たまねぎお亡くなりになる
身内ネタです
とある人が住んでいた。
人はお野菜を育てていた。
毎日お世話をし、毎日お野菜に話しかけていた。
その中にたまねぎがいた。
たまねぎは嬉しかった。
必ず立派に育ち、美味しく食べてもらおうと思っていた。
だがそれは叶わなかった。
お野菜泥棒である。
そいつは畑を荒らし、お野菜を食い散らかした。
異変に気づいた人が慌ててやってきた。
お野菜泥棒はペットボトルのような何かを取り出し、中の液体を人にかけた。
そして火をつけた。
人はその場を転げ回った。
そしてたまねぎは延焼ダメージで死んだ。
ふと気づくと、見知らぬ場所だった。
自分の身体は青白いもやもや玉になっていた。
「お気づきになられましたか」
とびきりの美人がいた。しかしたまねぎにはこの女性が美しいとは思わなかった。
たまねぎだからである。
「あなたは人の争いに巻き込まれ、その命を落としました」
美人が話を続ける。
だが、たまねぎは言葉を返すことが出来なかった。
たまねぎだからである。
「なんという不幸でしょう。願うならば、来世こそはあなたが望むがままの未来に」
たまねぎが来世に望む事などなかった。
なぜならたまねぎだからである。
ただただ
あの人を救うだけの力が欲しかった。
それだけだった。
「なるほど、あなたを育てた人間を救いたい、それだけがあなたの願いですか。なんと立派な」
美人がおよおよと泣き出した。
ひとしきり泣いたあと「分かりました。特例です」と呟くと、仰々しく両手を上げ
「生まれ変わったかの人を救う力をあなたに授け、同じ世界に転生させてあげましょう!」
と声高々に宣言したのである。