たまねぎ妖精にお合いになる
キャラが定まらんぼるぎーに
そこにいたのは妖精だった。背中に生えた羽をパタパタとさせながら宙に浮いていた。その明るい金髪が揺れるたびに、緑のインナーカラーが顔を覗かせる。
「おやおや?妖精をご存知ではないのかな?」
ボーっと見つめているだけのオニオンに、妖精が声をかける。
「妖精族。小さな神型(つまるところ人型)をしていて背中に羽の生えた種族。魔法適正力が高く、人間では取得できない魔法を使える者も少なくない。雌雄がなく新しい妖精は妖精樹という大木から生まれるが、ほとんどが人間の手によって滅ぼされており、現在では残り1本しか存在していないため、その数は年々減り続けている」
「う、うん。もうそのくらいでいいよ……」
質問に懇切丁寧に答えたオニオンに、若干引いている妖精がそこにはいた。「詳しいんだね」と視線を宙に泳がせながら言う。ああ、声をかけなければ良かったかもという後悔を隠しきれていなかった。
「くだんの件で妖精は人間を警戒しているはず。なぜ人間の私に声をかけたのか、疑問」
そんな妖精などお構いなしにオニオンは聞く。
「殆どの妖精が人間を毛嫌いしているけど、さすがに全員ではないからね。私はそんな妖精社会がイヤで、故郷から飛び出してきた身ってわけさ」
自分が体験したことだけが全てだろう?と妖精は手を広げる。
「というわけで私はなんとなーくだけど、キミのことが気になる。どうだろう?一緒に行かないかい?」
「断る」
即答であった。オニオンは妖精に興味がなかった。
当たり前だ。彼女を動かせるのはあの人のみなのだ。
だが、ここで「はいそうですか」と引き下がる妖精ではない。
「おやおやおや?ちょっと待ってよ!私は役に立つよ〜。後悔しちゃうかも?」
「たとえば?」
妖精は「そうだねえ」と人差し指を頬に当てたあと
「さっきキミが言っていた通り、私は魔法に長けているし、知識もそれなりにある。たとえばそこに書いてあるフルーレンベルジュ。心当たりがないこともないよ」
と、答えた。
それを聞いたオニオンは当然のように「行こう」と返した。
妖精は満足げにふふんと鼻を鳴らし
「私は妖精のヤワメ。キミは?」
「オニオン」
「いい名前だね。それじゃ行こうか、オニオン!」
西か東か北か南かはよく分からないが、どこかを指差しながらそう言った。