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たまねぎが異世界転生して無双になる話  作者: なきめ
フルーレンベルジュ
6/21

たまねぎお逃げになる

太陽が沈み、月が明るくなってから数刻が過ぎた。

屋敷の中でも特に広い部屋に当主はいた。


「美女に妖精に高価な剣、さらに身元も知れぬ旅人という身分。これはいい金になるぞ」


ワイングラスを片手に高笑いをしながら、ケージに閉じ込めたヤワメにイヤらしい視線を向ける。


「さすが悪名高きフルーレンベルジュ。そんな事だろうと思ったよ」


「キミは多少頭がいいみたいだが、仕える主人を間違えたようだな。まあ、愛玩妖精程度では意見出来ないだろうな、ははは」


この世界において妖精は人間を毛嫌いしている。

だが、人間の世界を夢見て、人間の社会を覗きにくる妖精も多少はいる。

そんな妖精たちは例外なく人間たちに捕まり、魔力を封印する首輪を付けられ、愛玩用の物として売買されていた。

無論、ヤワメは愛玩用などでは決してない。しかし、ヤワメはこの首輪のダミーを所持していた。

さらに、この屋敷に入る前のいざこざに首を突っ込まなかったことにより、もはやそれと疑う者は誰もいなかった。

ヤワメはクスクスと笑う。金に汚いバカは、まさか自分が騙される側に立たされるなんて予想もしない。騙しやすくて仕方がない。

小さな爆発音が響き、ケージの錠前が粉微塵になる。


「こんな物で私が捕まえられる訳がないだろう」


突然の出来事に、当主は慌てふためく。

ゆっくりとケージから出てくるヤワメを、怯えた目で見つめながら後ずさった。


「な、なぜ妖精ごときにこんな事が!?」


「おやおや?妖精をご存知でないのかな?」


邪悪な笑みを浮かべながら、哀れな男にそう問うた。



一方そのころ地下の牢。


「退屈」


退屈していた。

何もないからである。

牢だから何もないのである。

オニオンが体を揺らしながら遊んでいると、誰かが階段を降りてくる音が聞こえた。


「あの〜」


少年だった。優しい顔立ちに、オニオンは少し懐かしさを感じた。


「誰?」


「ボク、ここの当主の息子です」


その容姿からして、10歳前後。オニオンは、彼こそがあの人だと確信した。


「私はオニオン。キミは?」


「ボクは……」


少年が言いかけた時、上の階から小さく破裂音がした。


「ひえ」


少年が驚き声を上げる。

オニオンは迷う事なく鉄格子を開いた。


「ええ!?」


またも少年は驚く。忙しい。

だがそれも仕方がない。目の前の女性は鉄柱を折り曲げたのである。まるで丸めた紙かのように当然に。

屋敷で何かが起こっている。ともすればこの少年に危険が及ぶ可能性がある。オニオンは急いで音のした方に向かう。

だがあまりにも軽率だった。もちろん少年はオニオンを追う。自ら少年を1番危険な場所へ誘導したのだった。

オニオンは音のした部屋であろう扉を勢いよく開く。同時に熱気が肌に伝わってきた。


当主が、火だるまになりながらその場を転げ回っていた。屋敷の所々に延焼ダメージが入っていた。

ヤワメが蔑むかの様な冷たい目でそれを見下している。

遅れて、剣を両手に抱えた少年がその場にたどり着く。


「見るな!」


オニオンは珍しく大きな声を上げて、その中を覗こうとする少年の目を塞いだ。

オニオンの行動とこの場の熱気で、少年は何が起こっているのか予想が出来た。抵抗はしなかった。


「おやおや?助けに行こうと思ってたんだけど、その必要はなかったみたいだね」


ヤワメはそんな2人に対し、いつもの顔でそう言った。


「さて、逃げようか」


さすがに警備兵が気づいたのか、屋敷内が騒がしくなっている。3人は窓から飛び出し、屋敷から離れた。


火元はすでになくなり、黒い跡だけが残っていた。



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