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880.000Hz 絶対に行ってはいけない場所

 暑い時は本当にビールが美味しい。そう思いつつビールを飲んでいたら、しけると思って急いで食べていたポテトチップスがなくなった。

 こうなると、また別のおつまみが欲しくなり、パックに保存していた、あたりめを出した。あたりめにビールは、さすがにおっさんすぎる。そう思いつつ、近所に住むおばさんがくれた、このあたりめは本当に美味しい。ちなみに、あたりめをもらった経緯は、いつも会う時に私がスーパーで買ったビールを持っていたので、「おつまみにどうぞ」ともらった形だ。近所の人に酒飲みだと知られていることはどうかと思うけど、こんな頂き物があるなら、これでいいのかもしれない。

「続いては、πさんという方からメッセージでもらったものを紹介します。こちらも匿名か、見ているだけの方だと思いますけど、私のSNSなどを登録してくれていまして、そちらのメッセージで、こんな話を教えてくれました」

 初めて名前が出るリスナーだったためか、純はどんな文字なのか示すように「πさんからもらった話」とだけ、画面に文字を出した。<π>と書いて、「ぱい」と読むようで、確か円周率を表す言葉だっただろうかと記憶を探った。

「メッセージを送るのは初めてのことですが、よろしくお願いします。純さんや皆さんは、様々な心霊スポットを知っているかと思います。ただ、『絶対に行ってはいけない場所』についての噂は知っていますか?」

 人のトラブルが怖いので、実際に行こうとは思わないものの、様々な心霊スポットについて、それなりに知識はある。そして、絶対に行ってはいけない場所と言われて、思い浮かぶ場所もある。

 有名どころとしては、ある航空事故で飛行機が空中分解した後、多くの方が落ちて亡くなったとされる場所だ。そこは、心霊スポットというより、もはや聖域とするべき場所といった意見も多く、自らが亡くなったことを自覚していない人が、帰り道を尋ねてくるといった話を聞くと、怖いというより悲しい気持ちになってしまう。そんな場所だから、安易な気持ちで行くべきではないと私も思っている。

 また、地元の人があまり行かない場所というのも、行くべきではない場所だと思っている。ただ、観光に来た人がそんなことを知らずに、そこへ行ってしまうことがあるらしい。

 具体的な場所だと、そこは長い橋を渡って行ける島で、その島を反時計回りに回ると良くないことが起こるといった都市伝説がある。しかし、近場の観光に来た人が島を見かけると、何かあると島へ行ってしまい、そのまま順路を知らずに反時計回りで島を回ってしまう。そんなことが多いそうで、実際に噂を知っている人が時計回りで島を回ると、すれ違う人が大勢いたそうだ。ただ、そんな人が多いということは、その場所がそこまで危険な場所じゃないという証明になるのかもしれない。

 なんてことを頭に浮かべていたら、そのとおりのことを純が話していて、ホラー好きの人の知識は、ほとんど共有されているんだと実感した。

「ただ、これから話す場所は、皆さんも知らないと思います。というより、具体的な場所は誰もわからないんです」

 しかし、不意にそんなことを言われ、どんな場所の話なのだろうかと疑問を持った。

「その場所に関する具体的な体験談を話す前に、共通した情報を先に話します。そこは、林の中にある建物で、既に使われていない、いわゆる廃墟だそうです。結構広い敷地に四階建ての建物が二つ並んでいて、駐車場や駐輪場、それと倉庫のようなものがあるとのことです」

 廃墟が心霊スポットになることも多い。ただ、そこは心霊的な危険だけでなく、老朽化による崩壊の危険があるという、別の恐怖があるので、そういった意味で行ってはいけない場所と思っている。

「また、この場所へ行った経緯は様々で、何の目的もなく知らない道に入った時や、迷った時など、そうした時に行ったという話。まったく別の目的地を目指していたのに、何故かそこへ行ってしまったという話。カーナビが案内したという話。様々な話があります。ただ、こうした話があるものの、具体的な場所はわかっていません。同じ場所へまた行こうと思っても、その場所に辿り着くことは絶対にできないそうです」

 そこまで話を聞いて、私はその場所について、ある考えを持った。


●<マナミ>: 場所そのものが怪異ということですかね?

