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165【後日談①】ヴァン、極級ハンターになる

今回の後日談は、もうひとつの完結作で書いたことを、神獣テンウッドの視点で描いています。


 あたし、テンちゃ。


 今日は、ルージュと一緒に、ドルチェ商会の子供服屋さんに行ってきたの。ルージュは、あたしとしっかり手を繋いで、ちゃんと歩いて行ったよ。



 可愛い新作の服を、全部試着したの。ルージュは何を着ても天使みたいにかわいいの。あっ、天兎の天使がかわいいって言ったんじゃないよ? ルージュがすっごくかわいいって言ったんだよ?


「テンちゃ、かわいい!」


「そう? えっ、これよりこっちがかわいい? ルージュは、こっちの方が気に入ってなかった?」


 フランから、買い物に行ったら一つしか買っちゃいけないって言われてるの。ルージュの教育のためなんだって。その教育ってよくわかんないけど、主人あるじが、一番のお気に入りを一緒に探す方が楽しいよって言ったの。確かに、どれにするかをルージュと相談するのは、とっても楽しいの。


「テンちゃのが、かわいい」


「じゃあ、これをお揃いで買おうね」


「うん!」


 ルージュは、別の黄色いフリフリのワンピースを着たときに目を輝かせてたのに、あたしが似合う白いワンピースにすると言ってくれたの。ルージュってば、ほんとに優しい子なの!


「着ていかれますか?」


「うん、そうするよ」


 お揃いのワンピースを買ったあと、店員が気を利かせて、奥の部屋を貸してくれたの。ルージュと一緒に新しい白いワンピースに着替えて、ルージュの髪もかわいく結んだよ。


「まぁっ! なんて素敵なのかしら」


「うちの娘にも買って帰ろうかしら」


 着替えて店に戻ると、なぜか注目を浴びていたの。お客さん達が、ルージュのかわいさに驚いたみたい。


 だけど、白いワンピースは危険なの。店内で魔法は使っちゃダメって言われてるから、店を出たらすぐにバリアを張らなきゃね。ルージュは、転んでも泣かない強い子だけど、白いワンピースが汚れてしまうもの。




 あっ、後日談だっけ。えーっとね、主人あるじがお仕事リストの貴族家を全部終わらせたのは、あの日から2年とか言ってた日より、だいぶ遅かったみたい。ゼクトが押し付けすぎだと思うよ。


 ドゥ教会に戻ってからは、主人は暇なときは教会の片隅で、ずっと薬師をしていたよ。無料で薬がもらえるから、王都からもたくさんの人が来ていたみたい。


 主人は誰にでも、薬を作ってあげるの。図々しい人も少なくないから、ルージュと一緒に中庭で見張りをしていたの。商人っぽい奴は、教会の前で追い払ったよ。ドゥ教会の信者しかこの時間は教会に入れないって言って少し脅したら、みんな青くなって帰っていったよ。




 それからねー、主人の従属が増えたんだよ。最初に増えたのは、チビちゃだよ。名付け親は、光の精霊ちゃんなの。光の精霊ちゃんってセンスが良いの。かわいい名前だよね。


 チビちゃは、ラフレアから生まれた新種の鉱物系の魔物なの。血のような液体なんだけど、すっごく寒がるから、主人がフェニックスの変異種の魔石に融合させたんだよ。


 もともとは性別がなかったけど、融合した魔石がフェニックスの変異種の男の子だったから、チビちゃは男の子になったの。でも、自分のことをあたちって言うし、かわいい赤い髪でいつもオドオドしているから、女の子に間違えられることが多いみたい。


 それから少しして、ルージュが3歳の誕生日を迎えたの。チビちゃは道化師の神矢を使って人の姿になってるから、あまり背が伸びないみたい。だから今は、ルージュの方が背が高いよ。



 その次はねー、マネっ子ちゃんが従属になったよ。ボックス山脈にたくさんいるマネコンブっていう、深緑色のねっちょりした魔物なの。


 マネっ子ちゃんは、いろいろな種族に擬態するから、人の姿もたくさんなの。でも、緑色の髪だから、姿が変わってもすぐわかるよ。少し色黒な肌をしてるって主人が言ってたよ。



 そうそう、竜神の子達が、白い魔物の姿から大人の姿になったよ。竜神ちゃん達は、二人が女の子で、一人が男の子だったみたい。


 新たな竜神になった竜神ちゃん達は、あたしより強いかもしれないの。ということは、どの竜神よりも強いってことだよ。動くラフレアである主人が関わったからだと思うの。


 竜神ちゃんのうちの一人は、あたしと相性が悪い青竜だったよ。だから、あの子には、あたしはケンカを売らないことにしたの。私が生まれた氷雪樹林を担当するみたい。キラキラした綺麗なとこなのに、寒いから嫌だって言ってたよ。




