るさ」とエリミエールは元の息を取り戻し爽やかそうにいう。
「あぁ、例のね、楽しみだ。」と楓もニヤニヤしていた。
不意に楓は表情を戻し、
「だが、それは相手も折り込み済みなはずだ、それまではとても厳しい戦いになるだろうな」
「…、そうだね!、まあこんなところで立ち止まっているわけにもいかないし、最悪蘇生してもらうさ」
「…蘇生か」この学園内では死んだとしても蘇生ができる、ただし条件もそれなりに多い、
①死んでから24時間以内であること
②脳、心臓の一部が残っていること
③己に生きる強い意志があること
そして何よりも大事なのが、唯一神であるカレイナが蘇生可能であること、上記の条件を満たしていても、唯一神の力が使えなければ蘇生が意味をなさないのだ。
「…、俺はそういうわけにはいかないけどな、あと次のクラスにも負ける予定はねぇ」
「…そうか、覚悟が決まったよ、僕も決して命は落としはしないよ!」
「はぁ、初めからそういえばいいものを、まぁいいじゃあな」と楓は一方的に会話を打ち切り、去っていった。
「ほんと、君の正体が気になるよ」エリミエールは、一人ポツンと呟くのだった。
そして、ついに俺たちのクラス対高等部3年、の戦いは始まり、なんと開始30秒で2対全員の対戦となった。
「まさか、あんなことするなんて、君はすごいな」と隙が一切なく話しかける、生徒会長与里帝光深は、周りに機械らしきものを浮かべていた、銃口らしきものがそこらじゅうについている、彼の周りには、盾のような機械がある。
「あぁ全くだ、このままだと父君当然、兄姉君に合わせる顔がないな」
「いや、君の姉君なら大丈夫、優しく褒められるだろ」
「…、それが困ると言っているんだけどな」
与里帝と話しているのは、
ラーク・アトラスタ、アトラスタとはこの国の名前である、つまり現国王の息子である。
王族は代々、勇者が持つような聖剣などの武器を授かっている、ラークの武器は、バリアなどを展開する、防御特化の聖剣である、武器の正確な名前はまだない。
楓は試合開始と同時に、カリーナが作っていた、例のアレを使ったのだ。
攻撃魔法の、範囲と威力を上限なく高め発動できるチート武器みたいなものである。
陣地全面を覆い被さるほどの火炎の槍をぶっ放した、その結果相手の大半は滅んだ。
これは与里帝たちのクラスのためにもいうが、今回の戦いはそもそも学びに6年も差がある、ようは小学1年生と6年生が戦うようなものだ。
だから、手加減をするのが暗黙の了解となっている。
そこに予測不能の強大な一撃がたたみ込まれたのだ。
「しかしだな、ラーク!この状況なら本気を出しても問題ないだろう」
「確かにそうだな光深!、流石に今年は何があっても優勝を目指すしかないからな」と聖剣を構え直して、魔力を込め始め、後ろから穴の空いた空洞の弾丸状の結界作り始める。
それに合わせて、不恰好に大きな砲台を持った真四角のドローン的なものが弾丸の中に入る。
それを数百と展開を一瞬で終わらせた。
それに対して楓は、再び腕輪に魔力を込めて、ラークの元へ走り始めた、それに対してラークは障壁を適当に展開させ迷路のように壁を作るが、楓はまるで一本道のようにその障壁を抜けていった、それを見て自身を囲う多重の障壁を展開した。
「身体強化をしているのだろうが、私の障壁はそうそう破られてたまるか!、これでも将来王国の防衛を担う者としてな!」
「あぁだから無理矢理破らせてもらうぜ!」と楓はおびただしい数のマナフルエンチャントを魔法陣を刀に込め、その刀で障壁を砕き始めた
障壁に当たった瞬間強い反動を感じた楓だが、そのまま刀を押し込む
「おぉらぁ!!」ベキベキと障壁が壊れていく。
