夢との語らい
「魔法少女、ドリーミンです!」
ドリーミンと名乗った少女が、可愛らしく決めポーズを取る。
たしかに、俗に言う魔法使いという格好ではなく、子供向けのアニメに出てくる、いわゆる魔法少女と呼ばれる子たちの服装に近い。
「オニオン」
「ゴートです」
ヤワメが訝しんでる間に、残りの2人が返した。
「やぎとたまねぶふぉ!」
その返答に魔法少女は吹き出したが、すぐに咳払いをし「ごめんなさいねぇー」と謝罪をした。
「私は、ヤワメ。この子たちの保護者だよ。そんな事より、正気かい?この依頼を受けるなんて」
「もちろんですよぉー。ドラゴンがどの程度かは知りませんけど、私負けませんよぉー」
言いながら、可愛らしく胸の前で拳を握る。
ああ、バカとバカは惹かれ合うのかと、ヤワメは頭を抱えた。
が、それでは自分もバカという事になるのではないかと思い、今回がたまたまだという事に無理やり結論付けた。
「魔法少女?と言ってたけど、見たところ杖も何も持ってないよねキミ。そんなキミに実力があるとは思えないけど」
「必要ないですからねぇー」
しれっと言ってのけた。
事実、高位の魔法使いは杖を必要としない。当のヤワメが使っていないのが何よりの証拠である。
だが、人間でそのレベルになるには、寿命の6割ほど修行に費やした一握りが、やっと辿り着くのが関の山だ。
「こう見えて、攻撃型の魔法はほとんど使えるんですよぉー、炎系だけはてんでダメなんですけどねぇー」
ウインクしながら、舌を少し飛び出させる。
いちいちあざといなと思ったが、口にするほど野暮ではない。
「信用できない。まずはこのゴブリン退治で試しに力を証明してほしい」
ヤワメはドリーミンに依頼書を見せる。オニオンのために見繕っていたものの内の1つだ。
「え?いやですよぉー」
一蹴された。
「受けないなら、その依頼書は私にくださいねぇー」
と、オニオンからドラゴンの依頼書を受け取る。
それを馬鹿正直に渡す物だから、オニオンも成長したものだ。
「おやおや?なんで渡しちゃうかな!?」
「欲しがっていたから」
ヤワメがあたふたしている間に、ドリーミンはとっくに受付に走っているのであった。
受付の人間が、ヤワメのように面倒見のいいタイプなら、この少女を止めていたことだろう。
だがこの組織にとって、少女1人が死んだところでなんの痛手もないのだ。また依頼書を貼り直すだけでいい。
少女は受付を終わらせると、鼻歌を歌いながら依頼所を後にした。
「ヤワメ、どれを受ける?」
そんな事は関係なしにオニオンが聞いてくる。
ここで少女を見捨てるのは簡単だが、目覚めが悪い。
オニオンとヤワメであれば助けることができる。
だが、力を持っている事を周りに知られたくはない。
ヤワメは悩みに悩んだあと
「あーもう!あの子を追うよ!」
頭を掻きむしりながら叫ぶのであった。