 あっ、それからねー、主人は覇王を失ったの。よくわかんない神官達が、主人が極級ハンターの条件を揃えたときに、強制的に奪ったみたい。


 そのとき主人は、すっごく焦ったみたいなの。覇王が消えたら、今まで覇王を使っていた従属がみんな、牙をむくって思い込まされてたみたい。


 神官三家って、ほんとクズだよね。ノレアの坊やが未熟なんだと思うよ。天兎のアマピュラスも、そんな神官三家に味方したりして、死ねばいいのにって思ったよ。


 でもね、主人の従属になってるあたし達って、覇王があるから主人と一緒にいるわけじゃないの。そもそも、術返しできるコも多いんだもの。


 あたしは、主人がいなくなったら、氷の檻に戻されてしまうから、覇王なんかなくても、従属でいるに決まってるの。ルージュと離れるなんて、考えられないもの。


 泥ネズミは、主人の覇王が消えたときに一旦死んじゃったけど、すぐ近くにいた土ネズミが、蘇生して生命エネルギーを与えてたよ。バーバラってば、弱い魔物の生死を自在に操れるのね。あたしにはできないから、ちょっとびっくりしたよ。


 覇王がなくなって一番困るのは、従属間の念話ができなくなったことなの。あたしなら、誰とでも話せるけど、ボックス山脈にいるコたちとの通信は、ちょっと厳しいの。


 だから、マネっ子ちゃん達が、従属間の伝達役をすることになったんだよ。マネっ子ちゃん達は、防御力と魅了に特化してて、戦闘力は弱いの。ボックス山脈に棲んでるけど、ボックス山脈の神の結界はすり抜けられるみたい。あの結界って、日々性質が変わるんだけど、強い魔物を閉じ込めてるから、弱い魔物には効かないの。あたしは神獣だから、通り抜けられるけどね。



 そのあと、しばらくして、主人は竜神から、竜を統べる者っていうレア技能を押し付けられたよ。覇王が邪魔で渡せなかった技能だって言ってた。


 竜神の祠の近くだと、主人はめちゃくちゃ強くなるの。極級ハンターになったことで底上げされた戦闘力が、さらにドバッと増えるみたい。よくわかんないけど、ゼクトが、覇王よりぶっ壊れ技能だって言ってたよ。


 だけど、主人はその技能のせいで、竜神の仕事を手伝わされるみたい。新たな竜神ちゃん達の教育係も兼ねてるのかもね。




「テンちゃ、フロリスちゃんのとこ、いく?」


 大変! ルージュが起きてきちゃったわ!


「ルージュ、お昼寝はもういいの?」


「うん、ゆめにでてきたの」


「フロリスが夢に? どんな夢だったか教えて」


「うーん、わすれちゃった。でも、かわいいおはながいるよ。フロリスちゃんは、おはながすきだよ」


「あっ、そっか。もうすぐフロリスの結婚式だもんね。ルージュは、その予知夢をみたのかな」


「けっこんしき?」


「そそ、フロリスは、フリックと結婚するんだって。あっ、結婚式に着て行くお揃いのワンピースを買わなきゃ!」


「テンちゃ、ねむいの」


「じゃあ、お部屋に戻ろうね」


 あたしがそう言うと、ルージュはちっちゃな手をのばして、あたしの手をきゅっと掴んだの。ふふっ、甘えん坊さんね。




 アランがファシルド家の次期当主に選ばれた日、フリックがフロリスに求婚したの。その日までフロリスは、フリックが国王だとは知らなかったみたい。


 主人が、フリックは腹黒だって言ってたよ。断らせないために、大勢の人前で求婚したんだもん。あたしも、腹黒だと思うよ。


 だけどフロリスが戸惑ったから、無期限で延期して、ただ一応、婚約という形になってたんだって。


 だから、もっと先の話かと思ってたけど、フロリスが16歳になるからって、急に決めちゃったみたい。貴族の女の子って、13歳の成人になってすぐに結婚する人が多いからかもって、主人が言ってた。人間ってなんだか、いろいろと面倒くさいよね。



 ルージュは、いま3歳だけど、フロリスみたいに恋をする日がくるのかな。変な男は、あたしが近寄らせないようにしなきゃね。



【次回予告】

ヴァンの極級ハンターとしての活動

(ここから、本当の後日談になります)


これまでとは更新日を変更させてください。

次回は、8月4日(金)に更新予定です。

よろしくお願いします。

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