断罪後のイザベル一家
やっと、本題に入れそうです。
イザベルとフランシスは、部屋に戻った。イザベルは、寡黙になり思案しているフランシスに対して、
「さあ、まだ朝食前だけれど、私の作ったクレーム カタラーノ食べましょう!」と明るく言い放った。
やっぱり、ビッテ草は一時間で効果が切れるのよね。フランシスったら、なんだか急にだんまりだし、信じられないのかしら。
はぁ。。あと一週間で、断罪、国外追放なのに、私ったら、朝から野菜作って、お菓子を作っているのよ。おかしいわ。お菓子がおかしい。ふふふ。ダジャレを考えている暇なんてないのに。
イザベルがそんなことを考えているなか、フランシスは、クレームカタラーノを食べている間も顔色一つ変えず、何か思案しているようだった。
「フランシス、お味はどうかしら?」とイザベルは聞いたが、すぐに返答はなかった。
フランシスは、すぐにクレームカタラーノを食べ終えじっとお皿を見ている。
そして、重い空気の中、やっと声を発した。
「イザベルお嬢様、美味しいお菓子を作っいただきありがとうございました。」
イザベルは、とりあえずこの重い空気が動いたことにほっとした。だが、次にイザベル自身も何か言わなくてはとおもうのだけれど思いつかない。
フランシスは、少しの間をおいてやっと話し出した。
「確かに、、イザベルお嬢様なのですが、私の知っているお嬢様より、少し大人のような感じがします。
先程の、クレームカタラーノといい、謎のお茶を振る舞う仕草は私が知っているお嬢様では、、ありません。
しかしながら、細かい言葉の言い回しだったり、手を動かす癖などはイザベルお嬢様だと思います。なので未来のお嬢様という話は信じようと思います。」
至極真面目な顔でフランシスは話した。
イザベルは、ほっとした。これから一週間で断罪回避するためには、どうしても味方が必要だ。
しかしながら、イザベル1人では出来ることも限られてしまう。
情報収集だってしなければならない。ここでつまずいたら為す術もない。
はあぁ。よかったぁ。。とイザベルは、心から思った。
「お嬢様に、今朝のことについても色々聞きたいことはあるのですが、、、
まず、お嬢様がこの地を離れた後、どなたがここの領主になったかおわかりですか?あと、近隣諸国を含む状況で何かわかっていることがあればお話ください。」
イザベルは、自分の記憶を必死に思い返していた。
まず、イザベルは、国外追放後は生きていくのでいっぱいだった。祖国のことが気にならなかったわけではない。。でも、なるべく考えないようにしていた。なので、あまり詳しくその後ガラント領がどうなったかは知らなかった。しかしながら、自然と耳に入って来ることは多かった‥
イザベルが追放されて辿り着いたマルディ国は、ナント王国から見れば南方の国で様々な植物があり、貿易も盛んである。ガラント家も、代々北の港町を持つ領地としてマルディ国を含む貿易を担ってきた。
追放後、イザベル達ガラント一家は植木職人でもあるパガニーニのツテで、小さな庭付きの一軒家を借りた。
イザベルは、そこで野菜づくりをしたり、文筆業を生業に生活しはじめた。
また、10年の間に父であるステファンは、小さいながらも貿易商人として活躍し始める。
イザベルの母ミユーは、美しい焦げ茶色の髪と眼を持ち豊満な身体の持ち主である。もともとは、東方の国の出身で踊りを得意としていた。交換留学生としてナント王国にきていた際、イザベルの父であるステファンと出会い、様々な反対があったものの結婚した。
イザベルが、10年の間忙しくても心が安定していたのは、この母のおかげである。母は、言葉をはじめ様々なことに万能だった。イザベルもマルディ語を含め数ヶ国語は学んでいた。しかしながら、全て母国語と同じように話せるわけではない。しかしながら、ミユーは、全ての言葉が完璧であった。また、野菜づくりや料理もできた。ガラントにいた時は、何もしていなかったのでわからなかったのだが。母に様々なことを教えてもらった10年ともいえる。
イザベルは、色々なことを思い出しながら、思いついたことだけをただ話していた。脈絡がない話もあったが、フランシスは時折メモをとって必死に聞いていた。そして、また、じっとメモを見ながら考えこんでいた。
「これは、もしかすると……恐ろしく大変な事かもしれない…」
フランシスは、小さな声でつぶやいた。