夢との戦い
「あー」
ヤワメの頭の中はかき回されていた。
予想内の予想外。なにをどうすればこうなるのか。
ドリーミンは、現れたドラゴンを出会い頭に殴り伏せたのである。
もちろん、ドラゴンが人型ほどの小さいドラゴンだったという事ではない。人間の数十倍はあろうかという巨躯であったにも関わらずだ。
彼女はドラゴンの頭上まで一息で跳ね上がり、そのまま額に拳を叩き込んだ。
猛り狂ったドラゴンは、咆哮をあげながらドリーミンに襲いかかる。
そんなドラゴンを弄ぶかのように鼻先を踏み台にして、後ろに跳ねる。
空中で華麗に一回転して、掌をドラゴンへと向ける。
掌から発せられた無数の風刃がドラゴンを切り刻む。
痛みによって怯んだ隙に、木を踏み込み勢いで距離を詰め、再度拳を叩き込んだ。
巨躯が沈む。空中に浮いたまま右手を上げ、その手先から身の丈を遥かに超える水の刃を作り出す。
落下の勢いを使い、そのまま刃で首を切り落とした。
刃は途端に大きな水飛沫をあげ、オニオンたちはずぶ濡れになった。
「冷たい」
鼻歌を歌いながらドリーミンが戻ってくる。
「すごい」
オニオンとゴートは、拍手をしながら素直にドリーミンを褒める。
だがヤワメの心中はもちろんそうではない。
「えと。キミは魔法使いでは?」
至極真っ当な意見である。
魔法使いは拳を使ってドラゴンを叩き伏せるようなことはしない。
だが
「魔法少女は肉弾戦もいけるんですよぉー」
へぇーっと思った。
そんなことより、こんな事は何とかして隠したいというのがヤワメの本音だ。
何とかしようと頭を巡らせていたその時だった。
「あらあら?まだ人間なんかと遊んでるんだ、ヤワメ」
不意に聞こえてきた声に、ヤワメの背筋が凍る。
声のした方にいたのは、いつかたまねぎ、もとい魂葱
時代の時に出会ったあの美人だった。
「カタメ……」
がらにもなく、ヤワメの声は震えていた。