執事フランシスの胸のうち
フランシスは、上品にお茶を飲みほした。
「なんて爽やかな…このようなお茶を飲んだことはありません。とても美味しいです。イザーは本当に素敵な女性ですね!それに、俺に最初に飲ませてくれるなんて、涙が出そうです。」と顔をほころばせて喜んでいた。
イザーというのは、フランシスが、イザベルが小さい頃に呼んでいたあだ名である。執事見習いになった10歳の頃からは呼ばれなくなったのだが、、
それにしても、効き目抜群ね!ビッテ草だけだとほんのり甘いだけで美味しくないのよね。ミントと合わせると爽やかさが増すからお茶として飲めるのよね!
お部屋にミントなどのハーブも数種類、花と一緒に飾られていて良かったわ。
イザベルは、早速フランシスに聞いてみる。
「フランシスに褒めてもらえてとても嬉しいわ。
ところで、さっきは何故退席したの?カミーユ様に関係があることなのかしら?」
フランシスは、苦しそうな顔をした。
「俺は、イザーが大切なのです。誰よりも。。イザーは、努力家でカール皇子のために、日々努力しているのを知っています。美容、ドレスは勿論のこと。カール皇子に少しでも注目してもらうために、歌を、習って披露したり、、、前回のパーティーでは、飛び込みで歌を歌ったイザーにみんな注目しましたよね。でも、その後、あのカミーユまで歌って、、それがまぁ、天使のような歌声で。イザー面目丸つぶれというか、カール皇子イザーのこと無視でカミーユだけ褒めていましたよね。
狩猟大会の時に刺繍のハンカチをイザーが渡そうとしたときなんか、悔しくて俺泣きそうだった。イザーが一生懸命刺繍した「お城と皇子と花束たくさんモチーフの特大ハンカチ」をカール皇子に渡そうとしたとき、他の女性達も群がってイザーのハンカチは、踏まれてボロボロ状態。イザーがハンカチを探している間に、カミーユは、悠然と現れてカール皇子に刺繍入りハンカチを渡したんだ。
あのときの皇子とカミーユの目と目の合わせ方…
二人だけの世界作って…腹ただしい。
パーティにカミーユさえいなければ、、イザーがカール皇子と話す機会があると思うのです!!
婚約者は、カミーユかもしれませんが、うちのイザーだって美しいし、努力家で、そして、面白い!
全く、チャンスがないのはおかしいと思うのです。
それで、俺は次のお茶会では、カミーユに睡眠薬入りのお茶かお菓子を用意して、イザーにカール皇子と話す機会を作って欲しいと思っているんです!
そのために、あちこちのツテを頼っているのです。
イザーなら喜んでくださいますよね。
この前、イザーもカミーユに対して言っていたではないですか。それも嫌味たっぷりに。
「そんなに儚げでまるで妖精のようでいらっしゃるのに、今日もパーティに参加して、、大丈夫かしら。お休みになったら良いとおもうのだけれど。」と。
カミーユ、ああ見えて策士だからね。平然として受け答えしていたけれど。
なので、俺なりに考えて行動しているのです。
いくらイザーがやりすぎだと反対しても駄目ですからね。
イザベルは、フランシスの子供の頃のように早口でまくし立てて話す様に少し驚いた。
幼少期のフランシスは、嫌なことがあると、よく泣いてガーッと文句をいうタイプだった。いつの間にか冷静とか知性的とか言われて、すっかり忘れていたのだが。
それにしても、睡眠薬なのよね。何故なのかしら?フランシスのしたことは、毒殺未遂だったはず。
イザベルは、多少混乱はしていたのだが、意を決してフランシスにこれから起こる未来のこと、自分が10年後の未来の自分であることを話すことにした。