●: 狐につままれたなんて昔話、あったね

●: 不思議な場所に迷い込んで、何とか戻れたものの、改めて探したら、そんな場所なかったって話かな?


 他のリスナーも、私と同じように考えている人が結構いるようだ。

「ここから、具体的な話をします。あるグループが、肝試しをしようと心霊スポットへ向かっていた時、道に迷ってしまい、しばらく車を走らせていたところ、この場所に着いたそうです。偶然辿り着いた場所とはいえ、楽しそうだからと中に入る流れになったものの、運転手だけは嫌な予感がして、中に入らなかったそうです。そして、しばらく外で待ったものの、他の人が帰ってこないため、何かおかしいと思い始めました。それで、スマホで誰かに連絡しようとしたところ、何故か圏外になっていることに気付いたそうです。結局、数時間待っても他の人が帰ってこなかったため、彼はスマホが通じるところまで移動して、知り合いに連絡したそうです。そして、すぐ戻ったのですが、一本道だったはずなのに、その場所に戻ることはできず、中に入った友人達は、現在も行方不明です」

 先ほど、この場所の特徴を聞いた時、外から見た際の内容しかないことが少し気になっていた。ただ、この話を聞いて、その理由がわかった気がした。

「次は、ある大学のサークルで起こった話です。このサークルは、サークルに入ったばかりの新入生を苦労させようといった傾向があり、新入生歓迎会の会場を新入生に決めさせるという、無茶振りをしていたようです。それで、ある新入生が歓迎会はバーベキューにしようと考え、場所を決めました。そして、当日は複数台の車で目的地へ向かったようです。それから、目的地に到着すると、外から何枚か写真を撮り、それを体調不良が原因で来られなかった人に送りました。この人達はそれ以来、行方不明だそうです。この話をしてくれたのは、当日体調不良で行けなかった、最後に写真を送ってもらった人です」


●: 自分は、そんな場所でも一緒に行ってくれる人を募集します

●: 中に入るとまずい場所なんだろうな

●<マナミ>: メールが送れたということは、先ほどの話と違って、周りが必ず圏外というわけじゃなさそうですね


「もう一つだけ、具体的な話をします。それは、見ず知らずの人同士で集まって、何かしましょうといった、SNSを通じたイベントでした。そのイベントに参加希望を出したものの、当日は寝坊してしまい、急いで集合場所へ車で向かったそうです。そうして、目的地に着いたものの、何か嫌な予感がして、中には入らなかったそうです。それから、中にいるだろう人達に向けて、大きな声をかけてみたものの、特に返事がなかったため、すぐに離れたそうです。この時、そのイベントに参加すると言っていた人達は、全員行方不明です」

 行方不明というのは、怖い言葉だと私は思う。それは、行方が「わからない」という意味だからだ。

 わからないことに対して、様々な考えを持ってしまい、もしかしたら大変なことになっているのではないかと恐怖を感じてしまう。それは、私だけじゃないと思う。

「私は、この場所が絶対に行ってはいけない場所だと思います。今後、今の話が思い当たる場所に迷い込むことがあったら、絶対に中に入らず、すぐにその場を離れてください。……以上です」


●: これは異世界に迷い込んだ話かもな

●: 異世界に迷い込むなら、自分は女性ばかりの世界へ行きたいです

●<マナミ>: 建物などの特徴があるのが、逆に不気味ですね


 コメントにあるとおり、異世界に迷い込んでしまうといった話もよく聞くものだ。ただ、この話の場所は、それともどこか違うように感じた。

「どこにあるかわからないから、心霊スポットってわけでもないし、というか、わからないからこそ、いつ迷い込んでしまうかわからない場所ってことでもあるもんね」

 純の言うとおりで、やはり、この場所そのものが怪異ということなのかもしれない。難しいのが、中へ入った人が行方不明になってしまっているため、この場所に関する情報が少ないという点だ。それは、この場所がどんな場所なのか、誰にもわからないということだ。

 前の話で、怪異の正体が情報だといった話があったけど、そう考えると、この怪異は危険なものに感じた。

「πさんの言うとおり、皆さんも、この話のような場所に迷い込んでしまった時は、絶対すぐに離れてくださいね」

 純がそう言ったけど、私は言われなくても入らないし、絶対に入りたくないと感じた。

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