待たせたな
木々が生い茂る森の中。
彼らの集落は存在した。
獣人族の村である。兎や猫やら犬やらのお耳とお尻尾を備えた種族。さらに彼らの平均身長は140cmほどである。すごいのである。
彼ら獣人族は人族と良い関係にある。普段は森に住んでいる彼らだが、人族の街にお仕事に来たり、遊びに来たりと交流は深い。
この人族の危機に、1人の戦士の少女が立ち上がった。
彼女の名前はコリン。
鎖を自在に操り戦うウサミミ少女だ。
鎖の両先端には刃が備わっており、それで獲物を斬ったり刺したりして戦う。
コリンは、その類まれなる体幹の強さ故に出せるアクロバットな動きと前述の鎖を合わせ、非常にトリッキーな戦い方を得意としていた。
「じゃあ、行ってくるね」
コリンはお墓に手を合わせた後、胸にかけたロケットペンダントを握りしめ、集落を去った。
かつてコリンには1人の妹がいたが、数年前に心ない魔族により、その命を奪われていたのだ。
その時に人族にも協力してもらい、なんとかその身体だけは故郷へと帰す事が叶った。
魔族に恨みがない訳ではない。
しかし、それ以上にあの時の恩を返したくて彼女は今まで鍛錬を続けてきたのだ。
私は1人でも多くの人間を救う。
その身が朽ちようとも、最後まで人間を。
彼女が向かう先は王都。
王都の中でも無類の騎士ベイリー・ドズマズマグが、少数精鋭部隊のための凄腕を集めていると言う。
いかなる時も激戦の中に飛び込まなければならない危険な部隊。
彼女はその中の1人になろうとしていた。