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3分読み切り短編集

ひなまつり

作者: 庵アルス

 三月三日、桃の節句。

 ひな祭りと言われるこの日は、女きょうだいがいない男にとって、全く無縁の行事である。

 ただ、スーパーやコンビニではひなケーキなるものが売られていて、祝う女子のいない我が家は買ってもらえなかった悔しさばかり覚えている。

 女の子がいる家はケーキが食べられて羨ましいなぁと思うばかりだった。

 そんなことをふと思い出して、会社の昼休みに同期と三人で話していた。

 同期は、姉がいるのと、妹がいるのといて、僕だけが兄貴と男ふたり兄弟だ。

「⋯⋯で、実際ひな祭りって男はなにがあるの?」

 ふたりの答えは早かった。

「湿気ったひなあられが貰える」

「はいはーい、うちは妹が食わなかった菱餅とかぼた餅が回ってきた」

「残飯処理じゃん」

 思わずツッコミを入れてしまった。

 もっと、女の子のお祭りらしい、華やかな過ごし方を期待していたのだが。

「え、女子ってそんなに食わないの?」

「や、それなりに食うよ。でもケーキとか、ちらし寿司食べるし、流石に腹いっぱいになるんじゃない? 俺は嬉しかったよ」

「うちは妹が和菓子好きじゃなくてさぁ。でも俺のいとこも男ばっかりで、妹が唯一の女の子の孫なんだよ。そんで、じいちゃんとばあちゃんが張り切って買ってきて、食べずに俺に回るんだけどね」

「意味あるの、それ?」

 兄としては優しいのだろうが、妹の身にすればいい迷惑だったろうなと可哀想に思う。

「あ、端午の節句はこどもの日で、男女関係なくお菓子食べれたりするじゃん?」

 我が家でも、こどもの日はケーキを買ってもらって食べていた。兄貴の分と喧嘩にならないように、それぞれ好きなケーキを選ばせてもらったのが懐かしい。

 それを言うと、姉持ちの彼は遠い目を、妹持ちの彼は渋い表情を浮かべる。

「いや、まぁ、ひな祭りは姉貴のお祝いだからって、こどもの日は俺優先してもらったけど⋯⋯やっぱり姉貴も同じケーキ食べてたな」

「俺はいとこたちとじいちゃん()行ってたけど、やっぱり妹の方が可愛がられてたよ。妹が喜ぶからってケーキ買ってある感じ。あ、でも兜と鯉のぼりはめちゃくちゃでかいの飾ってたな」

「あー、うちは父さんがちっさいの作ってたな。マンションだったから、でかいのかざれなくて」

「へぇ、器用なお父さんなんだな」

「なー。残念ながら似なかったんだけど」

 突き放したような言い方に、ふたりして吹き出す。

 しかしこうして子供の行事を振り返ると、なにかとケーキを用意するんだな、と驚いてもいる。

 もし結婚して、子供ができたら覚悟しておこう、とひそかに腹を括るのだった。

2021/03/03

母上がひなあられ好きなので、毎年ぽりぽりつまんでいました。

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