「壊せるのか、いや身体強化じゃなくて障壁を破壊するのに特化した感じか、なら対抗するだけ損か」ラークは、なぜ身体強化なしで凄まじい速度で移動していた楓はの疑問をかなぐり捨て、障壁を解除して全て上位の弾丸に集中させた、そして楓の攻撃を聖剣で受け止める、だが聖剣は折れてしまった、そして楓の刃がラークの体を切り裂く、ことはできなかった。
ラークは鈍器に長がられたかのように横へぶっ飛んだ。
「まさか聖剣も壊されるとは、本当に奥の手を使うこととなるとは、あれの中でも上位の存在との戦いで生き抜いただけあるな」と横にぶっ飛びつつも無傷で立ち上がるラークだった。それと同時に障壁の弾丸は楓たちのクラスの陣地に発射されていた、
「一斉命令、砲撃放て!」と与里帝の指示の元、正確に拠点及び楓のクラスメイトたちに必中した、みんなにとって避けらず壊さない弾丸だ、全員なすすべなく死亡した、ただ一人を除いて、
「計算外だな、とりあえずまだ誰にとは言えないが、推薦してやろう、宮本鏡花!」と機械を引き連れ鏡花へと歩み寄る与里帝であった。
そう宮本鏡花は、ドラゴの防御特化にした竜装甲でさえ防ぎきれなかったものを、凌ぎ切った。
弾丸との距離が1メートルを切った瞬間、一点に攻撃を集中させ、弾を微かに逸らしその時生じた衝撃を利用して横回転で受け流すように避けていったのだ。
「それはありがたいですね」と余裕を装いながら状況を確認する。
今の弾丸はおそらく与里帝会長のものではないと考えると、おそらく同じクラスの確か国王の子供である、
ラーク先輩だろうって、考えるとあの弾丸の攻撃は
もうできないから、近づいてきたのだろうか、
それか、さっきの口振からして私を試すために単独勝負を挑んできたのだろうか。
まあ何はともあれ、楓じゃないけど
「せっかくの戦いです、楽しませてもらいますよ!」と再び刀を固有スキルで4本構える。
そう固有スキルで4本、そして手には2本つまり
「六刀流か、そもそも四刀流が成り立っている時点ですごいな、どう考えて動かしてるのか聞いてみたいな!」
「それなら、与里帝会長のそれらの操作こそ聞いてみたいですよ」と大量に並ぶドローンもどきをみながら言う。
それ以降二人は言葉を交わすことなく、対決が始まった。
一方、楓とラークは、
「…なるほどな、聖剣の形に意味はないのか、完全防御ってやつか、こりゃ力技も意味ないな、大人げないなぁクソが」
「それを一発で分析してしまうあたり、君とんでもないな、てか先輩だし、権威はないけど国王の息子だから光深以外は敬語なんだがな、生意気が過ぎないか?」
「あぁ、正直つまらないなぁと思ってな、今回のルールなら簡単に勝てるなと思ってな」と楓は刀をしまう。
「…簡単にか」、完全防御であることを認めてなおこの発言だ、聖剣は命を迫った時に力が増す、つまり今回の死ぬことない魔法陣の中ではその特性が充分に発揮されない、それでも楓ではこの防御は突破できない。
「まあ多分通じるはずだし、やるか」と楓はラークに近寄る。
「うわっ」と間合いに近寄られことに驚くラーク、そしてそのまま柔道の感覚で投げられた。
「ふー、流石に疲れるな、よいしょっと」と楓はラークに寝技をかけながら、首を締め始めた。
そういうことか、確かにこれなら私はゲームオーバーになるな、というかそもそも気付かず近寄られた、あーしかも間接の一つ一つが動かさないな、全くとんだでたらめさだ、そろそろ3分経ちそうだ、今回のルール上死亡判定になってしまう。
「はぁ、仕方ないな今回は負けてやる、次は負けないとかそんなことは言わん、どうかこの国を救う英雄でも目指してくれ」と後輩を励ますラーク、それに対して楓は、
ため息一つ、そしてすごく嫌な顔して
