表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/170

95、ガメイ村 〜保存蘇生

 すごいな……。


 目が離せなくなっているのは、僕だけではない。盗賊達も、また、クリスティさんに拘束されている魔族だという男も、蘇生魔法に釘付けだ。


 なんとも美しい神秘的な光が店内に広がっていて、幻想的な空間に迷い込んだような、不思議な気分だ。


 蘇生魔法を操るラスクさんが、とても神々しく見える。そして、それをサポートするクリスティさんは、ダークなオーラを放っていて、人間とは思えない畏れを感じる。


 保存蘇生っていう言葉は初めて聞いた。そもそも蘇生魔法を見たのは、僕の人生で2度目いや3度目だけど。



「へぇ、さすがルーミント家当主の伴侶だ。いや、青ノレアだから当然か。冒険者パーティの中では、青ノレアがダントツで、異常なバケモノが多いからな」


 ゼクトさんが、チラッと僕の方を見た気がする。


 ラスクさんは、僕やマルクが未熟な頃、青ノレアに勧誘して、僕達を保護してくれたんだ。成人したばかりの13歳の頃は、僕は超級薬師の神矢を得たことで、利用しようとする人達に狙われていた。またマルクは、後継争いから外すために、兄弟から命を狙われていた。だから、僕達にとってラスクさんは、かけがえのない恩人でもある。



「ゼクトさん、青ノレアは、レアスキルやレア技能持ちしか加入できないから、そう見えるんですよ。皆、いたって普通の冒険者です」


 ラスクさんがそう反論しているけど、青ノレアは、確かに凄すぎる人が多いと思う。冒険者ランクも、レジェンドランクが二人もいるらしい。この国全体でも、レジェンドランクは10人いるか否かという希少なエリートだ。


 ちなみに、ゼクトさんも、レジェンドランクなんだよね。僕は、一応、Sランク。実績的には、SSランクに上がる要件を満たしているけど、ランクアップはしていない。SSランクになると役割が増えるから、基本戦闘力の高くない僕には厳しいもんね。



「ふぅん、青ノレアといえば、ルファスだろ。それに、ヴァンも有名か」


 ちょ、ゼクトさん! 僕の方をチラチラ見ながら、僕の名前を出すのはやめて。絶対、からかってるよね。


「そうですねぇ、マルクもヴァンも、俺が勧誘したんですよ。だから最近は.俺は何もしなくても、貢献度をとやかく言われなくなりましたよ」


 ちょ、ラスクさんも、僕の方をチラチラ見てるし! 今の僕は、魔道具メガネをかけて、暗殺者ピオンの姿をしているのに……盗賊達にバレたらどうするんだよ。


 僕が、内心慌てている間も、ラスクさんは蘇生魔法の仕上げをしている。話しながらこんなことができるなんて、ほんと凄すぎる。




「うっ、うう……」


「えっ……えーっと」


 倒れていた二人が、ほぼ同時に目を覚ました。


「こんばんは。調子はいかがですか。記憶は大丈夫かな?」


 ラスクさんが優しく語りかけた。


 二人は、キョロキョロと辺りを見回し……魔道具メガネは、彼らを恐怖の色に染めていった。きちんと覚えてるんだな。


「あ、あぅ……」


「慌てなくて大丈夫ですよ。お仲間達が何も喋らないのは、彼女が封じているからです。蘇生直後は、魂がまだ不安定なので」


「あ、あぁ……」


 彼らは、ラスクさんが蘇生したことを理解したようだ。



「ゼクトさん、彼らのジョブはどうなったかな? 保存蘇生の成功率は10%程度なんだよね」


 ラスクさんにそう尋ねられて、彼らをチラッと見たゼクトさんは、すぐに口を開く。


「二人とも、ジョブに変化はない。奪われたスキルも戻っている。蘇生魔法を使うとジョブは再抽選されるから、同じジョブになることはほとんどないがな。それに、保存蘇生などという技能は、白魔導士にはない。どうしたんだ? その技能は」


