悪夢の再来
「カタメ……寒いからやめてくれるかい?」
寒かった。先程までは陽気ないい感じの気温だったのだが、今はまるで雪国にでもいるかのように空気が凍てついていたのだ。
水飛沫を浴びていたオニオンは冷凍玉葱になっていた。
「ああ、つい癖でさ。ごめんね」
美人の後ろから紫色の妖精が飛び出してきて、意地悪そうに笑いながら言った。
紫色の妖精、おそらくカタメという名の妖精が指を鳴らすと、周囲の空気が元に戻った。
「こうしておけば、余計な獣が寄ってこないんだよな」
美人の周りをぐるぐる飛びながら言う。美人は冷たい視線を向けたまま微動だにしない。
「それでさヤワメ。なんで未だに人間なんかといるんだ?」
「おやおや?私が思うにキミも人間といるようだけど?」
ヤワメの返しにカタメはぷーくすと吹き出した。
「お前にはこの方が人間に見えるのか?」
大袈裟に両手を広げ、目を細め、大きく口を歪ませて見せる。
「この方こそ、人間を滅ぼす神さ」
その言葉を聞いた瞬間、3人は即座に臨戦態勢をとる。
ドリーミンが、先手必勝と言わんばかりに飛び出した。
それまで微動だにしなかった美人がここで初めて動く。ドリーミンに手を向けると、空気に囚われたかのようにドリーミンの動きが止まる。
そのままその手を払えば、まるで操られているかのようにドリーミンは払われた方向へ投げ飛ばされた。
木々を薙ぎ倒しながら跳ね転がり、幾度も地面に叩きつけられ、その動きが止まった頃にはもうドリーミンは動かなくなっていた。
「あと、2人か」
オニオンと虚空を交互に指差しながら、美人が口を開く。もちろん差した先は虚空などではない。
不可視魔法を唱えられているゴートがいる場所だ。
ヤワメは察した。逃げなければ殺される。
オニオンには勝ち目がない。
が、ゴートに殺意を向けた奴を、オニオンが放っておくはずがない。
神速。まさにそう呼ぶに相応しいほどの速度で美人に向かい、目では追えない程の瞬間でその刀を抜き、その喉元を捉えた。
美人がゆらりと揺れる。
命鈴は、その首横にある空気を突いただけだった。
まさかの出来事にオニオンは唖然とする。無論その隙を許してもらえるはずはない。
美人は一歩踏み込み、オニオンの腹をめがけ掌底を放った。オニオンの体は後方へ大きく吹き飛ぶ。美人はその手から離れた命鈴を拾い、未だ宙を待っているオニオンに向けて投げつけた。
命鈴は、オニオンよりも速く空を飛び、やがてその顔を貫こうとしていた。