「英雄か、そんなもんにはならん」と言い切った。
ラークは驚きの表情を浮かべると同時に死亡判定となりこのバトル場から消えた。
ちなみにこの世界では英雄という言葉は、一応強者に対する最大限の敬意を表す言葉になっていた。
無論、楓は知っていたがそれでも素の反応であれであった。
「さて、さっさと鏡花の方に合流…、へぇやるじゃん生徒会長さん」と会話ができる距離まで無作為に近づいてから光深に話しかける楓。
「あぁ、すまないね、えっと確か楓君だったか、悪いが卑怯な手やら、本気を出させてもらったよ、流石にラークまで倒されるとは思わなかったよ」
「ふーん、まぁ確かに鏡花でもあんたには勝てないか、まぁ今回は訓練だしな、まぁでもお互い腹は立つもんだな」と楓は刀を構える。
自分でも気づかないほどの静かな怒りを隠していることを悟られたことに驚きを感じながら、
「君は本当にすごいな、もしかしたらあの人の元で強くなれそうだな」といいながら機械の一つを変形させ、自身の腕に装備した、腕から砲台が生え、車のマフラーみたいなものが背面に複数見受けられた、だがその見えていた視界も周りにある大量のドローンが囲い尽くしていた。
「さて、勝負と行こうか」と与里帝光深は複数のドローンから同時に音声を発した。
「…、そうかなら悪いな、俺も久しぶりにマジで行くか」と凶悪な笑みを浮かべる。
一方的に楓の様子を見れる光深は呆れと期待を含む微妙な笑みを浮かべていた。
「…、やっぱ楓君、君英雄向いてないな」
とこうして最後の決戦が始まった。
同時刻 ある裏庭にて
「ちょっといいですかな?先生!」
「ん?、久しぶりだねエリミエール君、私に何用だい?」
「…、単刀直入に聞きますよ、ダンラル教団ですよね!ナワドゥ先生?」
「…、何を言っているんだい?、冗談はダメだよエリミエール君」と言いながら適当に手を振った。
その瞬間、どこからとなく黒き光線を放った。
それに対してエリミエールは雷の魔法をぶつけて光線をずらし、避けた。
「…、攻撃が来るってわかってなかったら直撃だったな流石にね!」と言いながら鋭くレイピアで心臓を突き刺すが、服の表面を少し削ったぐらいだ。
「へぇ、最近私の防御を突破しようとするやつ多すぎて困るよ全く」と視線を服から外し、顔を上げた表情は、見るだけで吐きそうなぐらいきみの悪い笑顔だった。
「まあ、そりゃダメージ与えられるとは思ってなかったさ!、だから色々用意してきたさ!」といいながら、魔法陣から魔道具らしき槍を取り出した。
「特別な魔道具みたいだね、遊んであげますよ、どうせ私は今回、役割はありませんからね」
「その言葉、後悔するといいさ!」と言いながら槍を自分の横に浮かせ再びレイピアを構えるエリミエールだった。
そうこの槍は、バチクソ違法な武器である、基本的な槍の機能としては、違うのだがある点において、非人道的に近い機能が備わっている。ちなみにその機能を備える前段階まではカリーナ作である。
「…、それは良くないなぁ、あぁ多分楓君か、やはりあの時殺しておく…いやできないことを口にしても意味ないか」と呑気に喋りながら、自身は後退しながら、黒き光線をどこからとなく放つ。
少し掠め、表情を濁らせながら、近づくエリミエール、そう本来はそこまで痛いのだ。流石のエリミエールでも腕全体とかくらえば痛みで動けない、そのレベルだ。
「はぁ、避けないで欲しいな、ただでさえそれがめんどくさいのに」とさらに距離を取り、自分が相手の視界から離れるように再び黒い光線を放つ、だが次の瞬間背後から、エリミエールのレイピアが心臓を貫いていた。
「ぐはっ、興味深いね、その域にたどり着いていたのか、いや負担も大きいしまだ未完成のようだね」