 神矢ハンターでもあるゼクトさんが、知らない技能なんだ。


「ふふっ、これは暗殺者の技能じゃないかな? ちょっとした拾い物だよ。だけど、俺一人では使えないんだ。スキル『暗殺者』がいないとね」


 ラスクさんは言葉を濁しながらも、説明していた。保存蘇生を受けた人達に聞かせるためか。


「なるほどな。レア技能か。そのサポートをする『暗殺者』の能力が高いから、成功率100%だったわけか」


「たまたまだよ。だけど、クリスティさんの力の影響は大きいね。生と死を司るには、強い光と深い闇が必要だからね。あれ? 王命を受けたときに、そういえばゼクトさんは居なかったね」


「は? 俺は、クリスティに雇われてるだけだ。異界の彼も同じだ」


 王命は、暗殺貴族のクリスティさんと白魔導貴族のラスクさんに、ということみたいだな。確かに、王命は貴族に出されるのが一般的だ。




「さて、眷属候補16人のうち、2人は消えたわね? もう一人は置いといて、残り13人には印を付けてある?」


「あぁ、付けたぜ。完全に眷属化したら、光って知らせる印だ」


 うん? 宿主は捕らわれているし、眷属になった二人は、殺して関係を断ち切って蘇生したから、もうこれ以上スキルは奪われないんじゃないのかな?


 僕は疑問を感じたが、ピオンとして無関心を装う。後で、ゼクトさんに聞こう。


「じゃあ、その13人、ここに並ばせてくれる? 私も記憶しておくわ」


 クリスティさんがそう言うと、ゼクトさんは、盗賊達の間を歩いて回っていく。肩を叩かれた人は、拘束魔法が解除されているようだ。急に騒がしくなってきた。



「おい! おまえら……」


「あら、誰が喋っていいと言ったかしら? 私の後ろには、暗殺者ピオンだっているのよ?」


 はい? 僕?


「ピオンが、なぜ、ここに」


「そうだ! なぜ、ピオンが2階から降りてきた?」


 あー、そんなこと思い出さなくていいのに。クリスティさんの殺気が緩むと、盗賊達は僕のことを気にし始めた。


 クリスティさんが、僕の方を振り返る。何か話せと言っているのだろうか。無理だよ? 僕には、ごまかす自信はない。



「そういえば、ピオン。この屋敷で何をしていたの?」


 ちょ、待って。僕には、無理だって。ゼクトさんの方に助けを求める視線を送っても、ニヤニヤしてるだけだ。グリンフォードさんらしき人の方が、アワアワとして考えてくれているように見える。


 はぁ、仕方ない。



「クリスティさん、僕の行動は追わないと言ってませんでしたか」


 スッと目を細め、なるべく不機嫌を装う。すると、僕の身体から、デュラハンの全力かと思うほど強いオーラが放たれた。


 ちょ、やりすぎだよ……。盗賊達の大半が、威圧されて崩れるように倒れた。クリスティさんの拘束魔法も、ぶち破ってるじゃん。


 あー、このオーラは、デュラハンだけじゃないな。国王様が支配する闇の精霊バンシーのオーラも混ざって、異質なモノに変わっている。


「やぁだぁ〜、すぐに不機嫌になるんだからぁ〜。ごめんなさい〜」


 クリスティさんがそう謝ると、パッと弾けるようにまがまがしいオーラが消えた。これは、お気楽うさぎブラビィが手伝ったな。



『帰れって言えってさ』


 楽しくてたまらないという声で、ブラビィからの念話だ。ブラビィとデュラハンと、さらにバンシーまでが、悪ノリしてるみたいだな。先導しているのは、クリスティさんか。



「いつまでここにいるつもりですか。死にたいのか?」


 僕は、ピオンとして、不機嫌な声でそう告げた。



「やーん、もうっ。ラスクさん帰ろっ。狂人と異界の人も一緒に逃げるよ。機嫌の悪いピオンに逆らうと、私でも殺されちゃうかも」


 はい? 暗殺貴族の当主が何を言ってんの。


 彼女は、ぶるっと身震いするフリをして、指をパチンと鳴らした。すると、4人の姿はスッと消えた。



「ひっ、ひ、ピオン様、す、すみませんでした!!」


 魔族だという男が勢いよく頭を下げると、盗賊達は我先にと店から逃げて行った。


 はぁ……扉の修理をして行けよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