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架空の生き物

神は存在するのか、否か。


その真相は誰にも分からないだろう。


見た事が有るのなら別だが、無いのなら信じることはできるが、確信は持てない。


私は神の存在を信じない。


所詮昔の人間が創り出した空想上の生き物なのだから。


それ以前に、神の存在を認めてしまうと私は神に恵まれなかった哀れな子供になってしまう。


哀れな者になりたく無いから神の存在を否定し続けているのだと思う。


『神はいつも皆を見守ってくださる』

『神は人間が幸せになる事を願っている』

そんなわけない。人が神の事をよく知らないように、神だって人の事をよく知るわけがない。


所詮違う者なのだから。







「ななちゃん、何考えてるの?」


「ごめんごめん、考え事してた」


「七穂はいつも考え事してるよね」


放課後の教室は好きだ。

窓から夕焼けが差し込んでオレンジ色に染まる。

賑やかだった場所だったから静かになるとこの空間に取り残された気持ちになるのが好きだ。


いつものように友達の遥香ハルカ陽葵ヒマリと談笑する。

この2人は中学時代からの友達で、性格は正反対だがとても気が合うのだ。


明るくお洒落が大好きでちょっとだけギャルっぽい遥香と、大人しくて優しい芸術肌の陽葵。2人とも可愛くて良い子だ。


「ちょっと七穂さーん、また考え事ですかぁ?」


直ぐに考え事をしたり空想にふけるのは私の悪い癖だ。


「ごめん。またやってた…」


「ななちゃんは考え事が好きだもんね」


「好きというか、癖かな。小さい時からの癖が治らなくって気付いたら色々と考えてるの」


物心ついた時からよく空想していた。空を飛んだり、宇宙に行く事を夢見たり。自分の思い通りにいく世界が好きだった。あの日を境に頻繁にやってしまうことも多くなったけど。


「そろそろ帰る?もう大分くらいし」


遥香に言われて外を見ると、綺麗な夕焼けだった空が紫色から黒色に変化していくようだった。


「帰ろっか」


そう言って立ち上がり、リュックサックを担いで玄関を出た。空はすっかり暗くなって星は街灯の光で見えなかった。


「じゃあねー!」


「バイバイ」

「またね!」


二人と別れると一気に体を暗闇が襲った。怖くなって手が少し震えた。あの日から私を苦しめる恐怖。それから解放されるのは一体いつになるのだろうか。




「ただいま」


家に帰ると安心する。ホッと息を吐いて居間に向かう。二人暮らしだからそれほど大きく無いマンション暮らしだけれどこのサイズ感が私には合っていると思う。


今日はカレーライスを作る。

玉ねぎと人参、じゃがいもを手際よく切って炒める。鶏肉も一気に入れた。家庭によってカレーの肉は違うけど私は鶏肉一筋だ。異論は認めない。

部屋にスパイスの香りが充満してお腹の虫がぐぅぅと鳴り出す。


ちょうど煮込み終わった時にガチャリと鍵の音がして私の同居人の叔父、広崎重利ヒロサキシゲトシさんが帰ってきた事を告げた。


「おかえり」


「あぁ、ただいま」


低くて掠れたこの声を聴くと安心できる。

急いでテーブルに料理を運び、椅子に向かい合って座った。


「いただきます」

「いただきます」


我ながら美味しいカレーになったと思う。とろみのあるカレーに白米が合わさって絶妙なバランスが良い。

重利さんも「うん、美味しいよ」と言ってくれて嬉しくなった。やっぱり一人で食べるより二人で食べるとより美味しく感じると言うのは嘘では無いようだ。






食事を取り終えて七穂が向かったのは仏壇だった。

今でも七穂を苦しめる忌々しい記憶。夢であってほしいと何回も願った『あの日』の出来事。七年も前のことなのに、忘れたくても忘れられない。

七穂は固く手を握りしめ復讐の炎に燃えていた。

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