エリミエールは自身を雷とかし、地中を高速で移動しナワドゥの背後をついていた。体からは肉の焼ける匂いがしていた。
自身を雷から戻した瞬間に一部雷が残り体が少し焼けてしまったのだ。
「かはっ、ぞれでもおまえにいぢげぎあだえられだよゔだね」喉と舌も焼けていたせいでうまく喋れない。
「あぁ、その武器もあって気が散ったし、さすがに今の速度はわからなかったな、流石に勝てないね5%の私では」といいながら爆散した、血があたり一面に散った、その後その血は赤から青に変色した。
なんとか血飛沫を避けたエリミエール、だが次の瞬間、片方の肺に黒い光線が貫かられた。
エリミエールは何が起こったかわからないまま倒れた。
浮いていた槍も地に落ちてしまった。
「あー、体を動かさない方がいいよ、その痛みで動くと呼吸そのものができなくなるよ」ともう一人のナワドゥがどこからとなく現れた。
「まったく最近は5%でことが足りていたのに、はぁ今は50%だ、ここまで使う予定はなかったんだがな、どうもあれと戦っていらいうまくパワー調整ができなくなったから仕方ないか、この姿だとあと1分もしないうちにベアーノ先生あたりが来てしまうな、君を殺して私はこの学園を去ろうとするか」と言いながら、片手が黒くなり膨らみ異形の形へと変貌した。
「では、お別れだ、復讐できなくて残念だったな同情するよ」と不気味では表現しきれない笑みを浮かべてながらエリミエールに拳を振り下ろした。
だが次の瞬間その拳は、ナワドゥの半身とともに消えていた。
槍がナワドゥを貫いていたのだ。
ナワドゥ50%とやらが登場する少し前
「おいおい、そのドローンはわざわざ防斬しようにしたのにまるで豆腐じやないか」
「砲弾撃ってくる豆腐なんて誰が食うんだよ」と言いながら楓はドローンを切り進み、与里帝の懐へとどんどん近づく、飛んでくる弾丸、範囲攻撃の突風など全てを切り進んで行く。
今回、楓は固有スキルを使用している、脳の処理能力が上がるもので、
(0.0001秒で三桁の掛け算が解けるくらい)
もともとイかれた反応速度を持つ楓がさらに強くなった結果、どんな事柄も見逃さず、数万通りのパターンを予測対策できる、最強状態となった。
「そうか脳の処理がそれが固有スキルかなるほどな」と言った瞬間、楓に異変が起こる。
そう、固有スキルに異変が生じたのだ、急に使いづらくなった。
「ズルとか言わないでくれよ」
「…、関係ない」と楓は固有スキルを使うのをやめた、そして再び切り進む、先程変わらないペースでだ。
「本当に弱体化してるのかこれ、君、本当に規格外だな」
と再びドローンを生成する。
だが、突然楓は動きをやめた、何かしらの異変を感じたからだ。
急にこちらに敵意がなくなったことにより、与里帝も攻撃を停止した。
「…、ギブアップだ、俺の負けでいい。予定外すぎることが起きた」といいながら、また新たな魔法陣を展開した。
与里帝は、敵を油断させるために言っているわけでないとすぐに分かったのでドローンを引き下がらせて一つのドローンを椅子にしたゆっくりと腰を下ろし楓の様子を伺った。
それと同時にエリミエールに持たせた槍を操作し、
「悪魔的裁決の槍!」と魔法名を叫ぶ。
その瞬間、ナワドゥの変形した手の部分を吸い取り力に変換して、そのままナワドゥを貫いた。
「ぐわっ、油断したな、まさかこの状態で体が破壊されるとはねぇ、まさか100%の僕でも勝てなさそう相手がもう一人いるとはねぇ、しかも楓君とはねぇ」
エリミエールは心の中で、楓に対してこう言った
「何が手に負えない事態だって、君にとっては全然手に負えるじゃないか」
「はぁ、時間切れだ、しばらく会うことはないだろう、とういうか会いたくもないね」といいながら消えた、それとともにベアーノ先生がまるで隕石かのように上空から降りたってきた。
その時その場から離れようとした槍もしっかりと握っていた。
そしてエリミエール黒いアザをみて、そこ知らぬ憤怒の表情を示した。
ダンラル教団がまたしても学園に侵入を許したこと、そして何より生徒を守れなかった自分の不甲斐なさに怒りを覚えていた。
「…、いけないまずは連絡とエリミエール君を医療塔まで運ばなくては」とエリミエールを抱え安全かつ最速に医療塔へと向かった。
そして、とんでもない大声で
「現在!5号塔近く教室裏にて、ダンラル教団の存在を確認!!、全教師確認と生徒の安全を確保しろ!」と学園中に鳴り響いた。
拡声系統のスキルを駆使したベアーノ先生の魔法だ。
ベアーノの叫びが聞こえた楓と与里帝
「…、君、まさに今ダンラル教団相手に何かしただろう、あと多分違法だろう」
「あー、バレたか、まあでもここからがトラブル本番ぽいから一緒に頑張ろうぜ、先輩」と腕輪の状態を確かめながらニッコリ笑顔を浮かべた、それは美少女のようなかわいい笑みだった。
「…、確かにこれはまずいな、何か強大なものがいるな、その場から動けなくなる程度のことができるかどうか怪しいだろうな」
と言っている間にも空の雲は増えそして青紫へと変色していった。
「最近のエリミエールが変わった感じがしたけがそれも君の影響か、まあそれは今は置いといてやろう」と与里帝はドローンの再生成を始める。
「あー、これも作れるか?」と腕輪をだした。
「んー?どれどれ、まあ原動力が魔力ベースなら大体作れるが、これは魔力ベースだな、…これまともに使えるもんじゃないな、いや君は使っていたな」
この腕輪は、魔法陣を強制的にまとめるものである、同じ魔法を重ねて発動させることができる。複数の魔法陣を一人で発動することは基本的な不可能だがこの腕輪は無理矢理一つにまとめることで一斉に発動できる。
ただこれは理論上複数の魔法陣を発動できるようにするだけのもので、実際にはその魔法を全て処理しないと発動できないため結局は使えない代物である。
だが、楓は最初からこういうことをする前提で、魔法の練習をしてきた、まあ大体は楓の才能によるものだが、まあ楓にしか使えない代物とみたいなものである。
ちなみに、与里帝の固有スキルは進化する機械は、機械を動かすとかではなくあくまで生成能力がある、生成したものを魔力で動かしているにすぎない。
よって、楓が出した機械を作ること自体はできる。
ただ使えないだけである。
与里帝は急いで複数個生成して楓に渡した。
「どーも、じゃあ周りへの被害防御をよろしく!」
「あぁ、確かにそれが第一だな、森中にアドゥプルテル(ダンラル特有の黒い傷跡)が広がるのは、流石に魔法陣がかかってるとはいえ、修復が数年必要になるし、人に当たったら普通に死人がでるからな、おそらくラークも駆けつけてくるだろうから、で楓君は?」
ついに異形な竜の形をした、巨大なダンラルが現れた。
大きさは、体長500メートルくらいである。
まさに絶望的な敵である。
だが楓は
「そりゃ、直接斬り込む、この程度で俺は絶望しない、いやむしろワクワクしてきてたまらんわ!」と腕輪を二つ、発動して
風と身体強化を発動させて上空にいるダンラルへと向かっていった。
「…、それ二つも同時に使えるのかよ」と呆れ顔で楓を見上げる与里帝であった。
「さて、とりあえずこれでもくらっとけ
(楓はダンラルに刀を突き刺しその傷口に手を突っ込んだ)
凍てつく氷華の世界」
ダンラルが体内が凍りつき、動きが止まる。腕輪が一つ壊れる。
だが流石に巨体とパワーが有り余りすぎて、メキメキと無理矢理動こうとしてる。
声は出せなさそうだ。
「さてここから、どうしようかね、まあ凍らせ続けるしかないか」
その時突然ダンラルの竜の鱗が動き大量の目が出てきた、そして目が光りだし黒い光線を放った。
楓は、とっさに左手だけで刀を切り回し自身にあたる目を切り裂いて光線を一部止めた。
今の光線で、安全判定のある魔法陣が破壊された、だがそれらは森にあたることなく、全て与里帝の炎、水、光の3種類の魔法を一斉砲撃で放つことによって森への直撃を防いだ。
「構えておいて正解だったな、ただ咄嗟で無理矢理防いだが、回数に限界があるな」なにしろ500メートルにわたる広範囲攻撃である防げるだけ軌跡である。
「あと5回か、それで片付く…のは流石に無理そうか」
と言っている間にもさらに砲撃が始まっていた。
さっきよりも高火力広範囲だおそらく潰された目をカバーして楓に攻撃をぶつけるためだ。
楓は現在片手をダンラルに突っ込んでいるためその場から動けない。
「あっそっか」と楓は魔法陣からある刀を取り出し、そのまま刀を入れ替え、その刀で光の刃を飛ばして目をさらに壊した。
「そういえばもう試合じゃなかったな」と凶悪で不敵な笑顔を浮かべた。
「くらいやがれクソがぁ!最大限凍てつく氷華の世界!!」
腕輪が一気に複数個壊れたが、今回は完全に500メートルを氷で覆い尽くした、だがまだ浮いている。
「…、首を斬れば流石にいけるか?」と腕をダンラルの体から無理矢理ブチブチと無理矢理引き抜いて、ダンラルの頭へと向かった。
風の魔法を後ろに放ち、氷の上を滑って頭へと進む、
途中途中、無理矢理割って黒い光線が溢れて出てる、目を無理矢理切り裂き光線を止めつつ進む。
楓はアドゥプルテルを作りながらも、偽竜の首元へと到着した。
「さてと処刑の時間だ、駄竜がぁ」と刀に魔法をありったけ込める。魔法は、マナフルエンチャントと攻撃範囲延長だ。
楓は偽竜の首を切った、だがその首が落ちることはなくその場にとどまり再生を始めていた。
青い返り血を浴びてしまい、皮膚や目がただれて満足に動けなくなっていた、さらに腕輪をすべて使いきって再び斬る手段がない。
だが、首と胴体の間に、大量のドローンが押し入り再生を妨害していた。
楓はカメラらしきものが搭載された大き目のドローンに乗ってその場を離れていた。
「押し切れるか怪しいな、てか先生来ないな、…あー訓練用の結界が利用されてるのか、おい押し切れのか、生徒会長さんよ」
「厳しいな、多分頭自体を新しく再生しようとている、多分勝てる教員は、ベアーノとミーラ先生レベルだろうな」
「まじかぁ、質量てきな問題か、幸い今は再生に極振りしていて攻撃してこないって感じか」この時楓は、思ったやっぱミーラ先生強かったんだなとおもいやはり本気で戦ってみたいと思った楓であった。
その頃ベアーノは
エリミエールも送って、異様なエネルギーがある場所へ、身体強化で1回のジャンプでたどり着いた。
「なんだ、あれは竜か?、はぁ全くどこまでもふざけた連中だなあぁ!」と偽竜を見て憤慨するベアーノであった、与里帝と楓が戦ってるのを見て、明らかに豹変しているバリアを壊そうとすると
「あなたを止めるのは私の役目です」とどこからとなくダンラル教団らしきものが現れた、そいつは片手に炎、反対に水を構えていた。
高度な知能を持ってそうだ、おそらくダンラル教団でも幹部に当たるだろう。
「目的はあの二人の暗殺か?、それとも女神の祭壇を襲う陽動か?」
「あぁ、ってことは女神の祭壇にも誰か配置してますね、さすがにダメでしたか、まぁここに一人で来たこと、あの二人の死をもって後悔しなさい」
「…、お前らは、楓と光深のことをなめすぎだ、あと今日はあの人が来る日だからあきらめろ」
「それは私たちの試作品を撤退できそうですね、正直今回は明確な目的と言えば、戦線布告でしょうか」
「また、はじめるのか、やはり滅ぼさないとだめか、さて私の相手は君だったか、せめて君だけでも滅ぼしてみるか」
「私は100%なので、確かに滅ぼせますね、倒せればの話ですが」と直径30mの火球をな投げた。
「ガァァァアアア!!!」
最上級の炎耐性を自身に纏い、火球を殴り砕いた。
「えぇ、それを砕きますか、やっぱ想定通り、想定外の強さですね、元神なだけありますね」
その時、ベアーノは動きを止めた。
「なぜ、知っているんだ、それを知っている者は国王とあの人と唯一神様だけだ」
「ん?、あの人とは国王じゃないのですか?」
という動揺に対して、ベアーノは笑みをとりもどす。
「あぁ、あの人がこちらに来ることを知らないみたいですね、まぁ知らないようになる暗示が強制的にかかりますからね」
「はっ、思い出しました、やはり宣戦布告しといて正解でしたね、でなければあれの存在を思い出すことができませんから、ただまだ消えるわけにはいかないのでここは撤退させていただきます」
と、無理やり巨大に生成した炎と水無理やりぶつけ、一斉蒸発によ大爆発を起こした、それに対して竜巻らしきものは身体強化で起こして大体の爆破を上空へと逃がした。
全てを逃がすことはできず、森が一部爆散した、周りには白い粉らしきものが待っていた。
「塩か、つまりあれは水じゃなくて海か、あれを撤退じゃなくて、攻撃に使ってきたら…、末恐ろしいな」この時ベアーノは、周りに生徒がいる気配を察知したので、ダンラル教団の討伐より、守りを優先した、結果的に逃してしまった。
だがそれでも、
「いずれ倒してやろう、そのために育ててきたんだ、自らの意思で戦いたいものが戦えるようになるまで私は教師としていることを選んだからな。」といいながら、先ほどとはけた違いな禍々しい魔力とともに現れた人物を、気持ちの良い笑顔でそれを見るのだった。
禍々しい魔力とともに、結界が壊された。
次の瞬間、不思議な感覚を楓は感じた、
そう周りの自然の魔力が、全て禍々しい根源たる者のものになったかのようだった。
次の瞬間、巨大な竜型のダンラルは、まるで溶けるように消え出しした。
その次の瞬間、体調25メートルくらいのダンラルが内側から現れた、おそらく本体というやつだろう。
「なるほどな、全然倒しきれないはずだ…、なぬ、メイドだと?!」
楓は禍々しい魔力の主を目視した時、その格好に驚いた、金髪に黒い角は、ともかくメイドの格好をしていた。
楓の好きな者ランキング、1位はケモミミだが、メイドはメイドで好きであった。
「まさか、メイド喫茶とかでも拝めない本格的な仕様にたいしての表情の大胆さこれは普通のメイドにはないはずのものだが、それこそがいい、かなりいい、異世界って感じがするなぁ」と魔法よりと異世界を感じる楓であった。
「君、オタクの中でも相当マスターレベルだな」と多分聞こえてないだろうと思いつつ、通信越しにやれやれとなる与里帝だった。
「本体わかれば、自分でも余裕だけど、君はまだ知らないだろう、魔王という存在の実力を」
謎のゲートを出し、呪われてそうな鎖でダンラルを巻きつけ無理矢理ゲート中にぶち込み、そこに、余裕でこのダンラル覆いつくす、恐怖はあって気持ち悪さはない、純粋に黒い光線を放った。こうして絶望的な敵は一瞬にして消え去った。
あの人来たる時、全てが解決する、
そう彼女は
「我が名は、フェスダリア・カオスルオーネルト!魔王フェスダリアだよっ!」と自信満々の仁王立ちと可愛げな笑顔でそういった。